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婚約者に婚約破棄され見捨てられた魔術師と「役立たず」と嘲笑った元パーティに追放された魔道士、最強となり異世界無双。  作者: 限界まで足掻いた人生


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第53話:地下迷宮の狂騒

迷宮の門:飢えた追撃者

研究室の隠し通路を抜け、三人はアカデミーの地下深く、歴代の賢者たちが眠る迷宮「カタコンベ」へと足を踏み入れた。冷たく湿った空気が肌を刺し、古びた魔導灯が三人の影を長く壁に伸ばす。だが、その静寂はすぐに、背後から迫る無数の「足音」によって掻き消された。


「……いたぞ! あの銀髪の女と、指輪のガキだ! 殺せばパンに困らねえ生活が待ってるんだよ!」


暗闇から現れたのは、ボロを纏い、目は血走り、飢えに突き動かされたスラムの住人たちだった。彼らが手にするのは洗練された魔導具ではない。錆びた短剣や、ただの鉄パイプに魔力結晶を無理やり括り付けた粗末な武器。しかし、そこから放たれるのは術式の詠唱すら介さない、剥き出しの「殺意」と「欲望」が混じった生々しい魔圧だった。


「殺せ! 天生者テンセイジャー様からの報酬があれば、明日から泥水を啜らなくて済むんだ!」


コウの分析:執念という不確定要素

「……チッ、計算が合わないな。奴らには魔術師としての定石が欠落している」


コウは背後の気配を察知し、シエルから渡された指輪に魔力を通した。脳内では敵の速度、角度、武器のリーチが秒間数千回の演算で弾き出されていく。


「《論理干渉・術式凍結》」


コウが指先を弾くと、最前列の男が振り下ろそうとした鉄パイプが、空間ごと静止する。だが、異常だったのはその次だ。男は凍りついた己の腕を、後続の仲間に「踏み台」として差し出したのだ。


「ぐあああっ!」


腕が折れる音も構わず、次の男がコウの視界に飛び込んでくる。


「……非効率極まりない。自分の身体を損壊させてまで、攻撃のベクトルを維持するだと? 奴らの行動原理は生存本能ではなく、飢餓に基づいた異常な単一演算だ」


予測を上回る無謀な特攻に、コウの計算回路に微かなノイズが走る。魔術を知らぬ者たちの執念は、時に論理的な「解」を力技で踏み越えてくる。


「サラ、彼らの動きを調律で乱せ! 意識の焦点を散らして突進を逸らすんだ。シエル、この迷宮の防衛機構が作動していない理由を特定してくれ。最短ルートを再計算する!」


「わかりました! ……皆さんの心が、あまりにバラバラで悲鳴を上げている……でも、通しません!」


サラが聖杖を地面に突くと、波紋のような光が広がり、迫り来る住人たちの三半規管を狂わせる。彼らは千鳥足になりながらも、壁に爪を立てて這い寄ってきた。


迷宮の深淵へ:見えない糸

「おかしいわね……本来なら、ボクの生体魔力に反応して迎撃術式が起動するはずなのに。誰かが意図的に、この階層のセキュリティを物理的に破壊バイパスしているわ」


シエルが古びた石壁の継ぎ目を見つめ、苦渋の表情を浮かべる。そこには彼女の知るエルフの術式とは異なる、高密度な「魔力の糸」が這い跡のように残っていた。スラムの住人たちには不可能な、極めて高度な隠密工作の痕跡。


「……シエル、それは後だ。今は最短ルートを。追っ手の数はまだ増えている」


コウは指輪を通じて自身の演算能力が物理的な壁となって敵を弾き飛ばす感触を確かめながら、迷宮の奥へと突き進む。


迷宮の最深部、そこにはシエルが遺した対・天生者の切り札が眠っている。しかし、そこへ辿り着くための「鍵」となる場所へ、誰かが既に触れたような、微かな魔力の残り香が漂っていた。


「……(スラムの連中を囮にして、本命の『誰か』が別に動いているのか?)」

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