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元ゲーマーのじいじ、気ままなスローライフを始めました〜じいじはもふもふ達の世話係です〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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54.じいじ、妻に手料理を振る舞う

「ばあば、どうしてここにきたの?」

「じいじに会いたくて来たに決まってるじゃないの」


 梅子とハルキが手を繋いで、一緒に隠しの家に入っていく後ろ姿に涙が出そうになる。

 もし、梅子が生きていたら、こんな未来もあったのだろう。


『にゃ!』

『キィ!』


 ポンとゴマはわしに「なんとかしろ」と怒ってくるが、わしは別にこれで構わない。

 ポンやゴマにとったら、ここは現実の世界だ。

 でも、わしやハルキにしたら、夢を与えてくれるそんな場所だ。


「大丈夫。梅子はそんなことしないからな」 

『にゃー?』

『キュ?』


 少し怪しんではいるものの、わしの話を理解してくれたようだ。

 すぐにハルキの後を追いかけていく。


「おじいさんのお嫁さんはもういないの?」

「ああ」


 カナタには妻の話をしたことがないため、戸惑っているのだろう。


「カナタには会いたい人はいないのか?」

「んー、僕の家族はみんな生きてるから大丈夫かな。あるとしたら……ハルキに会ってみたいな」


 カナタは現実でハルキに会いたいのだろう。

 毎日一緒にゲームをやって親友と言えるほど、仲良くなった二人なら、直接会っても大丈夫な気がする。


「そうか。じゃあ、おじいさんに任せてみなさい」


 わしはチャットに電話番号を記載して、カナタに伝える。


「ここに電話をかけたら、わしに繋がる。お母さんにかけてもらいなさい」

「わかった!」


 その瞬間、カナタの目がパッと輝いた。

 まるで希望が目の前に差し出されたように、口元がゆるみ、表情が一気に明るくなる。


「ちゃんと一緒に遊んでるおじいさんと伝えないと――」

「毎日ハルキとおじいさんの話をしてるから大丈夫だよ!」


 どうやらわしらのことは伝えているらしい。

 あとでログアウトした時にでも、電話がかかってくるだろう。


「じいじ、カナタ! 遅いよー!」


 ハルキに呼ばれてわしとカナタは急いで隠しの家に入っていく。

 今日はたくさん動いたし、美味しいご飯でも作ってあげよう。



 家に帰ると早速、料理をすることにした。


「私も手伝います」

「ははは、きっと梅子よりわしの方が上手だぞ」


 梅子の甘すぎる卵焼きや醤油味が濃い煮付けも良いが、ここは主夫歴の長いわしの出番だろう。

 って言っても作るのはブリ大根ではなく、川魚カブだけどな。

 川魚の身でも大きさはしっかりあるし、繊細で淡白な味わいは濃いめ作れば問題ないだろう。


 まずは鍋に水を入れて、鰹節で出汁を作っていく。


「おいしそう……」

「ん? 鰹節は好きだったのか?」


 なぜか梅子は鰹節を見て、涎を垂らしていた。

 まるで久しぶりに料理を食べようと……いや、ひょっとしたら久しぶりなのかもしれないな。


「美味しいご飯を作ってあげるからな」

「キキキ、楽しみにしているわ」


 その声に、かすかに懐かしい響きが混じっていた。

 いつの間にか変わってしまった彼女と、それでも変わらない想いが交差する。


 出汁を取っている間に、鱗や内臓処理をしているイワーナに塩を振って、フライパンで焼いていく。

 軽く焼いておくと身崩れがしないためだ。


「そろそろ出汁もいいかな?」


 鍋の水の色も変わったのを確認すると、鰹節を取り出し、醤油、砂糖、生姜を加えて一度煮立たせる。


「大根の代わりにカブを使うけど、あまり煮ないようにしないといけないな」


 大根よりは火の通りが早く、短時間で味が染みやすいため、味が濃くなり過ぎないように注意が必要。

 少し柔らかくなったタイミングで、切ったイワーナを入れて落とし蓋をする。

 アルミホイルはないから、落とし蓋は大きめな葉っぱで代用している。

 これで10分から15分煮れば完成だ。


「その間におひたしでも……梅子どうしたんだ?」

「また、あなたのことが好きになりそうです」


 突然の告白に息が苦しくなりそうだ。

 わしの料理をしている姿にホの字なんだろう。


「じいじ、吹きこぼれ――」

「おっととと!」


 ハルキに言われるまで、火力が強いことに気づかなかった。

 わしの心も再びアツアツになりそうだ。


 川魚のカブ煮ができるまでに、カブの葉でお浸しを作り、簡単な魚のつみれ汁も用意した。


「さぁ、みんなで食べるぞー」


 並べられていく料理に梅子は驚いた表情をしていた。


「ははは、わしも昔と違って良い男になっただろ?」

「何を言ってるのよ。今も良い男よ」


 久しぶりに誰かに嬉しい言葉をかけられる。

 本当に昔に戻った気分だ。


「じいじ、早く食べよ!」

「僕もそろそろ危なそうです」


 わしも視界の端でHGがチカチカと点滅している。


「じゃあ、手を合わせて!」

「「「いただきます!」」」

「キッチキチ♡」


 どこかで聞いた声がしたが、チカチカと点滅するHGが気になって、それどころではなかった。

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