13.じいじ、ブラックリストを活用する
「ハアアアア!」
新たに仲間になったシゲの一振りで、一瞬にして魔物はドロップ品に変化する。
魔物が弱いのか、シゲが強いのかはわからない。
ただ、その一撃でハルキの視線を掻っ攫っていく。
「シゲさん強いですね」
「長いことプレイしているからね」
どうやら昔からやっている古参プレイヤーで、わしらに強さを自慢したいのだろう。
こういう自分の強さを誇示する古参プレイヤーはよくいる。だが、問題はそこではない。
わしの孫と仲良く話しているのが問題だ。
あいつは完全に敵じゃ。
だが、利用できるものは利用しないといけない。
ここは世渡り上手のわしの出番だ。
「そういえば、さっきのサラマンダーは強い魔物のなのか?」
「あー、この辺ではよく出てきますね。HPが1万程度で――」
「はぁん!?」
どうやらダメージ150とかで喜んでいたが、木の棒で叩く程度のダメージだったのだろう。
『にひぁ』
ハルキの腕に抱かれて、普通のネコを演じているポンは、わしと目が合うとニヤリと笑った。
きっとワールドボスならサラマンダーよりも強く、HPは100万は余裕で超えていそうだ。
他のプレイヤーが攻撃したダメージは視覚できないため、サラマンダーを一撃で倒したシゲはかなり優秀なプレイヤーなんだろう。
「そろそろ町に着くぞ」
「ま……ち……?」
気づいた頃には目の前に大きな壁のようなものが見えた。
規模もわしらがいた町とは比べものにならない。
まるで要塞のような規模にわしとハルキは声を出すことすらできないでいた。
「ここは魔物の寄り付かせないように、分厚くて高い砦がある。いわゆる要塞都市だな」
おお、まるでラスボス戦直前の町……!
今にも「ここから先は戻れません」とか言われそうな雰囲気だ。
「町はこんなところばかりなのか?」
「いや? 砦や城壁がしっかりしているのは、ここと王都ぐらいだな」
つまりラスボス手前の町という認識で間違いはないようだ。
明らかにバグで来るところを間違えてしまったな。
「じいじ、いくよー!」
そんなことを気にしていないハルキは要塞都市に入っていく。
レベル帯が違う町に行っても、やることはないだろう。
この周辺の魔物を倒せなければ、レベル上げすらできない。
それにギルドでクエストすら受けられるかもわからない。
「どこも高いな……」
町の中を歩きながら、物価を確認しているが、わしでは買えそうにない金額をしている。
こんなところでハルキにお願いごとをされたら、それこそ終わりだな……。
「これからどうするつもりなんだ?」
シゲはハルキに今後のことを聞いていた。
ここは保護者のわしに聞いた方が良いと思うが、このパーティーのリーダーはハルキだ。
わしには任せられないって、ハルキにパーティーリーダーまで奪われてしまったからな。
「じいじ、どうする?」
それでもわしに聞いてくるハルキは優しい子だな。
「んー、しばらくは町で遊ぼうかと思う」
このままはじめの町に帰るっていえば、シゲは付いてきそうな気がする。
わしの言葉に少し残念そうな顔をしていた。
「じゃあ、フレンド登録だけはしておくから、また何かあったら連絡してくれ」
「はーい!」
わしらはシゲとフレンド登録をして別れることにした。
「ははは、これであいつと関わることはないな」
なんと、手が滑ってわしはブラックリストにも追加してしまった。
ブラックリストに入れておけば、シゲが近づいてきたことを音で知らせてくれるだろう。
わしの孫の心を奪った腹いせにはちょうど良い。
「じゃあ、君たちの幸運を祈るよ! キスケさん、ゲームを楽しんでくださいね」
シゲはわしに笑みを向けて去って行く。
あいつが笑うと鬼畜ドS兄ちゃんが頭をチラつくな。
なんというか……胡散臭いってやつだな!
「じいじ、冒険者ギルドに行こ!」
まずは情報収集のためにも、冒険者ギルドに向かうことにした。
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