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元ゲーマーのじいじ、気ままなスローライフを始めました〜じいじはもふもふ達の世話係です〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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23.じいじ、肉を買いに行く

 インターネットに繋いだわしはすぐに、ネコのおやつについて調べる。


「ねこまんまはおやつじゃないもんな……」


 ネコのおやつについて調べてみてるが、出てくるのはネコの食事ばかりだ。

 それに出てきてもネコ用ケーキは作るのが難しそう。


「ポンのおやつは作れる?」

「んー、おやつっていうよりはご飯に近いぞ?」


 材料はささみや魚の煮汁を混ぜ合わせて作っているものが多い。

 ただ、ポンのあの食いつきを見ていると、ケーキよりはご飯に近い方が良いのだろう。

 今もこっちをジーッと見つめているからな。


「よし、材料を買いに行くか」

「ポン、行くよ!」

『にゃー! ……にゃ!?』


 ハルキに呼ばれて返事をしたことに気づいたようだ。

 ツンツンしているが、本当はポンもハルキのことが好きだからな。

 それがわかってハルキも嬉しそうにしている。


 まず寄ったのは昔ながらの肉店だ。


「へい、いらっしゃい! 今日は何の肉が欲しいんだ?」

「おお……普通の肉屋と変わらんのう。部位まで分かれておるとは」


 ゲームの世界の肉店は現実世界と似ていた。

 しっかり種類と部位毎に分けられている。

 ただ、書いてある名前が明らかに現実世界で見慣れたものとは違った。


「オーク、コカトリス、ミノタウロス……」


 やはりここは強敵ばかりが出る町なんだと実感させられる。

 コカトリスやミノタウロスって中盤から終盤に出てくるイメージだ。

 きっとオークは豚、コカトリスは鶏、ミノタウロスは牛ってことだろう。


「ポンは何が好き?」

『にゃー、にゃ!』


 ポンは腕を大きくバタバタと動かしている。

 どうやらコカトリスの肉が好きなようだ。

 それならコカトリスの肉を買うことにしよう。


「コカトリスの肉を頼む!」

「おう、100グラム2000Gだ」


 わしとハルキはお互いの顔を見合わせた後、ポンの顔を見る。


『にひゃ』


 ポンはニヤリと笑っていた。

 コカトリスの肉が高級だって、初めからわかっていたのだろう。


「じいさん、どうするんだ?」

「ああ、100グラムだけお願いするよ」


 ここに来る前に拾ったアイテムは全て売ってきた。

 それでもわしのお金は総額で4000G程度しか持っていない。

 初心者にしては大金だが、ログアウトするには6000G必要になってしまう。


「じいじ、大丈夫?」


 ハルキは心配そうな顔でわしを見てくる。

 祖父としてここは安心させないといけないな。


「ああ、また認知症になればいい!」


 ニコリと笑ったが、ハルキの顔は暗く曇っていく。

 選択肢としては間違っていないはずなんだけどな……。


「認知症のじいさんがいるって聞いたが、じいさんのことだったのか!」


 どうやらわしのことが町で話題になっているようだ。

 円背で中々伸びにくかった背骨をピンっと伸ばして胸を張る。

 人気者はプライベートがなくて辛いのう。


「じいじ……ぐすっ……」

「ハルキ、どうし!?」


 ハルキは俯いたままで、鼻水をすすっていた。

 顔を覗き込むと、ポタポタと涙が溢れ出ている。


「やっぱり認知症になっちゃったんだ……」

「いや、認知症……」


 わしはすぐに否定しようとしたが、今は肉店の店主の目がある。

 ここで否定したら、嘘つきじいさんと呼ばれて、町の中でメダルを探すことができないだろう。


「じいじ、認知症になっても元気だぞ!」


 わしはその場で駆け回り、ハルキに元気なところをアピールする。


「それにハルキのことが一番大事なのは変わりないからな!」

「ほんとに? 僕のこと忘れない?」


 きっと認知症になったら、忘れられると思ったのだろう。


「ああ、ハルキのことは最後まで覚えているからな!」


 わしが本当に認知症になったとしても、可愛いハルキを覚えている自信しかない。

 それだけは胸を張って言える。


「じいじ!」


 その言葉を聞いて、ハルキの目からは安心したように涙が止まる。

 ハルキとの絆が、目の前で確かに結ばれていく。

 その様子を、肉屋の店主は黙って見つめていた。

 腕を組んだまま何も言わず、ただ、静かに鼻をすする音だけが聞こえてくる。


「くぅーっ……なんて素晴らしい祖孫愛(そそんあい)だ……!」


 目を覆うように手の甲で涙を拭きながら、店主は背を向けた。

 それでも肩は震えていたし、声も少しだけつまっている。


「ま、参ったな……おれぁ、肉屋になってからいろんな客を見てきたが……今日は心にくるぜ……!」


 しばらく無言で作業台に戻ると、コカトリスの肉を大きな紙に包みながら、鼻をすすってハルキの前に差し出した。


「よし、小僧! じいさんを大事にしてやれよ!」

「うん!」


 そう言って手渡された包みの重さに、ハルキは一瞬くらっと倒れそうになる。

 すぐに受け取ったが、明らかに100グラムどころではない重量感だった。


 思わず目を丸くして店主を見上げると、彼はそっぽを向いたまま、ぽつりとつぶやいた。


「……あ、あんま喋んなよ。目に汗が入っただけだ……」


 どうやらわしらは大量の肉を手に入れたようだ。

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