37.じいじ、適材適所を知る
「やめろおおおお!」
『キィー!』
やっぱりゴマはものすごい勢いで走ってきた。
どうやらじいじ狩りをするようだ。
それもわしに追いつくかどうかの速さで、ニヤリと笑っている表情からして余裕があるのだろう。
「じいじ、リハビリっていうか……訓練だね!」
『にゃ……』
ポンの背に乗ったハルキが、楽しそうに笑っていた。
これをリハビリと言っていいのかわからない。
ただ、一つ言えるのはリハビリは鬼畜だな。
「じいじ、がんばれー!」
孫に応援されて嫌な気持ちはしない。
むしろ、運動会に出た時に応援されている頃の気持ちを思い出す。
「わしは頑張って走るから――」
『キィー!』
ハルキに手を振りかえしたら、ゴマのスピードが速くなった。
どうやらサボっていたのがバレたのだろう。
わしは今にも死にそうな体で、死に物狂いで走る。
もはや諦めてゲームオーバーになった方が良さそうな気もするが、ハルキに応援されていたら、走るしかない。
そういえば、以前よりも走りやすくなったような気がするが、体が自然と適応しているのだろうか。
運動は続けた方が良いって、鬼畜ドS兄ちゃんが言っていた。
まさかゲームの中で、それを感じることになるとはな……。
「はぁ……はぁ……」
「じいじ、お疲れ様!」
川で横たわるわしにハルキがひょこっと顔を覗かせる。
決して死んでいるわけではないからな?
無事に川に着いたら、疲労感に襲われてそのまま倒れた。
『キィ……』
ゴマは遊び足りないのか、川に向かうと川魚を採ってきた。
ポンのおやつを使わないと川魚を集められなかったのに、ゴマはすぐに採ってくるほど狩りの才能がある。
「へへへ、ゴマはすごいね!」
『キュー!』
ハルキに褒められてゴマは嬉しそうにしている。
「今は、走れないぞ……」
ただ、わしに魚を渡してきたということは……「報酬をやるから、もう一回逃げろ」ってことなのか……?
「そんなに走ったら、じいじ、三途の川も一緒に渡っちゃうよ!」
『キュ……』
ハルキはわしを庇ってくれたが、そんな簡単に死ぬほどじいじはやわじゃ……いや、死ぬかもしれないな。
なんだってもう83歳だからな。
「それにしても、ポンはさっきから静か……」
さっきからポンの姿が全く見えないと思ったら、川で遊んでいた。
どうやら川魚を捕まえようとしているのだろう。
「なんだ……ポンは不器用なんだな……」
ネコって素早いイメージがあったけど、どうやらポンはパワー系なんだろう。
『にゃああああああ!』
今も魚を捕まえることができずに鳴いている。
分ゴマが素早いから、一緒に狩りをしたらお互いに補えそうな気もするが、ポンはゴマにビビってるからな……。
しばらくポンを見守っていたら、その間にゴマがどっさり魚を持ってきおった。
「魚も集まったから帰ろうか」
「うん!」
もはやポンは魚を捕まえるより、魔物を倒した方が合っているようだ。
疲れたのか今は川の前で寝転んでいる。
「にゃにゃ!?」
ポンがピクッと反応した次の瞬間、水しぶきを上げて上流へ突進していった。
まるで“何か”が流れてくるのを察知したかのように――。
声がすると同時にポンは何かを咥えていた。
やっと魚を捕まえたのだろうか。
「おいおい……」
ポンが咥えていたのは人間だった。
本当にどんぶらこ、どんぶらこと少年が流れてくるとは思わないだろう。
いや、わしらも川に流されてここまで来たんじゃったな。
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