彼氏の選択
まさか、こんな日がくるとは、誰も想像してなかっただろう。あんな大きな交通事故にあったにもかかわらず、無傷で、生還するなんて。
さゆりは、23歳。姉の秋子は、25歳。2人で、ドライブの途中だった。車は、さゆりが、運転していた。助手席は、姉の秋子が、乗っていての事故だった。さゆりは、奇跡的に、無傷だった。秋子は、かすり傷程度だった。
比較的、大きな事故で、相手の人は、重傷だった。さゆりは、大変なことをしてしまったと思った。前方不注意で、正面衝突だったのだ。
相手は、男性で、一輝といった。22歳。すぐに、救急車で、病院に、搬送された。さゆりも、秋子も、病院にかけつけた。ひたすら、あやまり続けた。
一輝は、意識は、あったが、肋骨骨折の重傷だった。とても、痛がっていた。
その日から、さゆりは、毎日の様に、一輝を見舞った。一輝は、仕事を、休まなければならなくなってしまった。さゆりは、責任を、感じていた。いろいろと、補償しなければいけないと、思っていた。
毎日、お見舞いを、するうちに、一輝は、さゆりのことを、いいな、と、思っていった。さゆりも、1つ年下だけど、案外しっかりしている一輝の事が、気になり始めた。
一輝は、さゆりが毎日、お見舞いに来るのを、とても、楽しみにする様になっていた。週末には、姉の秋子も、お見舞いに、きてくれた。秋子も、一輝と話しているうちに、好きになっていった。
さゆりと秋子は、お互いの気持ちは、わからなかった。ただ、秋子は、一輝が、さゆりのことを、好きなのではないかと、思っていた。
秋子は、なんとか、一輝の気持ちを、ふりむかせたかった。差し入れをしたり、優しく接したり、色っぽい服を着てみたり、あの手この手で、迫ってみた。何をやっても、一輝は、秋子には、興味が、なさそうだった。それでも、秋子は、あきらめきれなかった。
さゆりは、一輝の気持ちが、知りたかった。それは、一輝も、同じだった。ある日、いつもの様に、お見舞いに来たさゆりが、一輝に、「彼女さんは、いないの?お見舞いにこないから。」と言った。一輝は、「俺、彼女いないっすよ。」と答えた。さゆりは、心の中で、ヤッター!と、思った。事故の相手の人を好きになるのは、不謹慎だとは、思ったが…
一輝も、聞いた。「さゆりさんは、彼氏いるんすか?」さゆりは、首を横に振った。一輝も、嬉しかった。出会いが、こうでなければよかったのに、とは、思ったが…
秋子が、ドアを、ノックして、入ってきた。「2人で、楽しそうに、何を話してたの?」秋子は、聞いた。さゆりが、「なんでもないよ。」と、答えた。
秋子は、一輝と、二人きりになりたかった。
さゆりに、用事を、言いつけて、買い物に行ってもらった。二人きりになったのを、いいことに、一輝に、「お風呂、入れないと思うから、体を、ふいてあげようか?」と、聞いた。
一輝は、何の気なしに、「お願いできますか?」と、秋子に言った。秋子は、「大丈夫よ。慣れてるから。」と言って、上半身裸の一輝の体を、タオルで、ふいていた。そこへ、さゆりが、買い物を終えて、帰ってきたのだ。一輝は、恥ずかしそうにした。さゆりも、目のやり場に困った。
さゆりは、うすうす、秋子も、一輝の事が好きなのではないかと、思った。そうなれば、姉妹で、一輝を、奪い合うことになる、と、思っていた。
でも、これまでも、姉妹で、同じ彼氏を、奪いあってきたのだ。いつも、最後は、姉の秋子に、彼氏を、取られてきた。今回は、絶対に、姉に、取られたくないと、思っていた。でも、一輝の気持ちを、ハッキリ聞いたわけじゃないから、どうなるかは、わからない、と、思っていた。それに、事故を起こしたのは、自分の方だから、なかなか、前には、進めなかった。
秋子は、一輝を、散歩に連れ出した。秋子は、一輝に、「一輝さんのことを、好きになってしまったの。」と、言った。一輝は、「俺には、好きな人がいます。ごめんなさい。」と、答えた。秋子は、「もしかして、さゆり?さゆりには、彼氏がいるよ。」と、嘘をついた。一輝は、「本人が、彼氏は、いないって言ってました。」そう言った。秋子は、苦虫を噛みつぶしたような、顔をした。
秋子は、一輝に、「自分を大ケガさせた人と、付き合えるの?」と、言った。一輝は、それには、何も答えなかった。ただ、一言、「秋子さんとは、付き合えません。」と、言った。
なかなか、戻らない2人を、さゆりは、心配して、病室にいた。間もなく、2人は、戻った。そして、秋子は、さっさと、帰って行った。さゆりのことは、全く見ずに。
一輝は、思い切って、さゆりに言った。「事故のことは、考えなくていいから、俺と付き合ってもらえないかな?」さゆりは、ビックリして、言葉につまった。「私でいいの?」と、さゆりが聞いた。一輝は、首を縦にうなずいた。
さゆりは、涙で、一輝の事が見えなくなっていた。




