表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第8話 バーサスな2人① (七瀬勝視点)

俺が美緒の存在に気づいたのは、藤見との会話が一段落してからだった。


……きっ気まずい。


背後から氷点下の視線が刺さってくる。あれは……美緒だ。目が完全に「お前、見たぞ」モードである。


「おーい、2-Cのクラスルーム、始めるぞー!」


タイミングよく、クラス担任らしき若い女性教師がやってきた。


「私は2年C組の担任、宮瀬絵里。教科は現代文。ま、よろしくってことで」


彼女は黒板に、自分の名前を筆文字でドンと書いた。うまっ! しかも妙にキラキラして見える。


「じゃーね。今から出席取りつつ、自己紹介もやっちゃおうか。趣味とか言ってくれると仲良くなれるかもよ〜?」


宮瀬先生はニヤリと笑いながら、こちらを一瞥。親しみやすいタイプの先生……いや、ちょっとクセ強そうな予感もする。


「浅香里奈!」


「はいっ! 浅井里奈です。趣味はカフェ巡りです♪ よろしくお願いしまーす!」


パチパチパチ……と拍手が起こる。なんか和やかムード。


順番に自己紹介が進んでいき、ついに俺の番がやってきた。


「七瀬勝……」


「は、はい……。えっと、俺は……2回目の2年生です。な、仲良くしてください……」


静寂。拍手、若干の時差あり。わかる。扱いづらいやつが来た感、出てる。


「七瀬とは仲良くしてあげてねー。そして、七瀬、あとで職員室に来い」


「え?」


有無を言わせぬ宮瀬先生。怖い。けどちょっと気になる。


「センパイ……じゃなくて勝、なにかやらかしたんすか?」


藤見がニヤつきながら、めっちゃ楽しそうだ。


「いや、やらかしてねぇし。ほら、他の自己紹介ちゃんと聞け」


俺が促すと、藤見は「ちぇ〜」と言いながら前を向いた。


クラス36人分の紹介が終わり、先生は学級簿をパタパタさせて去っていった。


「はいはい、今日は終わり! 明日から本番だから、遅刻すんなよー!」


さて、ここから自由時間。


「宮瀬先生、かわいくない?」


「うんうん、タイプかも〜」


「部活どーする?」


「今日サボりでしょ〜」


教室は、途端に放課後テンション。


「勝〜♪」


「なんだよ、うっとおしい」


またしても、恋人風に絡んでくる藤見。髪の毛クルクルしながら、近距離でこっちを見てくる。


「勝の復帰祝い、カラオケで開催しま〜す☆」


「行かねーぞ」


「即答かよぉ!」


藤見は机にズデーン。すぐ立ち直って、俺を見つめる。


「ねえ、男バレは?」


「休み」


「じゃあ問題なし! ほら、美緒ちゃんも一緒に……ね?」


「ふぇ!? あ、う、うんっ!?」


美緒が跳ねた。挙動が完全に『バレたら終わりの監視者』モード。


「美緒ちゃんも勝の復帰祝い、したいよね〜?」


藤見は美緒の肩に手を回して、急接近。美緒、完全フリーズ。


「おい、藤見。美緒が……引いてるぞ」


「え〜? でも仲良くなれそうな気がするんだよねー」


もはや既成事実を作る勢い。


「えっと、私は……」


美緒は迷いながらも、なんとか口を開いた。


「……したくないわけじゃ、ないけど……」


「よしっ! 二対一でカラオケ決定〜!!」


「ちょ、おい! いつの間に民主主義!?」


「しかも多数決っ!」


俺の抗議も空しく、空気はすでに『開催確定』モード。


「あ、そうそう。勝くん、宮瀬先生が職員室で待ってるってよ? 早くいってらっしゃ〜い」


藤見はバイバイモーション。美緒も、ぎこちなく手を振ってくる。おい、それ絶対、迎撃体制だろ。


「……ったく、しょうがねぇな」


俺はひとこと吐き捨てて、職員室に向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ