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2.じいじ、わしはユニークです

 数日後、大きなカプセル型のVRゲームが届いた。

 どうやらその中に入ってゲームをするらしい。

 施設の部屋は狭く感じるが、陽希のためには仕方ないだろう。


「何かわからないことがあったら後で設定しましょうか」

「兄ちゃんには頼まないからな!」


 わしは孫の心を盗んだ兄ちゃんを睨む。

 それでも、兄ちゃんはどこか嬉しそうにしていた。

 兄ちゃんは変わり者なんだろう。

 まぁ、わしのリハビリを嫌な顔せずに、ニコニコとしているからな。

 たまに仕返しと言わんばかりに、体をグイッと伸ばして、ストレッチをしてくるから中身は鬼畜ドSなんだろう。

 大体そういう時は痛いってわかってやってくるからな。


 わしは車椅子からカプセルに移動して、ゲームを起動させる。

 

「移乗ぐらいできるぞ!」


 心配なのか兄ちゃんは扉の外で、わしがカプセルに入るのを見届けていた。

 カプセルが来るまであれだけ一緒に練習したんだから、できないとわしが恥ずかしくなる。


 起動と同時にカプセルの蓋が閉まると、早速設定が始まる。


「えーっと、まずはスキャンと設定だよな?」


 しばらく目を瞑っていると、カプセル内に声が響いてくる。


【スキャンに成功しました。スキン、スキルは相性によって自動選択されます】


 最近のゲームはほとんどおまかせのようだ。


【エターナル・ワールドに接続しました。楽しい時間をお過ごしください!】


――プツン!


 何かの接続が切れると同時に、体に心地良い風を感じる。


「ここは始まりの町だ!」

「何か必要なものはないか!」


 周囲はざわざわとしており、わしに話しかけて来ているのはわかる。


「うわー、まるで異世界だな」


 目を開けると、見たこともない世界が広がっていた。


「ははは、そりゃーここは勇者達の世界とは別の世界だからな」

「勇者?」

「ああ、兄ちゃん……いや、じいさんは勇者として召喚されたからな」


 どうやらプレイヤーは勇者として召喚された設定になっているらしい。

 ただ、気になったことが一つある。


「わしはじいさんなのか?」

「ははは、どこからどう見てもじいさんだろ!」


 ゲームを始める前にキャラクターのスキンやスキルは、元の人物をスキャンしていると聞いている。

 ただ、そこにそぐわないものに関しては修正されるはずだ。


 わしは近くに姿が見れるものがないかを確認する。


「あっ、あそこに窓ガラスが……うぉ!?」


 歩こうと思ったが、体が思うようには動かなかった。

 そういえば、わしは歩けなかった……いや、動かしにくいが足は動いているぞ。

 速く動かしてみるが、左右差はあるものの走ることもできそうだ。


「おいおい、じいさんが商品棚の前で踊ってるぜ?」

「変な靴も履いているな」


 周囲から声が聞こえ、わしは足を止める。

 足元を見ると、左足には装具を履いていた。

 そのままの状態がスキャンされて、装具が体の一部として認識されているのだろう。


「じいさん、ステータスの確認はしたのか?」

「ステータス?」

 

 声をかけてくれたおじさんに言われるがまま、ステータスを確認した。


【基本情報】

名前 じいじ

年齢 83歳

性別 男性

職業 じいじ(ユニーク級)


 明らかにそのままスキャンされて、ステータスに反映されているようだ。

 職業なんて【じいじ】ってわけのわからないやつだぞ。

 普通は剣士や魔法使いで喜ぶところだろう。

 それにユニーク級って……たしかにユニークで面白いな。


【能力値】

HP 10

MP 10

攻撃力 右8 左2

防御力 5

知力 13

敏捷 3

運 21


 ステータスは自動的に割り振られる仕組みのようだ。

 攻撃力が左右で分かれているのは、片麻痺による影響なんだろう。

 脳卒中になってまで生きていた証が運の高さに反映されていそうだな。


「知力も高いから、じいじは魔法系なのか?」


 きっと魔法をバンバン撃って戦うスタイルなんだろう。

 ただ、じいじが魔法系の場合だったらな。


「あっ、じいじ!」


 どこからか孫の陽希の声が聞こえてくる。

 名前はカタカナ表記で登録されているから、きっと自動登録しているなら、ハルキと表示されているだろう。

 わしは周囲を見渡して、可愛い孫を探す。


「おー、ハル……キイイイィィィ!?」


 わしは元気に走ってくるハルキを見て驚きを隠せなかった。


「ななな、なんて物を待ってるんだ!?」


 だって……手には鞭を持っていたからな。

 いくら無邪気な顔で走ってくる幼児でも、手に鞭を持っていたら驚くだろう。

 それも大事な大事な可愛い孫だぞ!


「ハハハハルキよ、それを片付けようか?」

「ん? これのこと?」


 ハルキは手に持っている鞭を見て、楽しそうに振り回していた。


「へへへ、僕の適正武器は鞭なんだって!」


 何も知らない子どもほど、怖いものはないな。

 今すぐにでもこのゲームをやめさせないといけないようだ。

 孫の適正武器が鞭って、運営は何をやらせるつもりだろうか。

 さすがにこの歳でSMプレイ……。

 いや、ひょっとしたら兄ちゃんに憧れて家畜ドSを夢見たのかもしれない。

 これは兄ちゃんを締めるべきだろうか。


「じいじの適正武器は何?」

「あー、わしの武器は……」


 わしは装備画面を操作して、適正武器を取り出す。

 ここで出てきたものがプレイヤーが使える武器となる。


――ポロン!


 可愛い音とともに何かが降ってきた。


【アイテム情報】

武器 T字杖

詳細 ただの歩行補助具


「ぬああああああああ! こんなゲームやめてやるー!」


 齢83歳にやらせるには、鬼畜なゲームをわしは今日からプレイすることになった。

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