16.じいじ、デスゲームに巻き込まれる
「じゃあ、今度はこのおやつにしてみる」
ハルキは選んだばかりのおやつをポンに見せる。
『にゃ……』
「あれ? ポンは嫌いなのかな?」
『にゃあー』
さっきまで期待していたポンの顔とは異なり、耳は垂れ下がり、目元はウルウルとしている。
「ハルキ、ちょっと見せてみな」
わしはハルキから新しいおやつを受け取る。
【アイテム情報】
アイテム おやつクッキー
等級 ユニーク級(専用アイテム)
詳細 うさぎのおやつ
モルモットなどの小動物も好む
「あっ……これうさぎのおやつだな」
「えっ!?」
どうやらハルキはネコ用のおやつと思ったのだろう。
名前もおやつクッキーって書いてあるぐらいだからな。
「ポン、ごめんね」
『にゃあ……』
ハルキとポンは見たことないほど露骨に落ち込んでいた。
まさかこんな落ち込むとは思いもしなかった。
「またメダルを探せばいいさ」
「ほんと……? でも、じいじが認知症だと思われるよ?」
「大丈夫! じいじは認知症みたいなものだからな!」
怪しい人だとは思われても、認知症だと言えば納得するだろう。
だが、ハルキの笑顔を手に入れた代償として、わしは何かを失ったような気がした。
「これで分かったのは、メダルの報酬は各々別のアイテムがもらえるんだな」
二人分のメダルを集めるならたくさん集めないといけないだろう。
わしはしばらくの間、認知症に見えるように演じないといけないようだ。
まぁ、わしがいる施設には認知症の人はたくさんいるからな。
学ぶ場はいくらでもある。
「おっ、そろそろお母さんが帰ってくる時間じゃないか?」
表示されている時計は夕方ごろになっていた。
時短で働いている娘もそろそろ帰ってくるだろう。
「じゃあ、じいじとポン、また明日……あれ? ログアウトできないよ?」
「なっ……なんだって!?」
まさか昔アニメとかでよく見たデスゲームってやつだろうか。
感覚遮断もしていないこの体で、ラスボス手前の町にいるわしらは一生外には出られないことになる。
ひょっとして殺されたら、現実の体も……。
――キーン! キーン! キーン!
【システムメッセージ:ブラックリスト対象が接近中です】
「くっ……」
「じいじ!?」
わしを心配して、急いでハルキが駆け寄ってくる。
耳元で甲高いサイレンがずっと鳴り響く。
これは現実の体で何か問題が起きた証拠だろうか。
【ブラックリスト:ラブショターンが近くにいます】
「ふぇ!?」
目の前に表示された文字にわしは呆気に取られる。
どうやらブラックリストに追加している人が近づいてきた音らしい。
体に悪い音が毎回鳴っていたら、命がいくつあっても足りないだろう。
「ぐへへへ……あのー、ログアウトは宿屋に行かないとできないですよ」
ラブショターンが声をかけてきた。
だが、声をかけたのはハルキに対してだ。
間近で見たら綺麗な女性だが、見た目に騙されてはいけない。
「そうなの!? ありがとうございます」
「はぁ!? きゃわいい……」
ハルキは優しい子だからな。
おかしなラブショターンにも笑顔でお礼を伝えている。
本当はわしがお礼を伝えるべきだが、頭に鳴り響く音がうるさすぎて、それどころではない。
「私が宿屋に案内してあげるね。ぐへっ!」
ラブショターンはハルキの手を掴むと冒険者ギルドを出ていく。
あっ……これって孫が誘拐されるやつじゃないか!
わしはすぐにブラックリストからラブショターンを削除して、後を追いかける。
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