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新連載です。よろしくお願いします。
「できたー!今回のペンダントもとても可愛くできたなー」
「おぉ〜もうできたのか。ローザはいつもながら早いな」
「うん、早く売りたいし。明日にでも早速王都に向けて出発しようか?」
私はエイド子爵の娘ローザ。子爵領の特産品であるガラス工芸の作品とともに私は子爵領で採れる粘土で粘土細工アクセサリーを作って定期的に父親のエイド子爵と一緒に王都に行って露店を出して売っている。
私が作るものをアクセサリーと言っているのはジュエリーと言われる高価な貴金属や宝石を使うものではないからだ。
「そんなに急がなくてもいいんじゃないか?もう少しガラス工芸も持っていきたいしな」
「え〜私の方はもう材料ないし、早く売ってお金を作って材料も買い足したいよ」
一応貴族で領主なのにどうして王都に露店を出しているのかというと、うちの領がとても貧しくて貴族としての生活が送れないから。私達は領主でもほぼ領民達と変わらない生活をしている。
私の家族は今はお父様だけで、お母様は幼い頃に妹を出産する時に亡くなってしまった。生まれた妹も身体が弱くて生きられなくてお母さんの後を追うように亡くなってしまった。
どこかの貴族の娘と再婚話も出たみたいだけど、うちの子爵領にお金がないから実現しなかった。
使用人も私達が王都に行った時に屋敷に誰もいないのもよくないので王都に行った時の留守番の家令しかいない。だから本当に領民と変わらないような生活をしている。
一応農作物は作っているけど、ほとんど採れなくて領民が食べる分だけしかない。だからそれを外に売ることができなくて収益がない。それで何か考えて、最近やっとできたのがガラス工芸品。そして領の土地から採れる粘土で私が作る粘土細工のアクセサリー。
最初はなんとか領の利益の足しになればいいなって思ってやってみたことだけど、私には案外粘土細工のアクセサリー作りが向いているようでとても楽しく作っている。
粘土をこねて形を形成して、それを窯で焼いているからとても出来上がるまでに時間はかかるけど、出来上がりを予想して粘土をこねて作っても想像とは違うものが出来上がることもあり、それはそれでとても楽しみながら作ることができていて趣味と実益を兼ねていると言っても過言ではない。
領の特産品のガラス工芸の方は昔からあるものでこれはガラス職人という立派な職業であり、私が作りたいと思ってもおいそれと簡単にできるものではなかった。
これはガラス工芸の職人が一つ一つ手で作っているから大量に作れるわけではなく手売りできる程度しか作れない。当然私が作る粘土細工も私一人で作ってるから大量に作れるわけではない。だから王都に出している露店のような店で売るしかないってわけ。
「そういえば最近、ムート様粘土買いに来ないね」
ムート様は隣のソルビット伯爵様の次男。伯爵の息子だけど、次男なこともあって自由に暮らしていた。ムート様も粘土細工を作るのが趣味でうちの領で採れる粘土を気に入ってくれてよく粘土を買いにきてくれていた。それが縁で私と仲良くなっていた。
「あぁ…そういえばローザ、ムート様のことだけど…」
「うん、どうしたの?何か知ってるの?」
「ムート様の父上のソルビット伯爵様がどうやら守護精霊とコンタクトが取れるようになったみたいでな。その守護精霊の導きで伯爵領に温泉が見つかったそうだ。」
「えっ!守護精霊とコンタクトが取れるようになったの?!」
「ああ。ムート様の話だとそうみたいだ」
「いいなー」
この国の貴族の間では人生の進むべき方向へ導いてくれる守護精霊というものが存在していた。しかし、守護精霊は特別な力を持った運命の魔術師と呼ばれる存在に頼んで守護精霊を顕現してもらい、尚且つコンタクトの方法も教えてもらわないとその恩恵を受けることができなかった。
自分の守護精霊が顕現してコンタクトが取れるようになり進むべき方向に向かうとその人の人生が繁栄すると言われていたが、特別な力を持った運命の魔術師がどこにいるのかはわからなかった。
そして、運よく運命の魔術師と出会えて守護精霊とコンタクトができるようになったとしても、どうやって運命の魔術師と出会ったのかは家族のような親しい者以外に口外してはいけないと言われていた為、出会えていない人達が知ることはできなかった。
そのため、運命の魔術師と出会うことのできた貴族の土地は栄え、出会うことができない貴族の土地は困窮していることがほとんどであった。うちもお父様はもちろん、私も運命の魔術師と出会えていないから困窮の一途を辿っていた。
ムート様のソルビット領も今までは誰も守護精霊が顕現していなかったからうちとどっこいどっこいの状態の領だったけど、もう違うんだな…。
お読みいただきありがとうございました。
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