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婚約者に婚約破棄され見捨てられた魔術師と「役立たず」と嘲笑った元パーティに追放された魔道士、最強となり異世界無双。  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章

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第89話:誤差の正体

爆圧がコウ・ブリッドの背中を叩き、衝撃波が五感を揺さぶる。しかし、コウはその慣性を殺すことなく、飛散する煙と熱量を「情報」として脳内に取り込んだ。彼は罠を突破すべき障害ではなく、迷宮の深部を照らし出すための観測装置として利用した。


右腕の表面を焼く熱の粒子を、コウの演算眼がミクロの単位で解体していく。爆圧に含まれていた魔剤粒子の組成を瞬時に解析した結果、一つの決定的な「誤差」が浮き彫りになった。


二系統の魔剤と物流の断絶

大英エルフ帝国の心臓部であるこの宮殿には、性質の異なる二系統の魔剤が流通している。


一般循環型: 宮殿の維持や照明、生活用術式の動力源。安定性は高いが魔力密度は低い。


軍用濃縮型: 艦隊や大規模結界に使用される高負荷・高出力の魔剤。


コウが解析した爆圧の中には、本来この補給廊には存在するはずのない「軍用濃縮型」の成分が、極微量の残留物として混入していた。それはサラの救出を阻むための防衛施設、あるいは彼女自身の兵器化ユニットにのみ供給される特注の燃料であった。


物流の動線を脳内の仮想マップに投影すると、一般循環型のパイプが網目状に広がる中で、軍用濃縮型のラインだけが不自然なほど直線的に、ある一点へと収束している。そこは宮殿の構造図において、物流上、完全に孤立した座標であった。


商人の矜持と演算者の冷徹

「……まさか、わざとか」


背後で追撃の構えをとっていたガゼルが、愕然とした声を漏らす。

彼は、コウが自分の仕掛けた罠を避けられずに踏み抜いたのだと信じていた。だが、コウの動きは爆圧の衝撃を計算に入れ、最小限のダメージで最大効率のデータを得るための自傷行為に近い強行突破であった。


ガゼルの顔に、商人の狡猾さを塗り潰すほどの激しい苛立ちが走る。

かつての勇者としての矜持、そして今の商売人としてのプライド。その両方を、コウは「データ収集の道具」として無機質に利用した。


「俺たちの私怨まで、ただの計算材料にしたっていうのかよ。……ふざけやがって!」


ガゼルが吐き捨てるが、コウは振り返らない。

ガゼルたちの妨害によって霧が歪んだおかげで、隠蔽されていた「軍用濃縮型」の配給ルートが、かえって鮮明な熱源として浮かび上がった。


結末:孤立座標への道

コウは、物流の糸が途切れる「空白の領域」へと視線を固定する。

そこは、王女の論理が造り上げた、外の世界から切り離された絶対的な孤独の檻であった。


「サラ先行で六八パーセント、シエル先行で七三パーセント……だが、王女の感情変動を加味すると、この数字は容易に反転する」


コウは冷酷に成功確率を算出し直す。

軍用魔剤の供給が最大化される戴冠式の直前。王女のメンヘラ的な精神状態が、この迷宮の論理を崩壊させる最大の変数となる。その誤差の正体を掴んだコウは、魔剤の供給ラインを逆走するように、虚空へと踏み出した。

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