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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり3人目⑰

「それじゃ、行ってくるから留守は頼む」


「はい、行ってらっしゃいませ」


 装備のメンテナンスや食料などの資材、各方面への報告等を終えて、俺たちは王都を発った。

 注文を出してからようやく出来上がった馬車で、俺たち三人は王命調査隊として、最近見つかった王都北西にある竜人族(りゅうじんぞく)の里に向かう。

 王都内で使うものでなく、今回のような遠征に使用するための馬車なので、乗り心地や機能性に重きを置いており、外装は普通の一般的な馬車のそれである。

 しかし、内装と機能性に拘ったおかげで、悪路でもさほど揺れないし、荷台のギミックを展開すればテント代わりに拠点としても利用できるのは便利そのものだ。

 欠点としては、内部を広く作ったので大きさがやや嵩張るのと、そのせいでこれを牽く馬が最低でも3頭は必要という所。

 しかも、カナエとジェーンの装備が人間3人分は余裕で超えるので、今回は体格が良くてパワーと持久力のある馬の4頭牽き。

 運用費が一般的な馬車と比べても高い。

 けれど、それを補って余りある快適性と安定性は、魔物が跋扈する王都の外を移動するには頼もしかった。

 ちなみに、御者はそれぞれ俺たちで持ち回りである。


「今の所は順調だな」


「何もないのはいい事」


 王都を発ってから3日目になっても、殆ど魔物などのトラブルには遭遇せず、順調な旅路だ。

 おかげで車内のカナエとジェーンは退屈そうである。

 そういえば、あの模擬戦以降、カナエとジェーンはかなり打ち解けたようで、2人で楽しそうに話している所をよく見るようになった。

 うん、仲良きことは美しきかな。

 道のりとしてはおよそ半分といった所で、このまま何事も無く目的地へと到着できればいいのだが。


「ま、そう簡単にはいかないわな」


 俺の思考がフラグになったのか、前方に魔物の集団を発見。

 向こうは完全にこちらを捕捉しており、既にターゲットとしてこちらを見ている。

 まあ、魔物が相手となれば、手加減もいらない。

 蹴散らして先に進む事にしよう。


「前方に魔物の集団! 数20! 魔狼ウルフェンだ!」


 一声かければ、完全武装のカナエとジェーンが即座に馬車から飛び降り、俺が馬車を止める間には既に魔狼の群れに突貫している。

 やる気満々なのはいいけど、やりすぎないかちょっと不安。

 特にカナエは地面に一撃を振り下ろそうものなら、いともたやすく地形を変えてしまうので、最新の注意を払って頂きたい所。


「……俺の出番は無かったな」


 馬車を止めてから、俺も戦線に参加しよう、とした時には、既に魔狼たちはその全てが息絶えていた。

 大半はジェーンがそのスピードで蹂躙したようで、一部カナエが武器でミンチにしたであろうグロ死体も転がっている。

 まあ、初心者でも1対1であれば、比較的安全に倒せると言われる程度の魔物である魔狼では、あの2人に敵うはずも無く、というわけだ。


「余裕」


「歯ごたえがねえな!」


「楽に越した事はないだろ。死体処理するから、手伝ってくれ」


 あまりにも早く終わってしまったので、物足りない感じを漂わせている2人を促し、1箇所に死体を集めてから火の魔術で跡形も無く焼却して処理を行う。

 一応、毛皮とかが素材として使えるのだが、そもそも強くない魔物であり、数も溢れがちで大した収入にもならない上に、これから向かう先には冒険者ギルドが無いので、そもそも納品先が無い。

 二束三文にもならない素材で荷物を増やしてもしょうがないので、焼却処分してしまった、というわけである。

 死体を放置したらしたで、腐って疫病の元になったりとか、そもそもアンデッド化してむしろヤバい魔物になったりもするので、こうして死体の処理をするのは重要なのだ。




……

………




「見えてきたな」


 魔狼の襲撃以降も、散発的な魔物の襲撃こそあったものの、さしたるトラブルも発生せず、俺たちは今回の調査対象である竜人族の里付近に到達していた。

 既に視界に捉えられる範囲に里の外壁が見える。

 山の麓に作られた里で、周囲には森があるが、ちょうど道のある範囲の木々は取り除かれており、ここ最近で切り開かれたような印象だ。


「ジェーンは見覚えがあったり……しないよな」


「さすがに外からじゃな。里の中に入ればある程度はわかると思うぜ?」


 一応、と思って聞いてみたが、外観だけでは自分の故郷がどうかはわからないとの事。

 そりゃそうか。

 そもそも記憶があるとしても10年は前の話だ。

 ましてや隠れ里なら、人目に付くような外観はしていないはず。


「ま、問題は中に入れてくれるかどうかだ」


「このまま行く?」


「とりあえずはな。反応を見てから次を考えるさ」


 御者をしているカナエに馬車のまま進むよう指示を出し、隠れ里の方に近付いていく。

 今回の調査において、必須事項として里の人口規模のチェックと、国への保護を求めるかどうかの確認がある。

 人口規模はまあ、字面そのままだが、国へ保護を求めるかどうか。

 つまり、リアムルド王国の国民になるかどうかの意志確認だ。

 当然、国民となるなら税が発生するし、戸籍登録も必要。

 リアムルド王国としては、事情があって独立性を求める村や里を認めている。

 その代わり、何かあっても基本的に助ける事は無いし、干渉もしない、というスタンスだ。

 わかりやすい例で言えば、単一種族の掟で縛られた村とかがわかりやすいだろうか。

 一例として、エルフだけの村があって、掟により他種族との交流が禁じられている、とかがわかりやすいだろうか。

 国としては、村の存在そのものは認知していても、特に関わりもしないし邪魔もしない。

 代わりに援助もしない、という付き合い方だ。

 ある種、小さな国の一つとしてみなす、という所だろう。

 もちろん、国にとって有益であれば交易をしたりはするし、条約のような取り決めもする。

 

「止まれ! どこの者だ!?」


 馬車のまま里の方に近付けば、竜人族の門番から声をかけられた。

 ガタイのいい、男の2人組だ。

 ジェーンとはまた違うが、頭に角が生えていて、ぶっとい尻尾も見える。

 2人のうち片方が俺たちに声をかけ、もう1人が後方から警戒している、といった様子。

 カナエに指示して馬車を止めさせ、代表者である俺が馬車を降りて門番の前に向かう。


「このたび、リアムルド王の命により、こちらの里の調査に来ました、ハイト・リベルヤと申します。こちらが王の署名がされた調査命令書と、長に宛てた書状になります。よろしければ、長に取り次いで頂ければと。その間は外で待たせて頂きますので」


 簡単な自己紹介と共に、陛下から持たされた命令書と書状を門番に手渡すと、彼は困惑した表情で後ろのもう1人の門番を見てから、再びこちらを見た。


「……すまないが、我々では判断がつかん。少し時間をもらってもいいか?」


「構いません。この近くで待たせて頂きますので、お返事が決まりましたら訪ねて頂ければと」


 軽い挨拶は済ませたので、門番から長に報告が上がる事を祈りつつ、俺は一度馬車に乗り込み、カナエに指示を出して門の脇の方に移動。

 門から見える範囲で道の邪魔にならない位置に馬車を停め直し、一旦の休憩となった。

 あとは向こうの返事待ちである。

 最悪、里への出入りを突っぱねられた場合は、俺が魔術を用いてこっそり侵入し、おおよその人口規模だけをざっくりと調査して帰還する手筈だ。

 さて、あちらさんはどう出てくるかな……?

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