47.じいじ、カナタを守る
「ゴマ、建物の下に一匹いるよ!」
『キュー!』
ゴマは建物の隙間に角を突き刺し、黒光したやつを倒していく。
「ポン、あそこにある瓦礫を動かして!」
『にゃー!』
一方、ポンも得意な怪力で、建物の下敷きになった人を助けている。
ハルキは次々と的確な指示を出している姿に成長を感じた。
「んー、この辺にクールタイムはないから、誰もいないのかな?」
カナタはクールタイムを利用して、ニンゴラと一緒に救助する人を探していた。
何でもクールタイムの表示があるところに、NPCがいることが多かった。
NPCはクールタイム後に復活する仕組みなんだろうか?
クールタイムが表示されている間なら、無事に生きていていた。
「じいじは、僕たちの後ろにいてね?」
「おじいさんは、虫嫌いだもんね!」
ああ、わしは今もハルキとカナタに勘違いされたまま守られている。
さっき試しに装具を黒光りしたやつに投げてみたが、すばしっこくて逃げられてしまった。
しかも、ターゲットがわしに変更され、たくさん向かってきた時は悲鳴を上げずにはいられなかった。
結果、本格的に虫嫌いとして確定してしまった。
虫は虫でも黒光したやつは別物だからな。
大人なら誰だって怖いはずだ。
「次は町の奥まで行くぞー!」
「おー!」
ドンドンと町の中央に向かっていくと、戦っている音は次第と大きくなっていく。
きっとあの先に他のプレイヤーたちがいるのだろう。
「なぁ、ポン?」
『にゃ?』
「わしらって他の人たちにバレたら危なくないか?」
以前町でポンの存在がバレた時は、町から逃げるように立ち去った。
今もポンは普通にベヒモスの見た目だし、追加でアルミラージのゴマと土の妖精でニンドラゴラのニンゴラもいる。
明らかに他のプレイヤーには見つかっていけないような気がする。
――ガサッ!
「ヒィ!?」
またやつが現れたと思い、わしはびっくりしてしまった。
「みんなじいじを守れ!」
「うん!」
『にゃ……』
『キュ……』
『めんど……ゴラッ!』
それと同時にみんな警戒して、わしを中心に囲んでいく。
ハルキとカナタはやる気満々だが、他のやつらは呆れた顔をしているぞ。
特にニンゴラなんて言葉に出ている。
戻ったらあいつはにんじんしりしりにしてやろう。
ちょうど魚もあるから、ツナ缶の代わりになるだろう。
「えっ……ハルキくんと……新しいショタ!?」
「ラブ……ショターンさん?」
突然、出てきたのはラブショターンだった。
以前はブラックリストに入れていたが、あまりの音のうるささに削除していた。
この前も建物の隙間からひょこっと出てきたからな。
「くうううう! ハルキくんが名前を呼んでくれたわ」
ラブショターンの反応にカナタは若干引いていた。
彼はハルキと違って、しっかりと人を見極める目があるようだ。
「ととと、ところで君のお名前は何と言うのかな? じゅるり!」
明らかに今にも垂れ流れそうなよだれを啜り、カナタに近づいていく。
「おじいさん……あの人怖い」
カナタはすぐにわしの後ろに隠れて身を隠した。
初見であんな大人が近づいてきたら、誰だって怖いからな。
「ははは、久しぶりだな」
「チッ! くそじじいが邪魔しやがった」
おいおい、わしに対してだけ扱いが酷くないか?
「うちの孫たちに何のようだ?」
「その子もお孫さんなのね……」
ハルキは歴とした孫だからいいけど、カナタも孫みたいなものだ。
わしが面倒を見ないといけないと思っているし、何かあったらわしが責任を取るつもりでいる。
ジィーとカナタを見つめるが、カナタはわしの後ろに隠れて出てこない。
「名前は何というのかしら?」
「うちの孫は――」
「カナタは人見知りだから仕方ないよ」
あえてカナタの名前を出さないようにしていたのに、ハルキが言ってしまった。
「ハルキ!?」
「ん?」
だが、ハルキは気づいていないのだろう。
何が悪いのかわからないのか首を傾げていた。
「ぐははははは、カナタくんか! そうかカナタくんっていうのね!」
もう、完全にラブショターンが悪役に見えてきたぞ。
じんわりと近寄ってくる彼女にカナタは震え上がっている。
わしは両手を広げてカナタを守ると、ラブショターンはインベントリから何かアイテムを取り出した。
「よかったらコレを着てくれないかな?」
【アイテム情報】
アイテム アルミラージ装備
等級 レジェンド級
詳細 ステータスを全て+100する
見た目がアルミラージそっくりになる
伸縮性があるため、装備者の体型に合わされる
目の前には以前と似た光景があった。
そういえば、この人わしにコスプレをさせる趣味があったことを思い出した。
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