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婚約者に婚約破棄され見捨てられた魔術師と「役立たず」と嘲笑った元パーティに追放された魔道士、最強となり異世界無双。  作者: 限界まで足掻いた人生


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第42話:覚醒の回路と、収穫の時

ミッシング・リンクの結合

大図書館の最深部、青白い光を放つ結晶柱の前にコウが立つ。シエルが差し出したその「破片」は、コウが右手をかざすと吸い込まれるように彼の肉体へと溶け込んでいった。


「……ッ、あああああああ!!」


全身の血管が浮き上がり、神経が焼き切れるような熱が走る。欠けていた歯車が噛み合い、止まっていた時計が再び動き出す感覚。コウの脳内では、これまで数秒かかっていた演算がコンマミリ秒で完了し、視界に入る全ての魔力情報の密度が跳ね上がった。


「(……これが、俺の『全出力』か。世界が、あまりにも……スローモーションに見える)」


招かれざる主客

「素晴らしい。実に見事な同調シンクロだ、コウ君」


頭上から降り注いだのは、拍手と、背筋を凍らせるような冷徹な声だった。 大図書館の天井が音もなく崩落し、瓦礫の雨の中をゆっくりと降りてきたのは、仮面の男――Rブレッドクランのボスだった。


「ボス……! 自ら来るとは、よほど待ちきれなかったようだな」 シエルが即座に前に出、杖を構える。血を吐きながらも、その瞳には愛弟子を守るという不退転の決意が宿っていた。


「当然だよ。この日のために、私はシエルに君を『飼育』させ、絶望と希望を交互に与えて回路を磨かせたんだ。君という最高の果実が熟すのを、私はずっと特等席で見ていたのさ」


ボスの言葉に、サラが怒りで肩を震わせる。 「……コウさんの人生を、シエル様の想いを、なんだと思っているんですか! あなたの計算には、人の心が入っていない!」


収穫の儀

「心? そんな非効率な不確定要素は、私の『新世界』には不要だ」


ボスが手を広げると、大図書館全体がどす黒い闇に包まれた。彼の背後に現れたのは、巨大な「魔力のはかり」。


「さあ、収穫を始めよう。君の完成された回路を、私の『理』の一部として統合させてもらう。コウ君、君なら理解できるだろう? 君の力と私の理が合わされば、この世界から『無駄』な感情も、争いも、全て排除した完璧な静止画を作れるのだと」


「……お前の言う『効率』は、ただの死だ。俺の計算式には、そんな答えは存在しない」


コウは静かに、しかし絶対的な殺意を込めて魔力を練り上げた。


完璧なる事象凍結

「シエル、あんたの回路をもう一度貸せ。サラ、俺の出力を限界まで引き上げろ。……この男の『理』ごと、一秒後の未来を凍結させる」


「……ああ。ボクの残りの魔力、全部持っていけ!」 「はい! コウさんの信じる『効率』を、私たちが支えます!」


三人の魔力が、今度こそ完全に、一つの数式へと昇束された。 コウの失われた回路が補完された今、その出力は先日のボスの攻撃を上回る。


「《真・事象凍結ゼロ・ディミニッシュ》」


コウが指先を弾いた瞬間、世界から「時間」という概念が消失した。 ボスの放った闇の奔流も、降り注ぐ瓦礫も、さらにはボス自身の思考さえも。


「……なっ、私の意識まで……凍り、つ……」


ボスの仮面に、亀裂が入る。コウの術式は、もはや物理現象を超え、ボスの存在を定義する「情報」そのものを停止させていた。


崩壊と予兆

しかし、ボスは完全に砕け散る寸前、不気味な笑みを浮かべた。


「……く、くく……。それでいい。その絶大な力こそが、最後に『扉』を開く鍵となる……。また会おう、コウ君。君がその力の『真の代償』を知る時にね……」


ボスの身体が霧のように消散し、大図書館を包んでいた闇が晴れていく。 同時に、コウは激しい目まいに襲われ、その場に膝をついた。


「……逃げたか。極めて、非効率な幕引きだな」


「コウ! 大丈夫か!」 シエルが慌てて駆け寄り、不器用な手つきでコウの肩を支える。 「……シエル、あんた……。そんなに必死な顔をするな。俺の計算では、まだ死なない」


コウはそう軽口を叩いたが、ボスの最際の言葉が、重い澱のように胸に沈んでいた。

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