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元ゲーマーのじいじ、気ままなスローライフを始めました〜じいじはもふもふ達の世話係です〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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30.じいじ、イワーナを捌く

「ぬああああああ!」


 わしは自分を鼓舞するかのように、声を出して走る。

 まさかワールドボスがじいじ狩りをしてくるなんて、誰も思わないだろう。

 老人には優しくするって習わなかったのか?


『キィー!』

「わしの方がキィーって叫びたいわ!」


 角を手に持っているため、あまり速く走れないのだろう。

 じいじのわしでも逃げきれそうだ。


「あと少しだ!」


 隠れの家が目に入ると、わしは勢いよくスライディングする。


「はぁ……はぁ……」


 久しぶりに息苦しさを感じた。

 このゲームをするようになって、思ったよりも老人でも動けることに驚いている。


『キィー!』


 やはり隠しの家のセーフティーゾーンは見つけられないのか、キョロキョロと周囲を見渡して帰っていった。

 トボトボと帰る後ろ姿がどこか可哀想だが、別にわしは魚を奪ったわけではないからな。

 向こうから渡してきた……んだよね?


 まさかこの歳になって、餌をで釣られる魚の気持ちを理解するとは思いもしなかった。


「ハルキ、かえってきたぞ!」


 ハルキの顔を覗き込むが、特に何か変化はないようだ。


【チャット】


 ハルキ おかえり(6t5l)


 ログアウトしたのかと思ったが、どうやらまだログインしていた。


「すぐに美味しいご飯を作るからな!」


 わしはイワーナをインベントリから取り出し、まな板の上に置く。


「まな板よりでかいな……」


 前腕ぐらいの大きさがあるイワーナはまな板から飛び出ていた。

 身が締まっていて、皮も張り詰めたようにぴんと張っている。


「久しぶりだけどどうにかなるだろう……」


 久しぶりに魚を捌くが昔の感覚を頼りに包丁の刃を入れていく。

 まずは腹びれの少し後ろ、胸びれとの中間あたりに刃を当てる。

 そこから尾びれに向かって真っすぐ滑らせるように切りつけていくと、皮の下から艶やかな身が顔をのぞかせる。


「プリッとしてうまそうだな……」


 すでによだれが溢れ出てきそうだ。

 続いて頭を落とし、腹を裂く。

 内臓を手早く取り除いて水で洗うと、川魚特有のほのかな香りが立ちのぼる。

 血合いを丁寧にぬぐい取り、背を上にして置き直した。

 ここからが三枚おろしの難しいところだ。


 中骨に沿って包丁を入れる。

 背骨に刃が当たる感触を確かめながら、ゆっくりと身を引きはがす。

 ここでうまくできずに身を残しすぎると、食べる部分が減ってしまう。

 まぁ、さすがにここまで大きいと、失敗してもある程度は身も残りそうだ。


 刃を寝かせるように動かすと、一枚、薄紅色の身がまな板に静かに落ちた。

 白身のイワナだが、水分を含んだ新鮮な状態なので、ほんのり赤みかがって見える。

 反対側も同様に、骨の上をなぞるようにしてもう一枚。


「ふぅー、どうやらわしの技術も落ちてないようだな」


 綺麗に捌かれたイワーナを刺身用と澄まし汁用に分けていく。


「その前に鰹節で出汁を取らないとな」


 鍋に水を入れて、火にかけながら鰹節で出汁を取っていく。

 そして、もう一つ鍋を用意してお湯を沸かす。

 せっかくイワーナのアラもあるため、使おうと思ったが、調味料が少ないのもあり、今回は使うのをやめておいた。

 水が沸騰すると、切り分けたイワーナにさっとお湯をかけて、霜降りにしていく。


「おっ、出汁もいい感じだな」


 鰹節の香りが立ちのぼる黄金色の出汁が出来上がった。

 あとは、塩で味付けをして、霜降りしたイワーナを入れて完成する。

 本当は醤油とか味噌があればよかったんだけどな……。


『にゃー!』


 玄関から声がした。きっとポンが帰ってきたのだろう。

 扉を開けるとそこにはポンが座っている。


『にゃにゃ⁉︎』


 わしの顔を見ると、驚いた顔をしていた。

 まさかわしがいると思わなかったのか?

 ハルキは倒れているし、わしがいなければどうやって家の中に入るつもりだったのだろう。


 わしはポンを掴み、家の中に入れると葉っぱに包まれてる何かを見つけた。


【アイテム情報】


アイテム ドクダケ

詳細 食べたら猛毒で即死する


「おい、ポン。これでわしを殺す気か?」

『にゃ?』


 ポンは首を横に傾ける。

 大量に持ってきていたが、これが何かわからないのだろう。


「これはドクダケで食べたら死ぬぞ?」

『にゃーにー!』


 ポンは立ち上がり手を大きく広げていた。

 まさかのオーバーリアクションにわしは何も言えないでいた。

 ポンはトボトボとハルキの元へ向かい、頭を擦り付けていた。

 きっとハルキのために取ってきたのだろう。

 ポンなりに謝っているようだ。


 アルミラージといい、ポンもワールドボスなのに、どこか哀愁が漂っているな。

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