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5.じいじ、孫を助ける

 メダルの他にもいくつかクエストが受けられるものもあり、ハルキとともに落とし物と引き換えに報酬を受け取る。


「たくさん増えたね!」


 ハルキの言葉に罪悪感を覚える。

 きっとクエストを受けていなければ、売るよりもお金が手に入らなかっただろう。

 初心者の金策でも、色々と試されているような気がした。


「今日からお前たちは冒険者だ。魔物の討伐依頼もあるが、外に出る時は準備を整えるんだぞ!」


 どうやら詐欺のように登録させられたギルドは、冒険者ギルドらしい。

 説明を受けたが、町の外に行って魔物を倒したり、町の人の困りごとを解決したりと幅が広いようだ。

 ちなみに他にも商業ギルドや生産ギルドというものが存在していた。

 わしはどちらかといえば、冒険者よりも生産者として遊びたかったが、ハルキは冒険者になって嬉しそうだ。


「ハルキ、さっきは何の報酬を選んだんだ?」

「ひみつ!」

「なっ……!?」


 メダルの追加報酬について聞いたら、秘密にされてしまった。

 これが孫の反抗期ってやつだろうか。

 娘の反抗期も大変だったが、孫の反抗期も思ったより心にくるものがあるな……。


「じいじ、はやくいくよー!」


 遠くの方でハルキがわしを呼んでいる。

 どうやら考え事をしていて、足が止まっていた。

 わしは久しぶりに足を大きく動かすと、少しずつ速くしていく。


「じいじ、走れてよかったね!」

「えっ……?」


 きっと久しぶりに走れたのが、表情に出ていたのだろう。

 わしも早歩き程度に思っていたが、この世界ではしっかり走れるようだ。


 その後もお金が増えたのもあり、途中でまた薬草を追加で買って、町の外に出ることにした。

 外に出るのは、外でマナ草という薬草を採取する依頼をみつけたのがきっかけだ。

 それにハルキはテイマーなのに、まだ何もテイムしていないのもあり、外に出る依頼を受けることにした。

 外でマナ草を見つけながら、テイムできそうな動物や魔物を探していく。


「ハルキは何をテイムしたいんだ?」

「んー、イヌかネコ!」

「前から飼いたいって言ってたもんな」


 両親が仕事で毎日遊んでくれることが少なく、一人っ子だから尚更寂しい。

 きっとハルキがテイマーなのも、願望が強く出てシステムが反応したのだろう。

 一緒にいてくれるイヌかネコがいたら、少しゲームをするのも楽しくなりそうだ、


「マナ草は川の近くにあるって言ってたけ?」

「おっ、そうだったのか?」

「じいじ、ちゃんと話聞いてた?」


 昔からゲームの時はあまり話を聞かない方だった。

 常にチュートリアルはスキップして、話もとりあえずボタンを押して進めていたからな。


「ちゃんと話は聞かないとダメだよ?」

「わかった」


 この歳になって、現実のようにちゃんと話を聞けと孫に怒られるとは思わなかった。

 川に着くと、早速マナ草を探していく。

 マナ草は葉が丸く、特徴的な見た目をしているらしい。


「川は危ないから、足元に気をつけるんだぞ!」

「わかったよ!」


 今度はわしがハルキに注意を呼びかける。

 マナ草は水気が多いところに生えているらしい。

 そのため、川や池などで最終できると冒険者ギルドで聞いている。


「じいじ、これは?」

「これは……」


 わしはハルキが持ってきた葉を知恵袋を発動させて、詳細を確認していく。


【アイテム情報】


アイテム 水草

詳細 ただの水草

   栽培可能


「これはマナ草ではないな」


 どうやら持ってきたのは、ただの水草だったようだ。

 葉が丸いから勘違いしたのだろう。

 昔のゲームならアイテムの情報はすぐに分かったのに、今のゲームではそれすらスキルになっているから難易度が高くなった。

 鑑定ができないと情報を覚えるか、インターネットシステムを使って調べないといけないのだろう。


「あっ!?」

「ハルキどうし……ハルキ!?」


 ハルキは足を滑らしたのか、そのままゆっくりと川に流されていく。

 あれだけ気をつけるように言ったが、わしが目を離したのがいけなかった。

 わしはハルキを助けようと、すぐに川の中に入っていく。


「じいじ!」

「すぐに助けるからな!」


 ハルキは泳げないのだろう。

 その場でジタバタとしていた。

 いくらゆっくりした川の流れでも、溺れると感覚が共有されて息苦しいはずだ。


「ここに掴まれ!」


 わしはT字杖を出して、ハルキに向かって杖を差し出す。

 一生懸命杖を掴もうと手を伸ばそうとするが、そのままわしらは流されていく。


「どうしよう、滝があるよ!」


 突如、目の前に現れた滝にわしらは、ただただ流されていく。


「息をたくさん吸うんだ!」


 わしはハルキに息をたくさん吸うように伝える。

 川の流れがゆっくりなら、そこまで高さのない静かな滝壺になっているはずだ。

 長年生きたじいじの知識を舐めてはいけない。

 知力も意外に高いんだからな。


「うおおおおおお!?」


 だが、無情にもわしらは落ちていく。

 急な浮遊感にわしは再び死ぬのかと思った。

 ここまでリアルにゲームを作らなくても良かっただろう。


「あはははははは!」


 ただ、一緒に落ちているはずのハルキは楽しそうに笑っていた。

 さすが若いだけのことはある。


――ドボン!


 水飛沫を大きく上げて、わしらは滝壺に落ちた。

 思ったよりも滝壺は深いようだ。

 すぐに近くにいたハルキを抱えて、水面に顔を出す。


「ぷはっ!?」


 ゲーム初日にこんな思いをするとは、考えもつかなかった。


「ははは、楽しかったね!」


 しかし、ハルキはよほど楽しかったのかずっと笑っている。

 ハルキにとったらウォータースライダーの感覚に近かったのだろう。

 わしにしたら、今にも動かなくなりそうな心臓をギュッと掴まれたような感覚だった。

 元々遊園地とか苦手だったからな。


「ハルキ、ケガはないか?」


 すぐに滝壺から出てくると、ハルキにケガがないか確認する。

 ハルキは大きく首を横に振った。

 HPを見ても減っている様子はないため、ケガもなく無事のようだ。


「じいじ……!」

「どうしたんだ?」


 ハルキの顔を見ると、なぜかキラキラした目をしていた。

 そんなに川下りが楽しかったのだろうか。

 それとも必死にハルキを助けだすわしの姿がかっこよかったのか?

 やっと、兄ちゃんよりわしの凄さを思い知ったんだな。


「うんうん! それでこそハルキだな!」


 あまりの嬉しさに頷いていると、ハルキの視線はわしの背後に向いていた。


「じいじ!」

「なにかあったのか?」


 ハルキはわしを強く叩き、後ろに指をさしていた。

 ゆっくりと振り返る。


「ネコがいる!」


 そこにいたのは巨大化したネコがいた。

 きっと背中にも乗ることができるのだろう。


【ワールドボスマンチカン(ベヒモス)が現れた】


 突如、アナウンスが聞こえてきた。

 どうやらゲームの中でボス級と言われるベヒモスが現れたようだ。


『にゃあああああ!』


 だが、手足が短くまるでマンチカンのような姿をしていた。

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