25.じいじ、家に帰る
「ポン、あっち!」
『にゃあー!』
ハルキに指示されたポンは勢いよく、サラマンダーに襲いかかる。
「ああ、ポンよ……。そんなに強ければ早く言ってくれよ……」
ポンはワールドボスだけあって、想像以上に強かった。
隠れの家に戻るために向かったが、道中で出てくる魔物を全て一撃で倒してしまう。
『にゃはぁ』
魔物を倒すと、まるで「俺の方が上だぞ」って威張るようにわしに見せびらかしてくる。
わしはそんなことお構いなく、すぐにインベントリに入れて片付ける。
シゲが魔物を倒すとドロップ品に姿を変えていたが、ポンが倒すとそのまま死体が残っていた。
システムのバグなのか、それともハルキのグルメテイマーが関係しているのかはわからない。
その結果、わしとハルキのインベントリには魔物がたくさん入っている。
「ああ、これでログアウトができるぞ」
魔物を売ったらお金に換金することができるだろう。
ログアウトするためにも、お金は必要になるからちょうど良い。
『にゃあー』
「ははは、ポンはえらいね!」
そんなポンをハルキが撫でると嬉しそうにしていた。
「さっきまでポンも反抗期だったのを忘れたのか……」
ツンケンした態度が嘘のように、今はハルキにベッタリとしている。
『にゃ!?』
当の本猫もびっくりしているぐらいだからな。
しばらく移動すると、隠しの家が見えてきた。
「じいじがどっかに行かなければ近いんだね」
『にゃ……』
今回は常にポンに咥えられていたため、森の中を探検することができなかった。
前回よりも半分ぐらいの時間で隠しの家に到着した。
「ねぇ、じいじ……」
「どうした?」
「ポンってこの中に入れるのかな?」
「はっ!?」
ポンと初めて会った時は、隠しの家の存在には気づいていなかった。
ワールドボスがセーフティーエリアに入れるのだろうか。
「ポン、あそこに家があるのが見えるか?」
『にゃ……にゃに!?』
明らかに反応が遅かった。
ポンは戸惑いながらも返事をしていた。
「嘘はあかんぞ?」
『にゃああああああ!』
急にポンが襲ってきた。
わしに指摘されて怒っているようだ。
長年生きているわしに嘘はバレるからな。
「ほぅ……」
大きなポンに馬乗りされたら、全身でもふもふを感じられる。
退かしながらセーフティーエリアに逃げこむと、やはり見えないのかキョロキョロとしていた。
「ポンは入れないのかな……」
「んー、猫番として家を守ってもらうか?」
「それはかわいそうだよ」
やはりハルキは優しい子だな。
このままだとポンは野良猫になってしまう。
いや、ワールドボスの時から野良猫だったか。
「よし、ハルキ! ポンの手を掴むんだ」
「どうするの?」
「そのまま、グイッと中に入れるんだ!」
わしはハルキと共に大きなポンの手を掴む。
セーフティーエリアが認識できていないだけで、中に入れるような気がしたのだ。
なぜ、そう思ったかって?
わしの服にポンの毛がついていたからだ。
長年の勘と元ゲーマーの勘がいけると言っている。
「よし、いくぞー!」
「んー!」
『にゃにゃ……』
そのままセーフティーエリアにポンを引っ張る。
――ポン!
突然、音が鳴ったと思ったら体が軽くなった。
「うぉ……おととととと!」
「じいじ!」
わしはその場で踏ん張りバランスを保つ。
どうやら今回は転ばずに済んだようだ。
「おー! じいじ、バランスがよくなったね! 兄ちゃんに報告しないと!」
「なっ、それは伝えたらかんぞ!」
ハルキは鬼畜ドS兄ちゃんの手下だったのを忘れていた。
バランスが良くなったって報告して、リハビリが大変になったらたまったもんじゃないからな。
「にゃー!」
ネコの鳴き声が聞こえたと思い、視線を足下に向けると、そこにはポンがいた。
存在を忘れていただろと言いたげな瞳でわしらを見つめてくる。
「やっぱりわしが思っていた通りだな!」
「体が大きいと入れないのかもしれないね」
きっと体が大きい状態はワールドボスという認識なのかもしれない。
今はただのマンチカンだからな。
セーフティーエリアに入れたわしらは、隠れの家に帰ることにした。
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