表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第9話 バーサスな2人 ② (七瀬勝視点)

(うっ、気まずー……)


あんなにフレンドリーだった美人マネージャー、藤見杏花さん。

勝にぃを見送ったあとは、急にスマホに集中モード。

え、えぇ……なんでそんなに無言なの……?

さっきまでの愛嬌、どこ行ったんですか!?

こっちが悪いことしたみたいで、逆に怖い。


「ねぇ? あなたさー?」


ビクッッッ!!!!!


突然の声に、反射的に背筋がビヨーンって伸びた。

びっくりした私を見て、藤見さんはクスクス笑っている。


「そんな驚かなくてもいいじゃん。くくく、美緒ちゃんってウチの猫そっくりだわ。びっくりすると、耳がピクってなるの」


フレンドリーモード、再起動。


こうして間近で見ると、男子に人気あるのも納得だなあ……。

目がクリクリで、吸い込まれそうなんだよね、マジで。


「美緒ちゃんってさー。んーと……」


なぜか言葉を選びながら、髪をくるくるいじってる藤見さん。

そして、いきなり真顔になってこっちを見てきた。


「美緒ちゃん、七瀬先輩のこと、好きなの?」


直球ーーーー!!!しかも豪速球ーーーー!!


「へへへ。さっきも言ったけどさ、美緒ちゃんってやっぱウチの猫だわ。隠したいとき、そんな顔するのよ~。うんうん、好きなんだ。七瀬先輩のこと」


「ち、ちがっ……というか、その……私と勝にぃは、いわば兄妹みたいな……腐れ縁というかあーでもなくて……!」


ワタワタする私に、藤見さんが両腕で「ストーーップ」。


「OK、OK。わかった。……そんじゃ、私が七瀬先輩、もらっちゃってもいい?」


「えっ」


「だから、アタックしていいよね? 私が」


さっきまでのおちゃらけとは違う、ちょっと恥ずかしそうな言い方。

けど、真剣さは伝わってくる。


さっきの教室前のやりとりを見ていたら、

藤見さんが勝にぃを“特別な人”って思ってるの、私でもわかった。


「勝にぃは、中学からあんまり話せてないけど……私にとっては、やっぱり……大事な人なんだよね」


……ああ。

言っちゃった。

胸の奥にずっと置きっぱなしだった言葉を、口にしてしまった。


「じゃあ、ライバルだね」


「そ……そうなる、かも」


うん、認めたくないけど。

勝にぃは、勝にぃだ。

変わらない、大切な人なんだ。


でも――私も聞いてみたくなった。


「ねえ、藤見さんは、なんで勝にぃのこと好きになったの?」


「……初めて、すごいなって思ったんだ。何かに一生懸命になってる人って、こんなにカッコいいんだって。七瀬先輩が1年のときに、春高バレー出たじゃん? あのとき見に行ってて……最後まで諦めずにボール追いかける姿、私、見惚れちゃってさ」


あの大会、たしか全国4位。

勝にぃは確かにエースとして活躍していた。


「そのあと、マネージャーに立候補して。でも、事故があって……。彼が戻ってきたとき、バレーを辞めるって言われて……ちょっとショックでね」


そのときの藤見さんは、さっきまでの明るさがウソみたいに、静かだった。


「でもさ、私見たんだ。病室でごはん食べてくれた時とか、リハビリ頑張ってた姿とか。もうね、また感動しちゃって。……嫌な女だよね、私」


「嫌な女じゃないよ。むしろ、勝にぃは藤見さんが来てくれるって、めっちゃ喜んでたよ。“病室がうるさくて元気になる”って」


「……本当に?」


「うん。だからさ、もし勝にぃがバレー部のみんなから冷たくされたら、私がグーで殴るから」


「……グーで!?」


驚いて目を丸くした顔が……うちのコーギーに似ててちょっと笑っちゃった。


「美緒ちゃんってさ、本当、面白いわ。七瀬先輩が言ってた通りだね」


「えっ、勝にぃ……また余計なこと言ってた?」


「えっと、忘れた☆」


困ったような笑顔。でもその目は、まっすぐだった。


「ねえ、美緒ちゃん――じゃなくて、美緒。私のことも杏花って呼んでよ」


「うん、じゃあ、杏花。こっちもよろしく」


「よろしく、ライバルさん」


「負けないからね!」


そう言い合いながらも、なんだか……ちょっと友達になれた気がした。


その時、教室の隅からじっとこちらを見ていたのは――

読書モードの由依ちゃん。


2人のライバル宣言を聞いてしまい、頭を抱えていた。


「はぁ……こうなっちゃったか……あちゃー」


勝にぃをめぐる恋の三角関係、ここに開幕――!!


読んでくださりありがとうございます。

評価 感想 ブックマークしていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ