8.じいじ、専用武器はまさかのそっちだった
ベヒモスに負けるとは……もう立ち直れる気がしない。
たしかにあいつは可愛いからな。
「じいじ、装具は投げるもんじゃないよ? リハビリの兄ちゃんに言いつけるよ?」
「なっ!?」
まさかハルキがあの鬼畜ドSの手下になるとは思わなかったぞ。
「ほら、ちゃんと着けないと」
「ん? 装具は投げて……」
なぜか装具が目の前に転がっていた。
ぶつけた時に跳ね返ってきたのだろう。
【アイテム情報】
アイテム じいじの短下肢装具
等級 ユニーク級(専用装備)
詳細 持ち主に合わせて成長する武防具
認知症の持ち主のために自動帰還機能を搭載
知恵袋のおかげでアイテム情報が確認できた。
まさか足に付けていた短下肢装具が成長武防具だとは思わなかった。
「ぬあああああ、わしは認知症じゃないぞおおおお!」
ただ、無くさないように戻ってくる仕様になっていた。
みんなしてわしを認知症扱いにしようとする。
「じいじが壊れた……? やっぱり認知症――」
「認知症じゃないからな!」
勘違いしてそうなハルキにわしは微笑みながら元気だと伝える。
「じいじ、笑ってないで装具を履くよ?」
ちゃんとハルキに伝わっているのだろうか?
「んー、これでいいのかな?」
一生懸命わしの足に装具を履かせようとする。
「これならいけるか?」
「もー、じいじ足あげて!」
装具の履かせ方がわからないのか、ハルキは戸惑っていた。
「ハルキ、あのベヒモスをテイムできるかもしれないぞ!」
だが、それよりもベヒモスをテイムできる糸口を見つけた。
「それよりも装具を履かないと……」
装具の大事さを鬼畜ドS兄ちゃんに聞いているのだろう。
テイムできるかもしれないと聞いて、ハルキは笑顔に……ならなかった。
怪しんだ表情をわしに向ける。
「じいじ、認知症だもん。ほら早く装具を履くよ!」
「むむむ……たしかによく装具を履き忘れるけど、これは認知症じゃない。性格だ!」
「それに高次機能障害もあるって……」
ハルキの言葉が突き刺さる。
残りのHP1だが、今の攻撃で0になりそうだ。
装具を履き忘れるから、自動帰還機能が付いたとは思うがまだ認知症検査ではギリギリよかったはずだからな。
あの鬼畜ドSも笑顔で「ギリギリ範囲内ですね」と褒めてくれたぞ!
「ハルキ、少しの間だけ目を閉じていなさい」
「なんで……?」
「じいじは恥ずかしがり屋だからや。一人で装具ぐらい履けるぞ」
「はぁー、わかったよ」
どこか呆れながらもハルキはその場で目を閉じる。
その間にわしは途中まで履いていた装具を外して手に取った。
そのまま隠しの家の範囲外に腕だけを出してベヒモスに投げつける。
――ダメージ50
ベヒモスのHPがどれだけあるのかはわからない。
だが、じわじわとダメージを与えれば、チリを積めば山となる。
いや、装具を投げれば致命傷になるって言葉をベヒモスに送ろう。
戻ってきた装具を何度も何度も繰り返して投げる。
「じいじ、履けたー?」
「もうちょっとかなー」
優しいハルキは目を閉じてちゃんと待っている。
これならベヒモスに装具を投げていることもバレていないな。
『にゃ!? にゃあああああ!』
ベヒモスはわしがどこにいるか察知できないため、突然当たる攻撃にイライラしている。
ジタバタする姿も、見た目が可愛いとベヒモスでも怖さはない。
だが、もう少し静かにしないとハルキが気づいてしまう。
「装具……と見せかけて薬草!」
装具を投げる同じタイミングで薬草も与えて回復させる。
ダメージは50だけど、薬草でHPは20回復する。
『にゃ?』
謎の行動に体の傷も治って驚くだろう。
ただ、魔物を懐かせるのはエサがなくても薬草があればできる。
たしかダメージを与えて、回復させれば懐くという裏技みたいなバグが昔のゲームにもあったはずだ。
リアルなゲームなら、そういう仕様も残されているに違いない。
『にゃ……にゃにゃ……』
段々とベヒモスも混乱しているのだろう。
頭を抱えて首を大きく振っていた。
これが今回の狙いだからな。
あとはギリギリまでダメージ与えれば――。
「ダメ!」
「ふぇ!?」
装具を投げつけようとした瞬間、目をつぶっていたハルキがベヒモスの前に立ち塞がった。
あまりにも突然の出来事に、入れ歯が飛んでいきそうになっていた。
急いで入れ歯を口の中に戻す。
入れ歯がないと何を話しているのかわからないってよく言われるからな。
「ハルキ、退くんだ!」
「認知症でもネコちゃんをいじめちゃダメ!」
「うっ……」
認知症ではないが、たしかにネコに物を投げてはいけないからな。
ただ、庇っているそいつはベヒモスであって、ネコではない。
『にゃああああああ!』
ハルキの頑張りも虚しく、ベヒモスは大きく口を開ける。
「ハルキィーーー!」
このままでは感覚遮断をしていないハルキは、直接咀嚼されて痛みを感じるだろう。
わしは声をあげたがすでに遅かった。
――パクッ!
ベヒモスはハルキの頭を咥えた。
そして、また吐き出した。
『にゃにゃにゃ?』
ベヒモスは何か考えているのか、ハルキを咥えて吐き出すのを繰り返すと、そのうちペロペロと舐め出した。
「おい、どういうことだ?」
「へへへ、実はこれを塗っていたんだ!」
ハルキは嬉しそうにネコが夢中になるスティック状のペーストおやつを持っていた。
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