10.じいじ、散歩の必要性を思い出す
「じいじ、帰ろう?」
「ぬぁ……」
わしはハルキに声をかけられて目を覚ました。
どうやら疲れて眠ってしまったようだ。
いつもベッドの上にいることが多いから、疲れたのだろう。
『にゃあ……』
呆れた顔でポンが見つめてくるが、二人が遊び終わるのをわしは待っていただけだ。
時間としては30分程度寝ていたのだろう。
「じゃあ、町に帰ろうか」
町に帰るためにマップを表示して現在の居場所を確認する。
「ここはどこだ……」
マップには現在のわしの存在を知らせるマークと隠しの家だけが表示されていた。
あとは真っ黒になっており、その場所に行かないとマップに表示されないのだろう。
知らない場所に行ったら、地図を見ても中々わからないからな。
こんなところまで、最近のゲームはリアルにできていた。
「じいじ、迷子?」
心配そうにハルキはわしの顔を覗き込んでくる。
迷子と言ったら迷子だろう。
ただ、ここで迷子と言ってしまえば、また認知症扱いになってしまう。
迷子=認知症って世間一般的なイメージだからな。
「いや……どうにかなる!」
『にゃはあー』
どうやらポンにバレたのか、ため息をついていた。
ベヒモスって人間みがあるんだな。
『にゃあにゃ!』
「ん? ポンの背中に乗るの?」
『にゃ!』
ハルキはポンの言っていることがわかるのだろう。
ポンは背中に乗りやすいように、地面に寝そべり体を屈める。
その上を楽しそうにハルキは登っていく。
公園の滑り台に何度も登っていた少し昔のハルキを思い出す。
あの時はわしも病気になる前だったから、一緒に駆け回っていたっけ。
「じいじ!」
ハルキに呼ばれていることに気づき、わしもポンに近づく。
「わしも背中に――」
背中に乗ろうとしたら、ポンに手で押し除けられてしまった。
肉球の圧迫感に少し嬉しくなってしまったが、今はそれどころではない。
「なっ!? わしはダメなのか!」
『にひゃ』
ニヤリと怪しげにポンは笑う。
ポンは何度もチラチラと後ろを見ている。
ひょっとして、わしに走ってついて来いってことだろうか。
まるで、わしを散歩させるみたいな……。
「ああ、運動不足のために散歩しろってことか」
『にゃにゃ!?』
歳をとると体力がなくなるからな。
せめてゲームの中だけでも、しっかり歩いた方が良いと教えてくれたのだろう。
「ポン、じいじは動きすぎたら死んじゃうよ?」
「『!?』」
動きすぎたら死ぬって……そんなバカなことはないよな?
マナ草を採取している時も、たくさん動き回っていたぞ。
いくら高齢者だからってそんなデバフが存在していたらクレームをつけるしかない。
「だって、今のじいじってHPが1しかないもん」
「あっ……」
ピンチの時にステータスが上がるからとそのままにしていたのを忘れていた。
だから、マナ草の採取スピードも速かったし、疲れて寝てしまったのだろう。
少し眠ったことで忘れていたようだ。
『にゃはぁー』
飽きられた顔でポンも見てくるが、HPが低い原因はお前だからな。
「じいじ、やっぱり認知症……」
どこかのネコと違って、さすがわしの孫は優しいな。
だが、決して認知症ではないからな!
歳を取れば忘れやすくなるものだ。
『にゃあああああ!』
ポンはわしの目の前に来て、大きく口を開けた。
「おい、何する気だ……」
――パクッ!
「じいじ!?」
ああ、まさかネコに食われて死ぬとは誰も思わ――。
「死んでない!?」
『にひゃ』
気づいた時にはわしは宙に浮いていた。
ポンは今頃、心の中で笑っているだろう。
わしを咥えたまま、まるでご主人様にネズミを捕まえたから、褒めて欲しいってあの構図をやるつもりだな。
うっかりして地面に落とされたりしたら、HPが0になるだろう。
だが、わしはそんなことに負けるはずない。
元ゲーマーのスーパーじいじだからな!
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