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よろしくお願い致します。
お父様が口を開いた。
「ローザがここで暮らす間の生活費などはどうなるのでしょうか?」
「お父様、それは私が自分でなんとかします」
「ローザ、なんとかするって、どうするんだ?」
「今まで作っていた粘土細工も、ここで作らせていただいて、それを露店で売ります」
「粘土細工をここで作るっていっても、粘土がここにはないぞ。それに粘土を焼く窯だってあるのか?」
「粘土は一旦取りに帰ろうかと思ってた。窯のことまで考えてなかった…」
「窯は奥にありますよ」
ネオ様が答えた。
「本当ですか!窯はあるんですね!それなら粘土細工を窯で焼ける」
そういえば、ここには煙突があった。それは窯のためだったんだ。
最初に、私がここをパン屋みたいと思ったのはパンを焼く時の煙が出る煙突と同じような煙突があったからだった。
窯があれば粘土さえ取りに帰れば粘土細工を作れる。
「お父様、私、一旦一緒に戻るし、そうすれば生活費もなんとかできそうだからどうかな?」
「ローザ、一度子爵領に戻っていたら時間のロスになってしまう。今回の売り上げを生活費にしなさい」
「お父様… 」
「今回の売り上げのほとんどはローザの作った粘土細工だからな。わしは領に戻るだけのお金があればなんとかなる」
「エイド卿、それではローザ嬢にここに1週間程住んでいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、こちらこそお願い致します」
「お父様、許可をくださってありがとうございます!」
やっぱり、なんだかんだいってもお父様は最後に許してくれる。嬉しい。
「ところで、ネオ様はここに住まれないというと、どちらにお住まいなのでしょうか?」
お父様がネオ様に住まいを聞いた。私も密かに気になっていた。ここに住んでるとばかり思っていたけど、違ったし。一体どこに住んでいるんだろう。
「私は、ここから少し離れた場所に住んでおります。そのため、通いでローザ嬢に教えることになります」
少し離れたところか…ネオ様は詳しくは教えてくれなかった。もっと親しくなったら教えてもらえるのかな?
「そうですか…。でも王都にお住まいなんですね?」
「…そうですね」
ん?ちょっとネオ様の返事に間がなかった??気のせい?
「わかりました。ネオ様にも色々と都合があると思いますので、しつこく聞いて申し訳ありません」
お父様はこれ以上ネオ様を詮索しなかった。大人だ。
「いえ、大切な子爵令嬢を預かるのに、こちらが一人暮らしの住み込みとさせてしまうので、色々気になって当然だと思います。あまり詳細に話せず申し訳ありません」
ネオ様がお父様に頭を下げた。
「いえいえ、どうかローザをよろしくお願い致します」
お父様もネオ様に頭を下げたので、私も慌てて頭を下げた。
「では、私はそろそろ失礼させて頂きます。あまり遅くなると領につくのも遅くなるので」
もう夕方はとっくに過ぎてしまい、夜になっていた。お父様は今から帰るのかな?
「お父様、もう夜だけど、帰るの?」
「いや、もう一度宿屋に戻ろうかと思ってる」
「それなら、エイド卿、今日はここにローザ嬢と泊まっていかれたらどうだろうか?」
「私まで泊まらせていただいていいんでしょうか?」
「大丈夫ですよ。じゃあ奥のスペースを案内しますね」
なんと!!お父様と一緒にネオ様の工房で泊まらせていただくことになった!
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
「では、こちらに」
ネオ様に案内されて、私とお父様は工房の奥に向かった。
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