21 王太子視点
よろしくお願い致します。
露店街にやってきた。沢山のお店が出ているが、ローザは必ずこの辺りにいる。
俺は周りを見回しながら歩き、ローザを探していた。
「こんにちは、植物をモチーフにしたアクセサリーはどうですか?」
不意に後ろから女性に声をかけられ振り向いた。
「えっ!もしかしてネオ様?」
声を掛けてきた女性は俺が今まさに探していたローザだった!
「ローザ嬢!」
ローザも予想外の出来事に驚いていた。
「こんにちは、ネオ様。よく会いますね!」
ローザはエイド子爵とともに露店で店番をしているようだった。
エイド子爵は貴族で領主のはずがなぜこんなところで露店の店番をしているのか。疑問に思ったが今はそれよりも守護精霊のことだ。
「俺はちょうどローザ嬢を探してたところなんだ。会えて良かった。
実はローザ嬢に話したいことがあったんだけど… ちょっと今は難しそうだね」
「そうだったんですね。私もちょっとネオ様に話したいことがあるんですけど…」
俺はすぐにでもローザと話がしたかったが、露店の店先で話す内容ではない。
ローザも俺と話したいことがあるようだ。多分ローザも俺が何を話したいのか気づいている。
「ローザ、ここはわしだけでも大丈夫だから、ネオ様と話しておいで」
エイド子爵がローザの様子に気がついてローザを店番から抜けさせてくれた。
以前から思っていたがこの親子は貴族でも珍しくお互いを思いやっているのが感じられる。子供は自分の所有物で駒だと思っているなら子供のちょっとした変化にすぐに気がつくものではない。
「お父様、ありがとう」
「ネオ様、ちょっとこちらで」
俺はローザに呼ばれるがまま露店の端の方に移動した。
「ネオ様、お父様が抜けてもいいって言ってくれたのでちょっとここじゃなくて場所を変えて…」
「ああ。じゃあ、あそこの広場に行こうか」
小声でローザが場所の移動を提案したので俺は目に留まった人の少ない広場を指差し、指定した。
「はい、じゃあそこで」
ローザも了解し二人で移動しようとした時…ローザの守護精霊の強いエネルギーを感じ、ローザの様子が変わった。
「どうしたの?」
様子を見る限りローザは守護精霊と話をしているようであった。残念ながら守護精霊自身がエネルギー遮断をしているためローザと守護精霊の会話を聞くことはできない。もっとも盗み聞きは良くないのだが。
イングもせっかく番が近くにいるが、相変わらず番がエネルギー遮断しているからここでは無理に番にエネルギー干渉をしないようだ。
俺に何も言ってこない。
それに俺はまだローザから守護精霊の顕現の話を聞く前の、今の状況ではローザの発した言葉を聞き流すことはできない。ここは普段通りに対応する。
「ローザ嬢?何がどうしたんだ?」
我ながら役者のようだ。うまく聞くことができた。
「ごめんなさい、違うんです」
申し訳なさそうにローザが答える。守護精霊と話しているのをわかっていながらも知らないふりをして聞いてしまったことに少し罪悪感を感じる。
エネルギー遮断のおかげでローザの様子でしか判断できないが、その後もローザと守護精霊の会話は続いているようだ。しかし、ずっと待っているわけにもいかない。
「ローザ嬢?」
再びローザに声をかける。
「あっ、ごめんなさい。せっかく話をするための場所まで探していただいたんですが、やっぱり私は今はいいです。本当にごめんなさい。でも本当に話したいことがあったんです。だけど今じゃなくて…」
ローザも俺が何か気づいていることに勘づいたようだ。結局ローザは守護精霊に何か言われて今俺と話をするのを諦めてしまった。
仕方ない。時と場所を変えるか。
「そうか…じゃあ俺の聞きたいこともその時がいいかな。俺は普段大体夕方ごろに王都のジュエリー工房でジュエリーを作っていることが多いから、近いうちに訪ねてきて。その時に話をしよう」
普段、公務が早く終わった時には工房でジュエリー作成をしている。
「ジュエリー工房?ネオ様の工房があるんですね!すごい!!私、今日から1週間王都にいる予定なのでまた伺いますね!」
ローザもペンダントを作成しているので工房には興味があるようだ。わかりやすくテンションが上がっていた。
可愛いらしい。
「これ、その場所の地図」
「ありがとうございます」
「当たり前だけど、閉まっていたらいないからね」
「そうですよね。その時は出直しますね。ちなみに今日は工房に行かれるんですか?」
「今日?…今から行く予定だよ。夜までいる」
ちょうど俺は今から魔力の枯渇を癒すために工房に行く予定だった。
どうせなら今日ローザに来てもらった方がいい。イングのこともあるから早い方がいい。
俺は枯渇した魔力をなんとか振り絞り今日ローザが工房へ来れるように細工した。
「そうなんですね、作成頑張ってください」
「ありがとう、じゃあまた」
「はい、また」
魔力を使い過ぎてしまった俺はフラフラしながら工房へ向かったのだった。
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