35.じいじ、寝たきりを覚悟する
「ハルキ、すまない!」
わしは必死にハルキに謝る。
だって――。
「じいじ、太りすぎ! どうやってベッドの下に入ったの?」
お腹が引っかかって、中々ベッドの下から出てこれないでいた。
アルミラージのゴマに追いかけられたわしは、どうやってベッドの下に入ったのだろう。
何かバグのようなものがあるのだろうか。
あの時は勢いよく、ベッドの下に入ったからお腹の脂肪が間に合わなかったのか?
『キィ……』
ゴマもさっきとは打って変わって、呆れた目でわしを見つめてくる。
そもそもゴマがじいじ狩りをしなければ、問題になることはなかった。
「じいじ、引っ張るよ!」
再び、ハルキはわしの足をおもいっきり引っ張る。
「いたたたた!」
だが、どうしても腹が当たってしまう。
わしはこのままログアウトできずに、ベッドの下で過ごすことになるのだろうか。
これこそ寝たきりってやつだ。
誰かがベッドを持ち上げることができたらいいが、この場所を知っている人がいるのだろうか。
「えっ、ゴマも手伝ってくれるの?」
『キュー!』
チラッと足元を見ると、ニヤリと笑うゴマがいた。
やっぱりあいつはじいじ狩りを諦めてないようだ。
「ぬおおおお!」
わしは急いで手足を動かして、ベッドから出ようとする。
「じいじ、暴れないで!」
『キィー!』
まるでわしがいけないことをしているような扱いだ。
「ゴマ、行くよー! せーの!」
『キイイィィィ!』
ゴマの高い声と共にわしは勢いよく引っ張られる。
――スポン!
やはり速度判定があるのだろうか。
わしはカブのようにベッドの下から引っ張り出された。
これでログインしても、ベッドの下で生活するようなことはなさそうだ。
それにしても、ゴマの力の強さに驚きだ。
小さい体なのに、あれだけ強い力を――。
『キィー!』
ゴマは角を持ってとわしに近づいてくる。
だが、このままではずっと逃げっぱなしの人生になってしまう。
せっかくのゲームも楽しめない。
「もう、降参だ。わしのことは好き勝手すればいい」
わしは潔く諦めて、その場で大の字になることにした。
これでやられたら、仕方がないことだろう。
一度ゲームオーバーになれば、ゴマも気が済む気がする。
『キィ……?』
だが、ゴマは戸惑っているのか、中々わしを角で一突きしない。
むしろハルキの方をチラチラ見て、助けを求めているようだ。
「じいじ、おかしくなっちゃった?」
『キュー……』
次第に哀れなやつを見るような視線が集まってくる。
わしは体を起こして、首を傾げる。
「認知症にはなってないぞ?」
「あっ……そうなの? なんだー、心配しちゃったじゃん」
ハルキはなんでも認知症を心配する癖があるからな。
わしがおかしなことを言うと、すぐに認知症を疑ってしまう。
今日も鬼畜ドS兄ちゃんが、ハルキが心配していると言っていた。
さて……二人は施設でしか会っていないのに、どうやって連絡を取っているのだろうか。
「ゴマもじいじとの鬼ごっこはいいかな?」
『キュー!』
さっきまでじいじ狩りを楽しんでいたゴマは落ち着きを取り戻し、角を頭に戻していた。
相変わらずどういう仕組みなんだろうか。
それよりも――。
「あれは鬼ごっこなのか……?」
「うん! ゴマは鬼ごっこが好きらしいよ」
新しく家族になったアルミラージのゴマは変わった鬼ごっこが好きなようだ。
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