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第2話 恋と制服と、ブサカワキーホルダー(福井美緒視点)

4月7日。


ついにこの日が来た。

何度、夢に見たことか。


……今日は、私にとって特別な日。

小学生の頃からずっと憧れてた、あの人に近づける――そんなチャンスの日!


玄関の鏡で最終チェック。

制服ヨシ、リボン曲がってない、スカート丈は女子高生の誇りとしてギリギリ攻める!


そして――一番大事なアイテム。

あの人からもらった“ブサカワキーホルダー”、ちゃんとバッグにぶら下がってる。


……コレだけは絶対に外せない。私とあの人を繋ぐ、たったひとつの証なんだから。


(とか言って、重い女っぽいかも……でもいいの!)


「ふぅーーっ……よし!」


深呼吸して、両ほっぺをぺちぺち叩いて気合いを入れていると――


「おねーちゃん、なにやってんの?というか。

朝からテンション高っ」


「ぶっ!!」


いきなり声かけられて、変な咳が出た。

しかもよりによって妹か……!


そこに立ってたのは、パジャマ姿の福井里奈。

眠そうな顔しながら、胸だけはやけに成長してやがる。ちょっと複雑。


「な、なんでもないよ!? 始業式だからね、うん、気合い入れてるだけ!」


しどろもどろで取り繕う私。絶対バレてないよね!?


「ふ〜ん……でもまだ7時じゃん?」


じと目でジト〜っと見てくる里奈。

こいつ、地味に勘が鋭いんだよなぁ。


「ほら、道が混むとアレだし?早めに出るのが美徳というか……」


あっさり動揺して言い訳重ねてる時点でダメじゃん私!


「怪し〜〜い」


「怪しくないし! これ見て、いつものお姉ちゃんでしょ!」


バッグでキーホルダーを隠しつつ必死に誤魔化してたら――


「……そのキーホルダー、勝にぃのやつじゃん」


「えっ!?」


しまった……完全にうっかり。

キーホルダー、つけたままだった……!


「今日からだよね、勝にぃ。学校、復帰って」


「え、うん? そう……だったかな?」

なんとか無関心を装うけど、声が裏返ってる。終わったわ。


近所に住んでる七瀬勝――勝にぃ。

彼のことを考えると、胸の奥がふわっとあったかくなる。


でも、この気持ちは絶対、妹にはバレたくない!


「ふ〜〜ん。お姉ちゃん、すっごい楽しそう」


にやにや笑う里奈。ちょっと殴りたい。


「去年なんて死人みたいに登校してたのに、今朝の元気さ……これはもう、勝にぃ効果ですね?」


「うっさいわ!!」


思わず、妹の頭にロックオン。

そのままホールド&グリグリで沈めにかかる。


「ぎゃー!ギブギブ!顔潰れるぅー!」


うちの姉妹喧嘩は、基本“手”から入る。


「すーぐ暴力〜。そんなんじゃ、勝にぃにも嫌われちゃうんじゃない?」


「ちっ、勝にぃとは別にそんなんじゃないしっ!」


「はいはい。お年頃だもんねぇ〜」


このやろ……と思ったその時、里奈の表情が少し真剣になる。


「……頑張ってね。勝にぃが、また無理しないように」


「えっ……」


その一言が、まっすぐ胸に刺さった。

去年のあたしが一番ボロボロだった時、そばにいてくれたのは……この子だった。


(ほんと、どっちが姉なんだか……)


「……うん。ありがと。行ってくるね!」


思わず玄関を飛び出す。


「バイバ〜イ!吉報待ってるからね〜!」


「違うしっ!」


後ろから聞こえる里奈の声。

でも、胸の奥がポッと熱くなるのを感じた。


……きっと今日から、何かが変わる。

そう思える朝だった。


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