54 王太子視点
よろしくお願い致します。
「ネオ様、せっかくなんで、この前みたいに露店街で買ってきて工房で食べるのではなく、お店で食べませんか?」
ローザがお店で食べたいと言ってきた。いきなり店に行って食べるのは、個室は案内されないだろうし、滞在時間が長くなると身バレしてしまう可能性が上がってしまう。
「……お店で食べるのは最終日にしようか」
俺は少し考えて、他の日にちで個室を予約すれば他の人に会わずに済むんじゃないかと思いついた。
「いきなりはダメでしたか?」
ローザが申し訳なさそうな顔をして聞いてくる。
「そう言うわけではないんだけど……」
今すぐ予約ができないこともないが、個室が空いている店があるかどうかわからない。個室のことを話そうか迷っているとローザが笑顔を見せた。
「……わかりました。最終日ですね!楽しみにしています!」
「今日、行けなくてすまない…」
申し訳なさそうに俺は答えた。
「最終日に行けるので大丈夫ですよ。気にしないでください」
気にしないと言いながらも気にしているそぶりが見える。ローザはわかりやすい。
俺も申し訳なさが顔に出ていたようだ。それを打ち消すかのようにローザがまた笑顔でいった。
「最終日、楽しみにしてますね!」
「俺も楽しみにしてる。ローザ嬢は何か食べたいものはあるかな?」
ローザが気にしていないように振る舞うなら俺も合わせて接していく。
「私、お肉が好きなんですよ。そうそう、この前ネオ様にお店の中で聞いたハンバーグ美味しかったです!」
隣町の店で偶然ローザに会った時のことだ。俺もあの店のことは視察をしてる時に偶然知った。
「ローザ嬢は肉が好きなんだな。じゃあ美味しい肉を食べさせてくれる店を探しておくよ」
「わー!嬉しいです!お店も楽しみにしていますね!」
侍従に帰ったら美味しい店を聞いてみる。俺の侍従の1人はよく食べ歩きをしていると言っていた。ついでに予約もお願いしようと思う。
ローザと話しながら歩いているとあっという間に露店街に着いてしまった。この前のローザの話を聞くばかりだった俺からは少し成長したと思う。
「今日、なんかこの前より人が多いですね」
「ああ、本当に」
「今日は何かあるのかな?」
「いや、今日は勤め人の休日の前日の夜だから人が多いのかもしれない」
ローザは地方貴族だから平民の生活はよく知らないようだ。
「明日休みだと思うと寄り道しちゃいますよね。私も王都に来た時に、明日自領に帰るだけだと思うと、遅くまで色々みちゃうからそれと一緒ですよね」
「そうだろうね」
露店街を歩いているとローザの目線があるところに向いていた。
「あ!この前美味しかった米粉のサンドイッチの店がありました!」
「どこ?」
「そこです。私、明日の朝のために買っていきますね!ちょっとここで待っていてもらえますか?」
ローザが斜め向かいを指差した。今のところお客さんはいないようだった。
「俺も一緒に行くよ」
デートのつもりだったから一緒に行こうとしたがローザは1人でいくようだった。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます。すぐ買ってくるので、待っててください」
「わかった」
ローザを待つことにした。
「ネオシスト?ネオシストだよね?」
ローザを待っているといきなり王太子名で呼ばれた。俺の本当の名はネオシスト・キュメント。声のする方を見るとオシラだった。
「!オシラじゃないか!」
「久しぶりね、ネオシスト。変装してこんなところで立っていてどうしたの?」
オシラは俺の叔父の娘でつまり、俺の従姉妹にあたる。
オシラは公爵の娘でありながら、外商で公爵のところへ出向いていた平民のシルクリア商会のロッド会長に惚れて、猛アタックしてロッド会長を落とし、強靭な精神力で公爵を説得し結婚した強者だった。
従姉妹であり、歳も近かったのもあって、俺とオシラは最初は俺と守護精霊同士が番なんじゃないかって言われていたが、蓋を開けてみたらそうではなかった。
オシラが結婚してからは平民になってしまったこともあり、全く会うことがなかった。今日会ったのも3年ぶりだった。
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