表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者に婚約破棄され見捨てられた魔術師と「役立たず」と嘲笑った元パーティに追放された魔道士、最強となり異世界無双。  作者: 限界まで足掻いた人生
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/70

第55話:賢者の審判と、命の帳簿

ボロフの算定

宝物庫の中央、歴代の英知が詰まった魔導書の山を背に、ボロフは冷徹な眼差しで三人を見下ろしていた。彼の傍らには、すでに解体され、天生者の術式を組み込まれたシエルの遺産――万象の天秤が鈍い光を放っている。


「……さて、コウ。君が先ほど見せた消去術式、あれには驚かされた。だが、あれはあくまで数に対する力だ。真の強者……すなわち、世界を管理する側の術式に対し、どこまで通用するか。興味がある」


ボロフは杖を軽く地面に突いた。その瞬間、床に刻まれた幾何学模様が暁色に輝き、三人の足元から重力そのものが「値上げ」されるような圧力が立ち昇る。


「私の命の値段は、あの外で死んでいったゴミ共とは違う。……君たちがどれほどの価値を示せるか、私自身の術式で検品させてもらおう」


激突:特権階級の魔導

ボロフが放ったのは、アカデミーの伝統的な高位魔導に、天生者の理を上書きした異形の術式だった。


空間に浮かび上がるのは、無数の黄金の硬貨。だがそれは単なる魔力の塊ではない。一つ一つが対象の魔力回路を強制的に買収ハックし、出力を減衰させる黄金の腐敗ゴールデン・ディケイ


「……不愉快な術式だ。魔力の波長を金銭価値に置換して、存在の重みを削り取っているのか」


コウは右腕の激痛を押し殺し、指輪を通じて強制演算を開始した。先ほどの消去術式の反動で、彼の右腕の魔力回路は半分近くが焼き切れている。だが、彼の脳は止まらない。


「サラ、出力を絞れ! 正面から受ければ、君の調律ごと魔力を買い叩かれるぞ。シエル、ボロフの術式の底を見極めてくれ。奴はまだ、試作段階の遺産の実験をしているだけだ!」


「わかっています、コウさん! ……でも、この魔力……すごく冷たい。誰かの命を奪って作った、偽物の輝きです!」


サラは聖杖を構え、最小限の魔力でボロフの放つ黄金の波を逸らすことに専念する。正面衝突を避け、流動的にいなすその動きは、暴力的なボロフの魔導に対し、静かな抵抗の旋律を奏でていた。


視点:群像の断絶

宝物庫の扉の外。まだ生き残っていた数人のスラムの住人たちが、厚い扉に耳を当て、中から漏れ出る圧倒的な魔圧に震えていた。


「……あの中に、あいつらがいる。俺たちを使い捨てた教授と、あの計算の化け物が……」


一人の男が、震える手で折れたナイフを握り直した。彼らにとって、ボロフもコウも、自分たちの命の値段を勝手に決める支配者に他ならなかった。迷宮の奥で、自分たちの仲間が肉の壁にされ、燃料にされた。その怒りは、もはやどちらが勝つかではなく、この不条理な場所そのものを呪う叫びへと変わっていた。


シエルの助力:賢者の楔

「ボロフ……君は、魔術を何だと思っているんだ!」


シエルが叫び、自身の影から黒い糸を紡ぎ出した。それは遺産の防衛権限を無理やり奪い返すための、管理者コード。


「君が使っているそれは、ボクが人を救うために、争いを止めるために作った計算式だ。それを、弱者を蹂躙するための帳簿に変えるなど……ボクが許さない!」


「許さない、か。シエル、君のその甘さが、この国を停滞させてきたのだよ。力を持たぬ者は、力を持つ者のための資源であるべきだ。それが、天生者が示した最も効率的な世界の姿なのだから」


ボロフの杖が、さらに巨大な暁色の魔法陣を形成する。


「さあ、次のページだ。コウ。君の右腕はもう限界だろう。……その状態で、この世界の再評価をどう切り抜ける?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ