22.じいじ、昔の体が恋しい
ネコのおやつが必要とわかれば、わしはすぐに外に出ていく。
またメダルを探せば、問題は解決する。
ただ、わしを見て泣きそうな顔になっていた。
「じいじ……僕のために……」
「あー、わしは認知症だからな。メダルはどこにやったかのー」
認知症だって言えば、周囲の人も理解してくれるだろう。
それに「メダル」って声に出しているため、他の人も足元をチラッと確認してくれる。
「じいじあった?」
「中々見つからないな。やっぱりタンスを――」
「ダメ!」
探してもメダルは落ちておらず、タンスの中を探すのも禁止されてしまった。
このままじゃ本当にポンが離れて行ってしまう。
『にゃー』
あいつは呑気に後ろを付いてきながら、一定の距離を保ったまま鳴いているだけ。
さすがワールドボスだと思わせる。
わしらは町の奥の方に入っていくことにした。
それにまだ見ていないところもあるかもしれない。
「ハハハ、ハルキくん! こんなところでどうしたんかな?」
突然誰かが現れた。
家と家の隙間から出てきたのは、ラブショターンだ。
なぜ彼女はあんなところにいたのだろうか。
「メダルを探しているの!」
「メダル?」
わしはラブショターンに小さなメダルのことについて話した。
ただ、どこか首を傾げていた。
「そんなクエストってあったかしら? 昔からプレイしているけど、見たことないよ」
ラブショターンはその場で何かを調べ始めた。
わしも気になり、ステータスやインベントリ以外の項目を調べると、インターネットに直接繋げて検索するところを見つけた。
「んー、やっぱりネットにもそんな情報はないね」
どうやらインターネットで情報を探していたらしい。
それなら、なぜわしらにはそのクエストが存在しているのだろうか。
もらえるものはステータスの基礎値を上げるものや冒険に必要なアイテムだったりと、初心者向けの新規クエストかもしれない。
「どうやってポンのおやつを用意したらいいんだろ……」
「あっ、それなら自分で作ってみるのはどうかな?」
「作る?」
たしかにネコ用のおやつをもらったのはクエストだが、ハルキのようなテイマーはテイムした魔物の食事が必要になる。
ここまでリアルに作ってあるゲームなら、料理などの生産職もリアルに作られているだろう。
「売っているものもあるけど、好みはテイマーが一番知ってるからね」
ハルキの職業が〝グルメテイマー〟なのも、そういう職業も含まれているのだろう。
ワールドボスをテイムするのも、そんなに簡単なことじゃないからな。
「よかったら私も手伝――」
「いや、わしらでやるからいいぞ」
ラブショターンはわしを睨みつけるが、そんなので怯むじいじじゃない。
宿屋でも頼って、ここでも頼ったら、わしの存在意義がなくなってしまう。
それにわしがポンのおやつを作らないと、デバフ効果がかかるからな。
「じいじ、おやつを作る場所を探そ!」
「あっ、そうだな! その前に材料――」
わしはハルキに手を引かれる。
「おっと……足が――うおおおお!」
しかし、足がもつれて前に出なかった。
――ダメージ9
そのままの勢いで地面に倒れる。
手を地面につけばよかったが、ハルキが引っ張っているため、受け身すらできなかった。
「じいじ!?」
ハルキは驚いて、わしに駆け寄ってきた。
その手には薬草を持っている。
「大丈夫? これ、使って……」
ハルキは震える手で薬草を差し出す。
わしは、なんだかハルキの優しさに、涙が出そうになった。
「チッ! 麻痺を付与したのに、ハルキくんの優しさを独り占めしやがって」
ラブショターンは何か呟いていたが、わしのことを心配してくれたのだろう。
わしは人に恵まれているな。
「おお、すまんのう。昔はもうちょっと頑丈だったんじゃが……」
「じいじ、ごめんなさい。僕が――」
「ハルキのせいじゃないぞ」
泣きそうなハルキの頭を優しく撫でる。
昔はこんなことで転ぶことはなかったんだけどな。
「あっ……ハルキくんを泣かして……」
「ラブショターンにも迷惑かけて――」
「ごめんなさーい!」
なぜかラブショターンは泣きながら、どこかへ走って行ってしまった。
ハルキを見ると、首を横に傾げていた。
彼女は本当に変わった子なんだな。
「じいじ、ゆっくり歩こうか!」
「ああ、それがいいな!」
わしはハルキと手を繋ぎ歩き始めた。
さて……わしは何をする予定だったっけ?
あっ、ポンのおやつを作るために材料を買いに行くんだったな。
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