34.じいじ、ハルキのストーカーになる
リハビリを終えたわしはお昼ご飯を食べて、早速ログインする。
ベッドから体を起こすが、ハルキとポンの姿は見えない。
「ハルキー、どこ行ったんだー?」
昨日はお昼にご飯を食べてから集合する約束をしたはずなのに、わしは時間を間違えたのか?
ついにわしも認知症――。
【ワールドアナウンス】
ワールドボス 〝|ネザーランド・ドワーフ《アルミラージ》〟が、プレイヤーハルキによってテイムされました。
これに伴い、ワールドボスとしての出現は停止されます。
「ふぇ!?」
突然、聞こえてきたアナウンスにわしは戸惑う。
付けていた入れ歯が飛んでいく勢いだ。
アルミラージってあのじいじ狩りをしてきたあいつだよな?
それをハルキはテイムしたのか?
わしが急いで玄関から外に出ると、アルミラージと戯れるハルキがいた。
「ははは、ゴマはすばしっこいね」
『キィー!』
普通であればウサギと遊んでいる少年にしか見えないだろう。
だが、わしには孫を殺そうとするウサギにしか見えないぞ。
その証拠にまた手には角が握られている。
「おい、ハルキをいじめるな――」
『キィ……』
わしはすぐにハルキの元へ駆け寄ろうとするがアルミラージはわしと目が合うと、ニヤリと笑った。
あっ……これって……。
『キィー!』
「ぬあああああああ!」
やはりあいつはじいじ狩りをしにきたに違いない。
素直なハルキを使って、隠しの家にまで入ってきたのだ。
わしはすぐに扉を閉めて、家の中にまで入ってこれないようにする。
――ドン……ドドドドドン!
何度も扉を叩く音が聞こえてくる。
次第にわしは息苦しさを感じる。
ああ、これが急性心不全――。
「そんなことを言ってる場合じゃないな」
わしはすぐに隠れられる場所を探す。
こういう時ってクローゼットの中……いや、ベッドの下だな。
頭からスライディングするように、ベッドの下に隠れることにした。
エッチな本やストーカーはベッドの下に隠しておけって習わしがあるぐらいだからな。
――ガチャ!
「ゴマ、そんなに急いでどうしたの?」
扉が開けられなかったのか、ハルキと共にアルミラージが入ってきた。
どうやらゴマと名付けたようだ。
『キュー!』
アルミラージが甘えた声でハルキに返事をしていた。
ああやって、ハルキを惑わせたのだろう。
それにしてもベヒモスがポンで、アルミラージがゴマ――。
「はっ!? ポン酢とゴマだれか!」
すぐに手で口を押さえる。
隠れていたのについ声が出てしまった。
まさか孫のネーミングセンスがタレだとは思ってもいなかった。
よほどお腹が減っていたのか、しゃぶしゃぶが食べたかったのか……。
現実では食べさせてやれないが、この世界では準備できるから、あとで作ってあげよう。
その前にこの状況を――。
俺は様子を確認するために、横に顔を向ける。
『キィー!』
「うわあああああ!」
角を持ってニヤリと笑うゴマがいた。
こんなホラー映画のような展開があってたまるかよ。
「ゴマ、そんなところで……うわあああああ!」
ゴマを追いかけてきたハルキがわしをベッドの下で見つけて驚いているようだ。
ははは、これじゃあまるでわしがハルキのストーカーじゃないか。
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