42.じいじ、にんじんに翻弄される
「じいじ、ニンゴラは精霊だよ?」
わしはニンドラゴラことニンゴラを葉を掴んで隠しの家に帰っていく。
いつのまにかハルキとカナタがそうやって呼んでいた。
「どうやって調理しようか」
こんなやつに名前なんていらない。
今から調理する予定だからな。
あれから謎の絡みとダジャレが、わしの血圧を上げている。
『や、やめろ……オレを切ったら、ギャグがスライスされて薄味になるぞ……!』
今もわしの手から逃れようとバタバタしている。
活きの良いにんじんだな。
「スライスしたら、ゴマも食べやすいな」
『キイイイィィィ!』
ゴマも喜んでいるのか、わしの足をガンガン蹴っている。
「じいじ、ゴマもいらないって言ってるよ!」
「いや、ウサギはにんじんが好きだからな。まずは、このうるさい口をどうにか……お前ってどこに口があるんだ?」
ニンゴラの体はにんじんの先が二手に分かれて足になっており、葉の近くに目は何となくあるような気はするが、口は見当たらない。
『オレは口なんて根も葉もない――』
わしは無言でまな板にニンゴラを抑えつける。
こいつは早く食べたほうが良いだろう。
包丁を片手にニンゴラに近づける。
『おい、じじい……。そこはオレの大事な種の仕込みゾーン――』
「気持ち悪いな!」
すぐにニンゴラを投げ捨てる。
持っていたところが、ちょうどニンゴラの大事なニンゴラベイビーのところのようだ。
「じいじ、食べ物で遊んだらダメだよ?」
「くっ……あいつは精霊だ……」
あいつは食べ物なのか、精霊なのかわからない。
食べ物を大事にするように教えてきたが、今はそれどころではない。
都合が悪くなれば、認知症で忘れたことにしよう。
『掴んじまったな……オレの〝にん魂〟を! 笑いの種が溢れ出てくるぜ!』
今も胸を張って、ダジャレなのかよくわからないことを言い続けている。
ハルキとカナタは特に気にならないのか、楽しそうにニンゴラの話を聞いていた。
「あいつをどうにかできないのか……」
まるでわしだけが状態異常にかけられたような気分だ。
ハルキとカナタがダジャレを言っていても可愛いが、さすがににんじんが言っていても可愛くはない。
「そういえば、さっき笑いの種って……おい、ニンゴラ!」
「じいじ、優しくだよ?」
「おじいさん、それ以上怒ると頭痛くなるよ?」
ああ、ハルキとカナタはわしが脳の血管が切れないように心配してくれているようだ。
「さっき笑いの種って本当に種が出るのか?」
『そんなの、おやすいゴボウだ! ……あ、間違えた、ごようだゴラ!』
そう言うと、ニンゴラは力み出した。
『ゴラゴラゴラゴラゴラゴラ!』
声に合わせて、体の真ん中から種がわしの顔に向かって噴き出してくる。
まるで種マシンガンって感じだな。
【アイテム情報】
アイテム ニンドラゴラの種
詳細 おいしいにんじんができるが、稀に新たなニンドラゴラを生み出す。
どうやら本当ににんじんの種で間違いないが、その後に書かれている内容にゾッとする。
あいつがたくさん増えたら、このゲームは終わりのような気がする。
『どうだ! オレの尻マシンガンの威力――』
わしはニンゴラを掴んで、再びまな板に押し付ける。
「おい、ニオイが……。それ、タネじゃなくて〝ウンのかたまり〟じゃないだろうな!?」
『ゴラ……?』
「さっきまでの威勢はどうしたんだ? わしの顔に付いているこれはなんだ?」
『うっ……』
「許さないのじゃああああああ!」
わしはその後もニンゴラをしつけしたら、魔法の種をたくさん吐き出した。
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