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元ゲーマーのじいじ、気ままなスローライフを始めました〜じいじはもふもふ達の世話係です〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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53.じいじ、腰が抜ける

「じいじ、何か付いてきてるってポンが言ってるよ?」

『にゃー!』


 隠しの家に戻ると、突然ハルキが誰かが付いてきていると言い出した。


「ラブショターンか?」


 彼女ならハルキの存在を知っているから問題ない。

 だが、他のプレイヤーなら、ハルキの存在がバレるわけにはいかない。


「みんなは家の中に入っていなさい」


 返事がないってことは、ラブショターンではないのだろう。


「じいじ、弱いのに大丈夫?」

「そうだよ? この中で一番おじいさんがお年寄りで体弱いし……」


 優しいハルキとカナタはわしを心配しているようだ。

 わしが頷くと、渋々ハルキとカナタは家の中に入っていく。


「おい、そこにいるやつは誰だ! 出てこないならわしからいくぞ!」


 わしは装具を脱いで投げつけようとするが、その手を止めた。


「梅……」


 わしは持っていた装具を投げ捨てる。

 隠しの家のセーフティーエリアから飛び出て駆け寄る。

 装具を外したことで、うまく歩けない。

 それでも必死に足を前に出して走っていく。


――ドシャン!


 顔面から勢いよく倒れたが、痛みなんて全く感じない。

 その場で立ち止まることなく走る。

 やっと会えたんだ……。


「じいじ!」

「おじいさん!」


 ハルキとカナタが呼んでいるがそれどころではない。

 なぜ彼女がいるのだろうか。

 頭の中はその言葉でいっぱいだ。

 考えることもできず、遅れて自動装着された装具のおかげか、少しは走りやすくなった。


「キッチ……あなた……」


 ずっと会いたくて、会いたくて、死ぬことすら考えた。

 でも、大事な娘を残してわしは死ぬことができなかった。

 やっとわしは愛する彼女を抱きしめることができる。

 その気持ちだけで、視界がボヤけて見えない。

 これが白内障……こういう時でも出てしまうわしのボケにも彼女はいつも笑っていたな。


「うめこおおおおおおお!」


 わしはその場で泣き崩れた。

 事故で亡くなった妻の梅子がそこにはいた。

 きっとわしは天国にでも来たのだろうか。

 愛する妻に会いたいと何度も願っていたからな。


「じいじ、その人はだれ?」


 振り返ると、ゆっくりとハルキが近づいてきた。


「ああ、ハルキは知らないよな。えーっと、おばあちゃんになるのか?」

「おばあ……ちゃん?」


 ハルキはその場で首を傾げている。

 理解するまでに時間がかかるのだろう。


「おばあちゃんって……あのおばあちゃん!?」

「ああ、そうだ」


 ハルキもわしらのところまで駆け寄ろうとするが、なぜかポンとゴマが必死に止めている。

 何か問題があるのか?


「じいじ、その人おばあちゃんじゃないって、ポンとゴマが言ってるよ?」

「そんなことないぞ?」


 わしが知っているのは綺麗な黒髪にクリッとした真っ黒な瞳。

 肌艶もわしと結婚した時の――。


「ほんとだ!? わしがじいじだから、梅子もばあばになってるはずじゃな!」


 ハルキに言われなければ気づかなかった。

 いくら先に亡くなったからって、そのままの姿ってわけではないしな。

 それに視界の端にボヤけている知恵袋が気になる。


【魔物情報】


名前 ク■ばあば

詳細 暗所に――古びた納屋を好む。

   肥大―― 温かい手からは煮物のにおいがし、短時間で群れを■■……ご飯を作って待っていてくれる。

   枯専(・・)

属性 闇属性/精神支配属性


 どうやらわしの妻は魔物のようだ。

 どこかで見たステータスにも似ているような気がするが気のせいだろう。


「魔物だから隠しの家に気づかなかったのか……」


 魔物でも妻として目の前に現れてくれただけでも嬉しい。

 梅子の手を握り、ゆっくりと隠しの家に連れて行く。



『にゃー!』

『キィー!』


 見慣れない人にポンとゴマも警戒をしているようだ。

 セーフティーゾーンに入った瞬間、ポンとゴマが梅子に飛びかかる。


「キッ……あらあら、可愛いウサギとネコね」


 寄ってきたポンとゴマを梅子は優しく抱きかかえる。

 ポンもゴマもセーフティーゾーンの中では、普通のネコとウサギだもんな。


「そういえば、梅子は動物が好きだったな」

「キ……そうよ」

「ハルキも梅子に似たんだな」


 ポンとゴマは逃げようとするが、梅子にしっかり掴まれて、逃げられないようだ。


「おばあちゃんも動物好きなの?」

「そうよ! もちろん、あなたのことも好きよ」

「おばあちゃん……」


 ハルキは目をうるうるとさせていた。

 生まれた時には祖母はいないし、残っている写真も少ない。

 ハルキもおばあちゃんに会えて嬉しそうだ。

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