第43話:禁忌の黙示録と、迫りくる「半身」
真実の深淵
ボスの残滓が消え、静寂が戻った大図書館の最深部。コウ、サラ、シエルの三人は、結晶柱の背後に隠されていた**「黒銀の石板」**の前に立っていた。それは、現世の魔導書には決して記されることのない、世界の設計図とも呼べる禁忌の記録だった。
シエルが震える指先で石板に触れると、古代の文字が虚空に浮かび上がる。
「……やはり、ボクの推測は正しかった。Rブレッドクランの目的は、単なる国盗りじゃない。彼らが狙っているのは、古代兵器**『終焉の揺籃』**の起動だ」
「終焉の揺籃……? その名前、聞いただけで背筋が凍ります……」
サラがコウの腕を強く掴む。コウは石板に記された魔力式を瞬時に解析し、その結論に眉をひそめた。
「……なるほど。世界の魔力濃度を一度ゼロにリセットし、再構築するシステムか。極めて大規模で、かつ乱暴な計算式だな。発動すれば、現存する生命体の99%は魔力枯渇で即死する」
「そして、その起動に必要なのが……『世界を調律する純粋な魂』。つまり、サラ。君なんだ」
シエルの言葉に、場に凍りつくような緊張が走る。サラは自分の手を見つめ、震える声で呟いた。
「私が……世界を壊すための鍵……?」
背後に潜む「クズ」の影
一方、マギアの街の境界付近では、コウたちを執拗に追跡していたヴィンセントとガゼルの放った隠密部隊が、その様子を魔法の鏡で遠隔監視していた。
「(聞いたか、ヴィンセント殿下。あの娘は『世界を再構築する鍵』だそうだ……!)」
鏡の向こうで、ガゼルが下卑た笑い声を上げる。
「(ふふふ……素晴らしい。サラを手に入れれば、余は文字通り神としてこの世界を統治できる。もはや一国の王子などという器に収まる必要はない。ガゼル、コウたちを逃がすな。三人が消耗した瞬間にサラを強奪するぞ)」
彼らにとって、世界が滅びる危機ですら「自分たちがより強大な権力を握るチャンス」に過ぎなかった。
ナンバー1.5の強襲
「……チッ、不快な視線だ。サラ、俺の後ろにいろ。シエル、結界を張れ!」
コウが鋭く叫んだ瞬間、図書館の重厚な空間そのものが、上下左右から**「握りつぶされる」**ように歪んだ。
「おやおや。せっかくの感動的な解説シーンを邪魔してしまったかな?」
瓦礫の中から現れたのは、ボスの姿を模した「泥」のような影だった。しかし、放たれるプレッシャーは先ほどのボス以上。ボスの分身でありながら、戦闘能力のみを極限まで抽出した特攻個体――ナンバー1.5『ボスの半身』。
「シエル。君のような裏切り者が知っていていい真実じゃないんだよ。それはね」
「……アバターだと? ボスめ、本体が動けないからといって、こんな『非効率な残骸』を送り込んでくるとは」
コウは覚醒した回路を全開にし、左腕の刻印から絶対零度の冷気を噴出させた。
「サラ。奴の『核』を見つけろ。シエル、あんたは知識で奴の術式を解体しろ。……俺は、その隙に奴の存在確率をゼロにする」
開戦:三位一体の極致
「行きます! 《至高の調律・透徹の眼》!」
サラの放つ光が、不定形なアバターの内部を透視する。 「左肩の奥! そこに魔力の特異点があります!」
「了解だ。……シエル、補助を!」
「任せなさい……。古代魔術、構造分解!」
三人の息の合った連携が、ナンバー1.5を圧倒し始める。 しかし、アバターは不気味に笑い、その姿をさらに異形へと変貌させていった。
「いいね、いいねぇ! その力、その魂! まさに『収穫』にふさわしい!」
図書館の地下、崩壊する石板。 コウたちは、この最悪の「半身」を退け、サラを守り抜くことができるのか。




