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婚約者に婚約破棄され見捨てられた魔術師と「役立たず」と嘲笑った元パーティに追放された魔道士、最強となり異世界無双。  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章

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第80話:不協和音の休止符と、灰色の真実

監獄塔医務室 ―― 醒めない夢の端

意識が、泥のような重さからゆっくりと浮上する。最初に視界に入ったのは、見覚えのない無機質な白い天井だった。


独房の冷たい石造りではない。鼻腔を突くのは湿ったカビの臭いではなく、清潔だが鼻に刺さる消毒薬の香り。俺は生きているのか。いや、生かされたのか。


「……目覚めたか、演算者」


不意に横から声をかけられ、俺は無理やり首を動かした。隣のベッド。そこには全身に痛々しいほどの包帯を巻き、右脚を吊るしながらも、悠然と本を捲る男がいた。ヤードの代表であり、その創設時から席を置く最古参の守護者――金のヤードだ。


「……ここは」


「医務室だ。安心しろ、お前をここに運んだのは、お前が脱獄の際に叩きのめした看守たちだ。奴ら、自分たちを倒した男を死なせるのは尺に触ると言ってな。……皮肉なものだ」


金は本を閉じ、鋭い眼光を俺に向けた。そこには、先ほどまでの「断罪」の意志は消え、代わりに奇妙な連帯感に似た色が混じっている。


誤算の清算:重なる疑惑

「……ヤードが、囚人を助けるのか」


「ああ。どうやら俺たちも、お前も、致命的な『計算違い』をしていたようだからな」


金は自嘲気味に鼻で笑った。


「お前たちを特等拘禁区に放り込んだのは、洞窟の事件が理由ではない。あれはただの建前だ。本当の理由は、お前たちが**『天生者てんせいしゃ』**の手先ではないかという疑いがあったからだ」


俺は息を呑む。俺がヤードを、そしてこの帝都アルビオンを「天生者」と組んだ黒幕だと疑っていたのと同じように、奴らも俺を疑っていたのか。


「だが、お前があのナンバー1.5と死に物狂いで戦う姿を、銀たちが目撃した。……同士討ちであそこまでの殺意は持てない。銀も、そして俺も、お前が白であることを認めざるを得なかった」


「……お互い様だ。俺も、この国がサラたちを狙う元凶だと思っていた。だが、ヤードがナンバー1.5に全滅させられるのを見て、その仮説を捨てたよ」


皮肉な和解だった。最悪の第三者の介入によって、俺たちの不協和音は、強制的に一つの旋律へと収束させられたのだ。


黒幕の正体:二番煎じの一座

俺は身を起こそうとして、あまりの激痛に顔をしかめた。だが、聞かなければならないことがある。


「……一つ、教えてくれ。天生者は、本当にこの事件の黒幕なのか?」


「いいや。それが俺たちの最大の誤認だった。……天生者。それはただの末端組織の名前、あるいは二番煎じの模倣犯に過ぎない」


金が吐き捨てた言葉は、これまでの前提を根底から覆すものだった。


「本来の黒幕は、『二番煎じの一座にばんせんじのいちざ』。構成員は不明、実態も掴めない闇の集団だ。おそらく、あのナンバー1.5も、そして仲間を裏切って姿を消した『虚無きょむ』も、その一座に連なっている可能性がある」


俺の脳内で、バラバラだったピースが急速に組み上がっていく。一座。そのふざけた名前の裏に、どれほどの深淵が隠されているのか。


(……あの虚無が裏切り者か。だが、あいつの動きには別の意図があったように見えた……)


思考が加速する。だが、論理よりも先に、血の通った叫びが俺の口をついて出た。


最後の算譜:不在の二人

「……そんなことは、どうでもいい」


俺は金のヤードを、射抜くような視線で見据えた。


「一番重要なことを教えろ。……サラとシエルは、今どこにいる」


金のヤードは、本を握る手に力を込めた。その沈黙は、俺にとって、どんな断罪の言葉よりも残酷な響きを持っていた。


「……分からん。虚無が二人を連れ去った後、彼らの魔力反応は、帝都のどのセンサーからも消失した。まるで、最初からこの世界に存在しなかったかのように……」

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