最終話 じいじ、今日ももふもふのお世話係です
「またよかったら会いましょう」
「私も気分転換になったので、ぜひまたお願いします」
子どもたちが同級生で、お互い学校に中々いけない。
そんな共通点のある子を持つ両親は、わしらよりも意気投合していた。
ちなみに学校の話をしてみたが、陽希は奏汰が一緒なら行ってみても良いと言っていた。
一方の奏汰も陽希がいるならと、少し前向きな言葉が聞こえた。
お互い知っている人がいるかいないかで、気持ちは全く異なってくるからな。
この先どうなるかはわからないが、二人は一歩前には進めたのだろう。
♢ ♢ ♢
別れを告げたわしは、一足先にゲームにログインすることにした。
どうしても梅子のことが気になっていたしな。
「みんな……ぐふっ!?」
ログインした瞬間、息苦しさと顔面にもふもふとした毛を感じる。
わしがゆっくりと顔に触れると、なぜかポンとゴマが顔の上で寝ているようだ。
『にゃ?』
『キュ?』
わしが起きたことに気づいたのか、ポンとゴマは何事もなかったかのように、体を伸ばしてどこかに行く。
普段とログインする時間が違うから気づかなかったが、ひょっとしたらいつもポンとゴマはわしの顔の上で寝ているのだろうか。
いつもツンツンした気まぐれなところしか見ないのに、実は甘えたなところも可愛い。
ただ、今はそれどころではない。
「キッチキチ……」
起きようとしたら梅子も隣で寝ていたのか、抱きついているため、全く身動きが取れないでいた。
「梅子、そろそろ起きないか」
「キッチ……ん? うわあああああ!」
梅子はわしと目が合うと、勢いよくわしを突き飛ばした。
――ダメージ9
やっぱり梅子は強い魔物なんだろう。
わしのHPが一瞬で1まで減っていた。
「いててて……」
「ああ、ごめんなさい」
ベッドから転げ落ちたわしを梅子はすぐに引き上げてくれた。
「うわっ!?」
だが、わしを片手でふわっと持ち上げるほどの力があった。
いつのまにか梅子は力持ちになったのだろうか。
「あっ、おじいさんの方が早かったね」
「カナタ、おかえり」
次に目を覚ましたのはカナタだった。
娘はわしを施設に送り届けたから、最後はハルキがログインしてくるだろう。
「やっぱり僕が一番最後だったね!」
そんなことを思っていると、ハルキもログインをしてきた。
「カナタ、今日はなにをする?」
「んー、まずは野菜が少なくなったから、畑の世話をしないといけないかな」
野菜はほとんど町に置いてきたため、また育てないといけない。
「じゃあ、僕も手伝うね!」
二人ともさっきまで一緒にいたのに、ゲームの中に来ても遊び足りないのか、すぐに隠しの家から駆け出した。
『にゃー』
『キィー』
そんな二人を追いかけるわけでもなく、ポンとゴマが珍しくわしのところに寄ってきた。
「どうしたんだ?」
ポンはわしの足をパシパシと叩いている。
「えーっと……」
『にゃあああああ!』
何が伝えたいのかわからず首を傾げていると、次にポンは冷蔵庫をバシバシ叩いていた。
どうやらご褒美におやつをくれって言っているのだろう。
ってことはゴマも――。
『キィーーーー!』
やっぱりゴマもお礼にじいじ狩りをさせてくれと言っているのか、角を持ってじわじわと近寄ってきていた。
ログアウトする時に、何かあった時のために頼んだのはわしだ。
そのおかげもあったのか、梅子には襲われずに住んでいる。
実際に襲われたのは起きてからだしな。
そもそも梅子はわしを襲うつもりもないかもしれない。
ポンにおやつをあげると、すぐにわしは隠しの家から飛び出した。
『キュー!』
わしのすぐ後ろをゴマが立ち上がって、嬉しそうに追いかけてきた。
今日もわしはもふもふたちの世話をしないといけないようだ。
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