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よろしくお願いいたします。
「ローザ嬢、どうぞ」
繋いでいた手を離し、ネオ様が扉を開けてエスコートしてくれた。
「いらっしゃいませ」
「予約していたボイドです」
「ボイド様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
ネオ様はボイド様っていうんだ。やっぱり家名があった。貴族だったんだ。本当の名前はネオ・ボイド様っていうんだ。
グリーターに案内されて、個室に入った。メニューがあったけど、コース1種類しか載っていなかった。
「予約の時にコースを頼んだんだ。あとは飲み物だけど、この後にまだ工房に行って作業とかするだろうかワインではないものにしようか」
「はい、私は普段からほとんど飲まないのでそれでいいです」
「俺は、ブドウジュースを頼むよ」
「私も同じものをお願いします」
今度はウエイターがやってきて注文を聞いていった。
「ブドウジュースを2つお願いします」
「かしこまりました」
再びネオ様と2人きりになった。
「そういえば、ネオ様って家名はボイドっていうんですね」
「いや、それは予約してくれた人の名前なんだ」
「えっ、そうなんですか」
「ああ、知り合いがこの店を知っていて、予約してくれたんだ」
「てっきりネオ様の家名でネオ・ボイド様なのかと思いました」
なんだ、ネオ様の名前ではなかったんだ。運命の魔術師だから貴族と縁はあるだろうからそこでの知り合いなのかな。
「お待たせいたしました、ポタージュスープになります」
料理が運ばれてきた!
「ランチだからコースも短いんだ。あとは前菜とメインとデザートの3つとパンだよ」
「豪華なランチですね!すごい!」
このあとはカラフルな野菜とサーモンのマリネと私の大好きな牛肉のステーキがきて、デザートはクリームブリュレだった。
ネオ様との食事中は料理がとても美味しかったので、コースで出てきた料理の話だけで終わってしまった。
こういう時こそ、もっとお互いのことが知れるような深い話をした方が良かったなってあとから思うんだよね。
私がトイレに立った隙にネオ様はお会計を済ませてくれていた。今日は最後の日で私が1週間頑張ったご褒美だよって言ってたけど、2人で出かけた時の食事は全部ネオ様が出してくれていた。
「ご馳走様でした。本当にめちゃくちゃ美味しかったです。ありがとうございました」
「喜んでもらえてお店を予約した甲斐があったよ。でも本当に美味しかったね」
コースでゆっくりだったのもあり、あっという間に入店から2時間が経っていた。
帰りもネオ様にエスコートされて店を出た。外に出たら馬車が止まっていて帰りはそのまま工房まで馬車で帰った。
「じゃあ、さっきローザ嬢が思いついたことを教えてもらえる?」
工房に帰ってきて一息ついたら早速ネオ様に聞かれた。
「イヤーカフを銀板で作ろうと思います。でもさっき見たようなものじゃなくてイヤリングに見えるようなタイプのものを作ろうと思っています」
「イヤリングに見えるイヤーカフか。すごくいいアイデアだと思うけど、銀板だけで作れるかな?」
「そうですね、本当は宝石も使えると良かったんですけど、宝石を購入できるような資金はうちにはないと思うし、銀板ですらちょっと購入できるかどうか怪しいくらいです」
「イヤーカフは大ぶりのものを考えているのか?」
「いえ、イヤリングと違って横につけるので大きすぎるとあんまり見栄えが良くないんじゃないかなって思っているので、小ぶりのつもりです」
「何個納品予定だった?」
「100個と言われています」
「100個なら、ここに残っている銀板を使うといい。足りると思う」
「いいんですか?」
「ああ、小ぶりなものなら100個作るぐらい作れると思う」
ネオ様が銀板をくださった。私はこの1週間何から何までネオ様にお世話になりっぱなしだった。
「ありがとうございます!使わせていただきますね。とても助かります!」
「早速試作してみるかい?」
試作はしたいけど、私は明日自領に帰るから帰る準備をしなくてはいけない。
「ネオ様、すみません、試作したかったんですけど、私、明日自領に帰るので帰る準備をしたいと思います」
「そうだね、明日帰るなら準備した方がいいね」
「すみません。明日は朝一番の乗合馬車で帰るつもりです。そしたら1番早く自領に着くかなって思っています」
なるべく早く自領に帰って納品するアクセサリーを作らないといけない。
「そうか、エイド卿は迎えには来ないんだね。気をつけて帰るんだよ」
「はい。また着いたらお手紙書きますね」
「ありがとう。待ってる」
私はネオ様に手紙を書く約束をした。
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