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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり3人目⑯

「待たせたな。これが試作品だ」


 ジェーンの武器となる特大剣の試作品の試作品ができると言われていた日。

 予定通りブライアンさんは武器を仕上げてきて、動作確認をするのに訓練場を借りてくれていた。

 そうして、彼が持参してきたのはまさしくグレートソードと言える、鉄塊のような巨剣。

 少なくとも全長はジェーンの身長よりも大きく、おそらく2メートルくらいあるだろうか?

 分厚く、幅の広い剣身は、半身になればジェーンが隠れきれるくらいの大きさである。

 当然、重量も相当なものだと思われるが……まあ、カナエの重力の大斧鎚グラヴィトンハンマアクスよりはマシ、なのかもしれない。

 一応は筋力50のパワーファイターだし、持てないって事は無いだろう。

 なお、ブライアンさんは両手ではあったものの、普通に持ってきていた。

 それでも顔にじんわりと汗が浮かんでいるので、重量はかなりあるはずだが。


「うん、重さとバランスは悪くねえ」


 そう言って、カナエは受け取った特大剣を片手で持ち上げはしたものの、片手で振るうには若干重いようだ。

 両手で握った特大剣をブンブンと振り、感触を確かめてから、一度右手だけで特大剣を持ち、肩に担ぐようにして姿勢を低くする。

 多分、この状態が彼女にとっての構えなのだろう。


「この重さでちょうどいいか……カナエの嬢ちゃんほどじゃないが、あんたも相当だな」


 嬉しそうに特大剣を握るジェーンを見て、ブライアンさんは若干引いた様子だ。

 まあ、確かに大柄とはいえ、女性が鉄塊のような特大剣をブンブン振り回すのは絵面のインパクトが凄い。


―――――――――


試作型魔導機構特大剣


付与魔術(エンチャント)付与効率を始めとした、魔術性能を活かす機構を組み込んだ特大剣。

部位ごとに異なる金属を使用することで、重量バランスや扱いやすさを高めつつ、高い性能を実現している。

筋力と魔力を要求する独特な武器。

刃の金属は頑丈かつ付与魔術の効率を高める事ができ、腹の部分は硬くて魔術などを弾く金属のため、盾の代わりにもできる。

様々な矛盾を技術とひらめきで解決し、形となったこの武器は、無限大の可能性を秘めている。


―――――――――


 なるほど。

 昨日の説明の熱意に裏打ちされた、現状のブライアンさんの技術の集大成みたいな武器なんだな、これ。

 

「とりあえずは問題無さそうだな。あとはそいつの動作だが、鍔元の突起の所に親指を当てて魔力を流すと刃の所が可動して、剣先が開く」


「おお、本当に動いた! カッケーな、これ!」


 最初は説明をよくわかっていない様子のジェーンだったが、とりあえずブライアンさんに説明された通りに特大剣を操作してみて、武器の稼働ギミックを見て大興奮。

 こういう所の感性はやっぱり少年っぽいな。

 何となく、ブライアンさんの作る武器は好きそうだな、と思ってはいたけど、予想通りだった。


「あとは、柄と鍔の繋ぎ目近くにある突起を人差し指で押し込めば、剣先の放出口から魔力を放出できる。そこの使い方はまだ未知数だが、魔術関連の使い方ができるはずだ」


「ちょっと試してみっか」


 機構部分の操作説明を受けて、ジェーンが付与魔術を施すと、特大剣の刃の部分から炎が吹き上がり、一瞬で炎纏いし特大剣となる。

 その状態で、両手で握った特大剣を真上に掲げ、鍔元のトリガーを押し込む。

 一体何が起こるのだろう、とワクワクしていた所、真上に凄い勢いで火炎放射が行われた。

 その射程は相当なもので、ちょっとした遠距離攻撃として充分すぎる威力に見える。


「これ、いいな! あたし向きだぜ!」


 ある程度使い方を理解したのだろう。

 色々な剣を振り方を試しつつ、炎の他にも雷や氷といった付与魔術の属性を試していく。

 こうして見ていると、ジェーンは全属性対応しているんだな。

 結構複数属性の魔術を扱えるのって珍しいんだが。

 かくいう俺も全属性対応はしてるけど、属性によっては若干得手不得手があったりする。

 見ている限りでは、ジェーンは特に属性による得手不得手は無さそうだ。


「待たせたな! そんじゃ、そろそろ()ろうか!」


 準備や慣らしが終わって、ジェーンが構えを取った。


「受けて立つ」


 その目線の先には、完全武装のカナエの姿。

 今日は模擬戦相手にカナエも連れてきたのだ。

 理由としては、単純に武器同士でのぶつかり合いになると、俺が圧倒的に不利かつ、基本的に躱す事に専念しなければならない。

 その上、俺の本領は魔術を絡めた魔術剣士としての戦いであり、基本的に手加減が難しい。

 これは魔戦技(マジックアーツ)の威力がありすぎる、あるいは魔術は威力を絞っても当たり所によっては普通に人が死ぬからだ。

 S級冒険者のように、よほどの実力差があるのなら、簡単な魔術を使用してもいいかな、と思うものの、対人で中級以上の魔術は使いたくない。

 それくらい、魔術の使用には慎重であるべきだと俺は思う。


「そんじゃ、いくぜぇ……うらぁ!」


 構えを取っていたジェーンが、一瞬で矢の如く加速し、横薙ぎの一撃をカナエに叩き付ける。

 どう見ても当たったら死ぬ勢いの容赦無い一撃なんだが、大丈夫だろうな?

 まあ、カナエはカナエでしっかり大盾で受け止めてるし、そのまま重力の大斧鎚グラヴィトンハンマアクスを振り返してるから大丈夫ではあるんだろうけど。

 カナエの振り返しを防御したジェーンは、大きく跳ね飛ばされたものの、すぐに着地して体勢を立て直した。


「っく~……両手が痺れるぜ。なんつー馬鹿力だ」


 片手で肩に特大剣を担ぐ構えに戻りつつ、ジェーンが左手を振る。

 どうやらカナエのパワーが想像以上だったらしい。

 まあ、そうなるわな。

 ただ、カナエの一撃を受け止めて、武器を手放さなかったのは凄いと思う。

 俺なんて、前にカナエと模擬戦した時に、どうしても武器受けしないといけなくなって、武器受けした瞬間に手から剣がすっぽ抜けたからな。

 一撃そのものは大振りだけど、その分威力がやべー事になってるんだよな、カナエの攻撃って。

 そのくせ、近い間合いだと発生の早い大盾での殴りなんかも使ってくるし、地味に近接戦闘においては隙が無い。

 その分、離れてしまえば攻撃は無いし、動きも特別早いというわけではないから、離れた位置から攻撃できる場合は逆に一方的に攻撃ができるのだが。

 というか、動きが早くないと言っても、並以上の動きではある。

 推定100キロは余裕で超える装備一式で、並の人よりは早い足で襲い来るパワーファイター……怖すぎだよマジで。

 パワーもさることながら、耐久面もカチカチなのもタチが悪い。

 物理攻撃は大盾で余裕で受け切るし、半端な攻撃なんてしようものなら、弾き返されて逆に体勢を崩されてしまう始末。

 魔術だって武器で振り払うなり大盾で受けるなりで防ぐし、ぶっちゃけ俺からすればとことん相性が悪い。

 こっちも魔術で一方的に攻撃できはするが、カナエの防御を抜こうと思ったら、それこそ殺す気でやらないと無理だろう。

 定期的に行うカナエとの模擬戦を思い出して、少々嫌な気分になっていたら、目の前では怪獣大決戦のような戦闘が繰り広げられていた。

 ジェーンとカナエがそれぞれ、とんでもない威力の攻撃を交互に繰り返す状況なのだが、ジェーンは真正面からの打ち合いは不利と判断したようで、一撃を加えたら即離脱、という行動を徹底しているため、カナエは当てる攻撃が無い、といった状況だ。

 ここはジェーンの持つスピードが活きている場面だな。

 たまにジェーンが突っ込んでくるであろう位置を予測して、カナエが攻撃を置くようにしているが、ジェーンはそれを巧みに躱しつつ、大盾の防御を掻い潜ろうとして、大盾で防がれる、というのを繰り返している。

 何というか、千日手というのはこういう事を言うんだな、と思った。

 お互いに決定打が無く、何も起こらない。

 不毛な戦いとも言う。

 まあ、実際に殺し合いをしていたら、お互いにもっと違う手段があるのだろうとは思うが、模擬戦ともなるとこれが限度なんだろうな。


「そろそろいいんじゃないか?」


 どう見ても決着は付かないだろうな、と思い、二人に声をかけると、ピタリとその動きを止めた。

 息は上がったりしていないものの、運動量は相当だったからか、二人はかなり汗をかいている。

 万が一、どちらも攻撃が当たれば確実に相手が死ぬ威力だから見ててハラハラするな。


「……やるな!」


「あなたも」


 制止をかけた後、二人はお互いに歩み寄ると、武器を持った右手の拳をぺしっ、と打ち合わて、いい雰囲気を醸し出す。

 何やら、友情のようなものが芽生えたのかもしれない。


「そんじゃ、今日は全員の装備を預かっていいんだな?」


「ああ、調整も含めてメンテナンスを頼む」


 模擬戦を終えて、ショップの方に移動してから、ブライアンさんに俺たちの装備一式を預けてメンテナンスや改修をしてもらう。

 量が量なので、受け取りはまた後日になるが、遠征に出たらしばらくはメンテナンスができないので、ここで一度キチンとしておきたい。

 こう考えると、身内にこういう鍛冶とかに長けた人材がいると便利そうだよな。

 契約上、メンテナンス費用はタダではあるけど、ブライアンさんは他にも仕事を抱えてる身だ。

 彼の負担を考えると、こちらで減らせる手間は減らしてあげるべきだと思う。


「仕上がりは3日後だな。遠征に行くなら、土産の一つくらいくれよ?」


「土産になるようなものがあればな。行くのは辺境だからあまり期待しないでくれ」


 ブライアンさんとお互いに軽口を叩いてから、俺たちは帰路についたのだった。

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