15.じいじ、専用アイテムを手に入れる
「ねぇ……じいじ。さすがに恥ずかしいよ?」
「いや、大丈夫だ。わしは認知症だからな」
タンスの中を物色するのは禁じられた。
だが、半ば無理やりツボとタルの中を確認しても、良いことになった。
何か聞かれても認知症を演じれば問題ない。
それでもハルキは恥ずかしいのか、少し離れたところでわしを見ている。
汚い役目はじいじの仕事だからな。
「ほら、たくさんアイテムが出てきたぞ」
その中にはメダルも落ちていた。
ポンのおやつにもなるため、メダルは今後も必要だろう。
ただ、ワールドボスをテイムできるアイテムと引き換えできるのに、今まで誰も拾わなかったのだろうか。
「あと確認していないのは……井戸!」
「じいじ……ほんとに認知症になってないかな?」
『にゃはあー』
ハルキとポンは少し離れたところから付いてくる。
わしは井戸の中を覗く。
井戸と言ったら、別世界に繋がっていたり、重要な人物がいる代表的なオブジェクトだ。
「おー、わしってやっぱりイケメンじゃな!」
水面に映るわしの顔はイキイキとしていた。
やはりわしにとったらゲームは生きがいなんだろう。
「中を覗いて笑ってるよ……」
『にゃ……』
ハルキとポンは呆れた顔で見ているが、わしはそんなこと気にしない。
ここには冒険の手がかりがある――。
「んっ……なんだこれは?」
井戸に浮かんでいる物を見つけた。
こういうところにあるアイテムは冒険のキーアイテムだったりするからな。
【アイテム情報】
アイテム 魔法の種
詳細 おいしいにんじんができる
好んで食べる種族もいる
「にんじんの種を手に入れたぞ!」
「じいじ、また嘘ついてるの?」
「これでにんじんができるんだぞ?」
「ひまわりの種なのに?」
どうやらハルキにはひまわりの種に見えるらしい。
たしかにしま模様でひまわりの種と似ている。
わしには知恵袋のおかげで、にんじんの種にしか見えない。
どこかわしが嘘をついているような反応だな……。
ただ、にんじんの種ならそこまでめずらしいものではないな。
念の為にアイテムとして回収することにした。
その後もアイテムを探し続けて、冒険者ギルドに戻ることにした。
これだけたくさんのアイテムを手に入れたら、受けられるクエストはあるはず――。
「すまないな……。この町ではそういう依頼はないんだ」
「えっ!?」
どうやら町で落とし物を拾っても、よほどのことでなければ依頼はしてこないらしい。
きっと金策として初めの町だけに設定されているのかもしれない。
冒険をしていたら自然とお金は貯まってくるものだからな。
「ただ、メダルを探しているものはいるぞ?」
【クエスト】
内容 ちいさなメダルを探せ
詳細 孫が大事にしている記念メダルを落とした。見つけ次第届けてくれ。
報酬 1000G+選択アイテム一つ
やはり某ゲームに似たイベントはいつもあるようだ。
わしはクエストを受けて、メダルを渡すことにした。
「おお、中々見つからなくて、困っているみたいだから助かったよ。ここから報酬を選んでくれ」
わしは選択アイテムを一つだけ選ぶことにした。
だが、その選択肢が多くて、どうしようか迷った。
▶︎健康サプリ
思い出の歌謡集
健康器具
骨盤ベルト
脳活問題集
介護シューズ
古びたお守り
どれも高齢者のわしにとって必要そうなものばかりだ。
ただ、ポンが好きそうなネコ用のおやつはない。
人によって選択するアイテムは異なるのだろうか。
「やっぱりここは健康器具かな」
わしは健康器具を選択することにした。
するとアイテム欄に健康器具が追加されていた。
【アイテム情報】
アイテム 健康器具(重錘バンド)
等級 ユニーク級(専用アイテム)
詳細 筋力訓練をするための錘
攻撃力の基礎地を1上げる
何度でも使用可能
まさかステータスを上げるアイテムが手に入るとは思いもしなかった。
こういうのって珍しいはずだが、まるで本当にリハビリをしているような気分になりそうだ。
「じいじ、ポンのおやつはあった?」
『にゃー』
珍しくポンも尻尾を立たせて、わしの顔をジーッと見つめている。
きっとおやつがもらえると思ってるのだろう。
「テイマーじゃないわしにはなかったぞ」
『にゃはあー』
ポンの顔はいつもの呆れた顔に戻った。
きっと使えないじいじだと思っていそうだな。
ポンのおやつが欲しいなら、ハルキが直接クエストを受けないといけないようだ。
「ポンのおやつはハルキが選んだ方がいいな」
そう言って、わしはハルキに残りのメダルを渡した。
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