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よろしくお願いします。
「そのソルビット領から見つかった温泉は入り続けると身体の悪いところが良くなるそうなんだ。温泉の評判を聞きつけた人達がソルビット領に集まるようになってすごく領が栄えてきているみたいだよ。それでな…ムート様なんだけど…最近ステビア侯爵様の一人娘のティア様と婚約されたんだよ」
「えっ…」
「その温泉にステビア侯爵様が訪れて、いたく気に入ったみたいで。そのご縁で婚約に至ったらしい…」
「そうなんだ…。確かステビア侯爵様も守護精霊とコンタクトが取れる方だったよね。守護精霊は繁栄の為のご縁も結んでくれるって言われているしね…」
「この前、ローザが家にいない時に粘土を買いにムート様がきて、この話をしていったんだよ。もうここになかなか来れないからローザによろしく伝えてくれって」
「ムート様…婚約されたんだ…」
ムート様はブラウンの髪で背が高くてはっきりした顔立ちの男性だったけどおっとりした方で粘土を買いにみえた時にお会いして話をするのがすごく楽しかった。
私にはまだ婚約者はいないからローザと結婚するのもいいねなんていってくれたこともあったのに。やっぱり本気じゃなかったんだな。
私は密かに本気にしてたのに…。
「ローザ、ごめんな。わしが守護精霊とコンタクトを取ることができていたら…」
私が物思いに耽っていたらお父さんが突然謝ってきた。
「えっ、お父さんどうしたの?」
私は気にしてないふりで答えた。
「この領が豊かになって、わし達が貴族らしい生活が送れていたらローザとムート様の結婚も守護精霊からの導きであったかもしれない」
お父さんは気づいてたみたい…。私がムート様に好意を抱いていたことを。
「……。どうやって運命の魔術師と出会うんだろうね…」
気まずくてちょっと話をすり替えてしまった。
守護精霊の話については貴族は当たり前に知っていることではあるけど運命の魔術師に出会う方法は本当に秘密にされていた。
守護精霊が顕現していないから当然守護精霊とコンタクトが取れないお父さんが領主である私達の生活は変わり映えがなく困窮したままだ…。どんなに努力をしても守護精霊が顕現していなければ繁栄はなかなか望めない。
「運命の魔術師と出会うことができないわしは王都で領民やローザが作ったものを売っていくことを続けていくしかない」
「そうだね…。やっぱりすぐ行かないでお父さんがさっき言ってたようにもう少しガラス工芸を作ってもらって数を増やして持っていこう」
守護精霊が顕現できていないことを悩むけど、毎日の生活は待ったなしだ。お父さんの言うとおり今できる方法でお金を作っていくしかない。
私はなんとか気持ちを立て直して王都にいく準備を進めていた。
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