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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり4人目①

予告通り、今回からワケあり4人目に入ります!

今回はいくつか伏線を仕込んでいきますので、誰がこの章のワケありか、予想しながら楽しんで頂ければと思います。

「呼び出してすまんな。今回は少々こちらとしても動きにくい案件ゆえ、お前の力を借りたい」


 竜人族(りゅうじんぞく)の里の一件が終わってから1ヶ月。

 7の巡り(この世界で言う7月)に入り、じっとりとした暑さが襲い来る季節となった。

 相変わらず、屋敷の人員補強に追われる日々を送っていた所を、陛下から呼び出されたわけだが、今回はどんな用事だろうか?

 そんな事を考えながら、いつも通りに案内されて陛下の執務室に赴くと、そこにはクスティデル近衛騎士団長と、黒装束の王妃様、そして相変わらず執務机に書類を積み上げた陛下が待っていた。

 相変わらずとは言っても、陛下の執務机の書類は1ヶ月前よりは確実に減っており、順調に仕事を任せられる人員が増えているのだろう、多分。


「今回は一体、どのようなお話でしょうか?」


「私から話しましょう」


 王妃様から話があるらしいが、最近王妃様が陛下にべったりな気がしてならない。

 用件よりもそっちの方が気になってしまったが、多分俺に用事があるからいるのだろうな。

 うん、きっとそうだ。


「竜然教の動きが最近、色々と良くないのです」


「竜然教、ですか」


 宗教絡みは確かにロクな事が無いだろうな、と思いつつも、王妃様の説明に耳を傾ける。


「ドラネイ教国で、今の教皇が退位する事が発表されました。それだけなら特別我々が気にするような事は何も無いのですが、次期教皇の候補がまた、色々と黒い噂の多い人物でして」


「……もしかして、それってここ10年くらいの教会の治療費値上げとか、治療の質が下がってきてる話に関係してますか?」


 黒い噂、というところから、何となくだが今回の話の内容が予測できたので、それを口にしてみれば、陛下は目を丸くし、クスティデル近衛騎士団長は聞いてないフリをし、王妃様は無言で頷く。

 あー、当たってほしくなかったな。

 これ、宗教絡みとか絶対ロクな話じゃないじゃん。


「今回の話が浮かんできた背景には、この間の竜人族の里に付けた手の者から、情報が上がってきた事に起因しています。まだ背後関係はハッキリしていませんが、あの竜人族の里から教国に人や物資の流れがあるらしいと」


「教国が相手とは、また面倒ですね」


 里の方がただの隠れ蓑ならそこまで厄介な話でもないが、これでプロテとか竜人族が関わっているとなると、一気にややこしい話になってくる。

 国が変われば情報を得るのも簡単ではない。

 その点、俺のような冒険者なら比較的他国にも出入りがしやすいから、情報を探るにはちょうどいいという事だろうか。


「既に内容がある程度読めているようだが、今回はお前に教国を探ってもらいたい。今回は相手が相手ゆえに、国としての依頼ではなく、冒険者としての依頼として教国に飛んでもらう事になる。ちょうど、教国方面の強力な魔物を討伐する合同依頼が冒険者ギルドの方から発行されているのでな。こちらはギルド側と協議した上で、名義はギルドからだが、実質はリアムルド国からの依頼と思ってくれ」


「魔物の討伐に行く時に、教国を拠点にしてついでに探りを入れる、という事ですね」


「うむ、察しが良くて助かる」


 俺の理解に齟齬が無い事を陛下に確認してもらった上で、どうやって動くべきかを考える。

 情報集め、となると動けるのは俺だけだ。

 良くも悪くもカナエもジェーンも戦闘特化型だしな。

 聞き込みが中心になる場合、結構動きが制限されるような気がする。


「リベルヤ男爵には私の弟子を同行させますので、情報収集の際には上手く使って下さい。まだ新人ですので、どこにも顔が割れていませんし、その割には腕もいいですよ」


「情報収集の人員を貸して頂けるのは素直に助かります。いかんせん、部下が戦闘特化型ばかりだったので」


 王妃様の弟子、というのが少し恐ろしい感じもするが、ここは素直に情報収集の人員が嬉しい。

 状況次第では、カナエとジェーンのコンビに討伐方面に行ってもらって、俺と王妃様の弟子で情報収集と、二手に分かれる行動も取れるだろう。


「ああ、言い忘れていたが、依頼の募集は5人以上のパーティーとなっておる。悪いがあと1人は自力でメンバーを見つけて貰えるか?」


「あと1人ですね。わかりました、どうにかします」


 どのみち冒険者業の人員は探してたしな。

 前衛が2人いるので、そろそろ遊撃や後衛の人員が欲しい所だ。

 また奴隷を探すか、一時的にギルドで参加者を募るか、色々と探してみようか。


「最後に。場合によっては闇奴隷商の組織が絡んでいる可能性がある。安全には十全に気を配るようにな。今回は特に、他国での仕事になるゆえ、余らの力は殆ど及ばぬ。何かあってもすぐには助けられん。まあ、用心深いお前なら大丈夫であろうがな」


「はい、心に刻んでおきます」


 こうして打ち合わせを終え、俺は王城を後にした。

 とりあえずは、1人の一時加入が確定しているので、あと1人の人材を探すのが最優先になる。

 依頼の条件を満たせなければ、そもそも出発ができないからな。

 どうやって人員を確保しようか、と考えつつ、王城からの帰り道を歩いていたら、物陰から飛び出してきた子供がぶつかってきた。

 軽い衝撃によろけそうになるが、俺は咄嗟に子供の腕を取る。


「大丈夫か?」


 少しだけ、威圧感のある笑みを浮かべる。

 子供の手には、俺の財布。

 混み合っている商店街ならぶつかるのもわからないではないが、ここは比較的道幅は狭めとはいえ、見通しのいいメインストリートだ。

 わざわざぶつかる理由が無いので、すぐにスリだろうと当たりを付けたわけである。


「放せ! どうせ貴族だから金持ってんだろ! 少しくらい無くなったって、平気だろ!」


 俺に手を掴まれて暴れているのは12歳くらいの男の子だ。

 身なりからして、スラム街の住人という事は無いだろうが、そんなに裕福そうでもない。

 どこかスレているような感覚を覚える辺り、孤児だろうか?


「まあ、確かに金は持ってるな。けど、だからといってタダでくれてやるほど、俺はお人好しじゃないんでね」


「いてぇっ!」


 少し強めに少年の腕を握れば、盗もうとしていた俺の財布を取り落としたので、ゆったりとそれを回収しつつ、強めた力を元に戻す。

 少年はと言えば、反抗的な目でこちらを睨んでいるが、俺の力からは逃れられないようで、逃げようと暴れているものの、無駄な抵抗となっている。


「さて、君は知ってるか? 貴族は無礼な平民を殺しても罪に問われないって」


 今や形骸化した法律ではあるが、法律は法律。

 正式な爵位持ちである俺が、盗みを働こうとしたこの少年を、ここで処断しても罪には問われない。

 わざとらしく、空いている方の手に、魔術で雷を纏わせ、バチバチと大きく音を鳴らしながら少年へと近付けると、一気に少年は顔を青ざめさせた。


「だ、誰か助けてくれよ! こ、殺される!」


 道行く人からは少なからず見られているが、俺が貴族というのは意外と知れ渡っているので、助けを求められても人々は目を逸らす。

 完全に見ないフリをされて、少年の顔色はいよいよ蒼白になっていく。


「ちくしょう……食う物が無くって、チビ達が腹を空かせてるんだ! なあ、頼むよ! 少しでいいから、金を恵んでくれよ! 俺はどうなってもいいから!」


 いよいよ打つ手が無くなったのか、少年は半泣きになりながら懇願してくる。

 どうも、自分以外の子供たちを食わせようとしての犯行っぽいな。

 チビ達、という事は、この少年が最年長だろうか?


「……とりあえず、君の保護者に会わせてもらおうか。話はそれからだ」


 パッと見では痩せ細っているというほど栄養状態の悪くなさそうな少年だが、この子の焦りっぷりを見ていると、結構追い込まれているようにも見える。

 そんなわけで、俺は脅しのために纏っていた魔術を霧散させ、少年に保護者の元に案内するよう告げた。


「……それはダメだ。もし、それでチビ達に何かあったら、俺は死んでも死にきれない」


 なるほど、年少の子を守りたいという気持ちはかなり強いようだ。

 だったら、もうひと押しだな。


「もしかしたら、君の保護者とそのチビ達を見たら、気が変わって金を恵む気になるかもな?」


「……わかったよ。連れてく」


 俺が少し意地悪な笑みを浮かべて少年を見れば、しばし逡巡した後、俺を案内する気に。

 これでコロッと案内する気になる辺り、少年としてはかなり逼迫しているのかもな。


「こっちだ」


 俺が手を離しても、逃げ出す事は無く、少年は俺を案内して路地の隙間を縫うようにして移動していく。

 正直、道がよくわからなくなりそうだが、まあ最終的は大きい道に出るように動けばどうにかなるだろう。

 そういえば、城に行って戻るだけだから、って言って護衛を断って来てたけど、これ帰ったら寄り道してるの怒られそうだな。

 まあ、これは棚上げでいいや。

 今は目の前の問題だ。

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