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元ゲーマーのじいじ、気ままなスローライフを始めました〜じいじはもふもふ達の世話係です〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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45/58

45.じいじ、町に行く ※一部ラブショターン視点

「とりあえず、あるものだけ収穫して持って行こうか」


 ハルキとカナタが野菜を食べさせたいという提案から、町に野菜を持っていくことになった。

 ここにはプレイヤーが3人もいるため、インベントリにもたくさん入れることができる。


「ゴマ、走ってはいかないからな?」

『キュ!?』


 準備ができたわしらは、いざ町に向かおうとしていたら、ゴマは角を片手にニヤリと笑っていた。

 じいじ狩りから畑仕事好きに変わったのかと思ったが、未だ忘れてはいないようだ。


「じゃあ、行くぞー! ポン、わしを咥えてくれ」

『にゃ!?』


 わしはポンに咥えるように頼むと、なぜかポンは驚きながら、オドオドとしていた。


「おじいさん、おかしくなった?」

「わしは普通だぞ?」


 カナタも首を横に傾けて、考えているようだが、これがわしの通常運転だ。

 背中はハルキとカナタを運ぶために乗せるだろうし、前にわしは咥えて運ばれていたからな。


『オレを放置するなゴラッ!』


 勢いよくポンの背中にニンゴラも駆け寄る。

 腰回りに蔓で吊るされたにんじんがたくさん付いているが、あれがニンゴラの外出する格好なんだろう。


 準備ができたわしらは町に向かった。


 ♢ ♢ ♢


 一方そのころ、町では――


「おい、こいつらはどうにかできないのか!?」

「このままだと町は終わるぞ!」


 プレイヤーとNPCで協力しながら、町に潜む虫型の魔物を倒していく。

 だが、その数が多く倒すのに時間がかかってしまう。

 それになんと言っても――。


「気持ち悪っ!?」

「こっち来ないでよおおおおお!」


 町の中なのに火柱が立ち上がる。

 誰かが高レベルのスキルを使ったようだ。


 このゲームの中で気持ち悪い魔物はいくつか存在する。

 その中でも目の前にいる魔物たちは過去にないほど群を抜いてゾクッとする見た目をしている。

 簡単に言えば、大きくなったハエに近い。

 それに体にくっついては、体を這いずって精神的にダメージを与えてくる。


「あー、ハルキくんに癒されたい!」

「ショタコン! ぐずぐず言ってないで戦えよ!」


 あれから癒しのハルキくんを見なくなった。

 私がストーカーのように追いかけ回していたのが、いけなかったのだろうか。

 それに気づいた時には姿を消してしまっていた。

 まるで私の妄想が現実化したのだと思ってしまうほどだ。


「わたしたちもこんな気持ち悪い魔物と戦うぐらいなら、ワールドボスに痛ぶってもらうわよ!」

「おじいさんはどこにいるだぁー!」


 他のプレイヤーたちも魔物による精神ダメージで、だいぶおかしくなっているようだ。

 みんなワールドボスが大好きだもんね。

 きっと私はハルキくんに会えたら元気になるだろう。

 私はハルキくんの存在を知っているため、ワールドボスのベヒモスがハルキくんにテイムされているのは知っている。

 名前はワールドアナウンスされたぐらいだからね。

 この間もアルミラージをテイムした時はびっくりしちゃった。

 アルミラージって足が速すぎて、捕まえることなんてできないと思ってたのに……。

 ただ、他のプレイヤーは町にベヒモスが出てきた時に、隣にいたおじいさんがハルキだと勘違いしている。

 だから――。


「そういえば、ショタコンはいつから老人好きに――」

「なってない!」


 私が老人好きになったと仲間たちにも勘違いされている。


「そんなこと言ってないではやく……」

「ヒロボッチ、どうしたの?」


 仲間のヒロコ……いや、ボッチが突然手を止めていた。

 まるで戦うのを諦めたようだ。


「いやあああああ! あのデカいのはムリイイイイ!」


 ヒロボッチは突然叫び出した。

 目の前には黒光りした人間の天敵――。


 カサッ、カササッ……。


 その音が、地面だけでなく壁や屋根のあちこちから聞こえてくる。

 つやつやと光る漆黒の甲殻。広げた羽根。

 サイズは手のひら以上、十数センチメートルはある。

 ただの虫ではない、小型の魔物だ。


「でかっ!? なにあれ!?」

「なんで羽音までリアルなんだよぉぉ!」


 大剣で武装したタンク職のプレイヤーの足元に、それは滑るように近づき、足に登ってくる。

 プレイヤーは悲鳴を上げ、装備を脱ぎ捨てながら地面をのたうち回る。


「うわああああ! プレートの隙間に入った! うあああああ!!」


 その間にも、壁をよじ登ったゴキブリは屋根の上をカサカサと這い、NPCの頭上に落ちてくる。

 少女の悲鳴が響く。


「きゃああああああ!! やだあああああ!! 髪の毛にぃぃぃ!!」


 羽根を広げた個体は短く低い、唸り声のような音を発し、飛行しながら突撃してくる。

 数人のプレイヤーが思わず伏せた。


 あちこちで爆発スキル、氷結スキルが乱発され、まるで戦争のような騒ぎだ。

 緊急クエストだからって、いくらなんでもやりすぎな気がする。

 このままじゃ精神汚染されて、プレイヤーは離れていってしまう。

 むしろニュースになるほど、この状況がトラウマ問題だ。


「ゴキブリ特攻スキルとかないのか!?」

「そんなのあるわけないじゃないの!! なんでこんなの出てくるの!?」


 誰もが混乱していた。

 それでも、あの黒光りする巨大な影だけは、悠然と町を這い、食い荒らしていた。

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