44.じいじ、ほのぼのな日常
「じいじ、こっちは終わったよー!」
「まさかゴマが畑名人だったとはな……」
ニンゴラが撒き散らした種を集めて、いざ畑に埋めようとしたが、土が硬くて手こずっていた。
どうしたものかと悩んでいると、ゴマとカナタが追いかけっこをしていた時にある発見があった。
カナタが転んだ拍子に、ゴマの角が地面に突き刺さり、そのまま引き抜くと──その場所だけが、なぜかふっくらと土が柔らかくなっていた。
「これだ!」と、わしらは試しにゴマに土を耕してもらうことにした。すると、見事にふかふかの畑が完成した。
「ゴマ、すごいね!」
『キュー!』
褒められて上機嫌のゴマは、それ以来「じいじ狩り」よりも畑仕事に夢中になった。
『この畑、オレのホームだぜ! 土に還るその日まで、〝にんじん生〟を全うするゴラ!』
「もう、わりと土の中に帰ってるけどな?」
ニンゴラも畑がすっかり気に入ったらしく、最近は土の中で生活することが増えた。
部屋の中でうるさくないのはありがたいが、夜になっても外は騒がしいらしい。
ダジャレリサイタルをしているとポンとゴマが言っていた。
『光が足りない? そんなの、オレのギャグで照らせば〝問題ナッシング〟だゴラァ!』
どうやらニンゴラは、光合成はしないが、土の中でダジャレを吸収して栄養にしているようだ。
最近、ハルキとカナタは毎日交互にダジャレを言い続けている。
微笑ましいような、うるさいような、そんな日常を過ごしていた。
ちなみにあれから一度も町に行ってない。
ゴマがいろいろなものを運んでくれるうえ、カナタの不思議な力を使えば、あっという間に収穫できる畑が出来上がってしまうのだ。
今日はさつまいもを収穫する予定だ。
「じいじ、これも普通のさつまいもだね」
「ああ、普通でよかった」
ニンゴラのような精霊が現れるかと思ったが、土の精霊はニンゴラだけだった。
どうやらニンゴラが特殊な精霊らしい。
毎日畑を耕して、野菜を収穫しては、みんなでご飯を作ってと楽しい日々を過ごしている。
だが、ハルキが学校に行った様子はない。
それにカナタも同じ時間にログインしているため、学校には行っていないのだろう。
じいじと遊んでいるばかりではなく、学校でしか学べないこともあると思うが、それを決めるのは二人だ。
わしは二人を優しく見守ることしかできないでいる。
「ねぇ、おじいさん……」
「どうしたんだ?」
カナタは何かを見ているのか、わしらに共有をしてきた。
「【緊急クエスト:畑の奪還作戦? 町から消えた野菜の謎?】」
「うん……。僕たちの知らないところで町の野菜が消えているんだって」
カナタがわしらに見せてきたのは、他のプレイヤーが配信している動画だった。
どうやらわしらの知らないところで町から野菜が消えているようだ。
その原因をプレイヤーたちが突き止めたらしい。
町に行っていないわしらは緊急クエストというものが出ていることを知らなかった。
そもそもクエストを受ける気もなく、隠居生活みたいなことをしていたからな。
「みんなの野菜がなくなったら、どうなっちゃうかな?」
「生活習慣病になるんじゃない?」
ハルキとカナタはこれからのことを考えているようだ。
将来がないわしはそんなこと考えてないからな……。
「さすがにそこまで野菜がなくなるってことは――」
動画に映し出された町の光景には、野菜が一切見当たらず、肉ばかりが並ぶ店が映し出されていた。
その背後で、小さな魔物がプレイヤーに立ち向かっている姿が映り込んでいた。
【魔物情報】
名前 ヤサイズーキー
詳細 野菜の葉を好んで食べる、小さな羽音を立てて飛ぶ虫型魔物。群れで行動し、畑や町の野菜を一気に食べ尽くす。
属性 土属性
「なんか……焦って作ったような名前だな」
まるで何か理由があって、魔物をすぐに作ったような名前をしていた。
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