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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり3人目⑫

「特大剣で付与魔術(エンチャント)を使うとなると、魔力の伝導率と頑丈さが必要だな。基礎的な部分以外で何か欲しい機能はあるか?」


「剣身の幅は広い方がいいな。いざという時に盾代わりにしたい」


「材質指定は?」


「その辺はあんま詳しくねえから、プロに任せるぜ。あ、でも束巻きは……」


 ブライアンさんとジェーンが、あれこれと武器のオーダーメイドについて熱く語り合っている。

 まあ、せっかくのオーダーメイドだから好きなようにしてくれていいけど、材料費が青天井になってもらっても困るんだよな。

 一度見積もりで止めるから、ちゃんと内容の精査はできるんだけどさ。


「ジェーン、少し野暮用を思い出したから、話が終わったら1人で帰っててくれ。そんなに遅くはならないだろうから」


「おう、気を付けてな」


 ジェーンを一旦放置して、俺は王城へと足を運ぶ。

 闇奴隷商や、竜人族(りゅうじんぞく)の隠れ里について、気になる所があるので、その辺りを陛下に問い合わせてみようというわけだ。

 まあ、アポ無しなんで、場合によっては門前払いされる可能性も大いにあるのだが。

 とはいえ、陛下の事だから何だかんだと会ってくれそうな気はするんだよな。




……

………




「お前が前触れも無しに余を訪ねるのは珍しいな」


 案の定、というべきか。

 王城に行って陛下への取り次ぎを頼んでみれば、すんなりと陛下の執務室へと通された。

 予想外な部分があるとすれば、黒装束の王妃様が一緒にいるという所だろうか。


「急にすみません。少々気になる事がありまして」


「気になる事とな?」


「竜人族と闇奴隷商について」


 俺が持ってきた疑問を聞いた瞬間、陛下の目がスッと細まる。

 傍らにいる黒装束の王妃様からも、少し圧が出ているような気がするけど、とりあえず気にしない。

 もしも機密とか迂闊に触れない問題だとしたら、大人しく退けばいいだけだ。


「順を追って説明しますと、先日陛下にお願いした、呪いを解きたい人材というのが、竜人族でして。モーリア様のご協力もあり、解呪は無事に成功したのですが、そこで色々と呪いを受けた理由なんかを聞きました。竜人族の隠れ里と闇奴隷商が深く関わっているので、陛下なら何かご存知じゃないかと思った次第ですね」


 事情を説明してみると、陛下は難しい顔をして、黒装束の王妃様を見た。


「……どう思う?」


「リベルヤ男爵なら、いいと思います」


「そうか」


 短いやり取りの後、陛下は執務机にある呼び鈴を鳴らす。

 すると、すぐに部屋の外に控えていた使用人が中へと入ってくる。


「お呼びでございますか?」


「茶を人数分淹れてくれ」


「かしこまりました」


 お茶を淹れるように指示を出した辺り、結構話が長くなるのだろう。

 使用人が部屋を出てから、陛下は眉間を手で揉む。


「話は長くなる。覚悟しておくように」


「お手柔らかにお願いしますよ」


 無言で陛下からソファに座るよう促され、俺は大人しくそれに従った。

 陛下はそのまま執務机にいるようだが、黒装束の王妃様は俺の対面に腰を下ろす。

 それから程なくして、お茶の準備を終えた使用人が戻ってきて、俺たちの前にそれぞれ淹れたての紅茶を配っていく。

 飲み物が行きわたり、使用人が部屋を出てから、陛下がぽつぽつと話し始める。


「闇奴隷商は、この大陸の3大国同盟内で槍玉に上がる問題の一つでな。特に連合が被害を受けているのだが、次点で我が国も被害が多い。帝国はあまり被害を受けていないのが怪しい、と思いはするのだが、その辺りは国の特性に依る部分もあるゆえ、一概には犯人を特定できておらん。ただ、間違いなく言える事は、大きな闇奴隷商の組織が3大国を股にかけている、という事だ」


「またえらく壮大な話になってきましたね……」


 国内の問題としか思っていなかったので、まさかの国際問題である事に驚きを隠せない。

 この大陸の3大国を股にかけている、という事は、そもそもこの大陸外にもその組織が広がっている可能性すらあるわけで。

 組織の規模すら不明、ゆえに調査も進まない、といった所だろうか。


「やつらは痕跡を消すのが非常に巧い。何度か痕跡を掴んでも、まるで雲を掴んだかのように存在が霧散してしまう。今は国内の安定を推し進めていかねばならぬし、余らが関わる余力はない。それでも単独で動くのか?」


 仮に俺が何かしら証拠やら情報を得たとしても、国側で関わる余裕は無いが、単独で動く分には好きにしていい、という事だな。

 まあ、陛下の情報網や権力を以ってしても、組織の規模すら掴めていないというのは普通に考えてヤバすぎる相手だ。

 少なくとも男爵如きが太刀打ちできるような相手でない、というのは確かだろう。


「それを聞いて単独で突っ込むほど、愚かじゃないですよ。というか、そもそも俺の目的そのものは新しい竜人族の人材、ジェーンの家族の安否を調べたいって事がメインですから。まあ、相手が大した事のない小物なら、ついでに潰してもいいか、くらいには思ってましたけど」


 俺がメインの目的を話すと、陛下は苦笑いを浮かべた。

 だったらそれを先に言え、とすごく言いたそうな感じ。


「リベルヤ男爵、あなたの希望に添えるものかはわかりませんが、一つ関係しうる情報があります。王都から北西に進んだ先に、最近竜人族の里が発見されました」


 黒装束の王妃様から、耳よりな情報が出てきたので、俺は彼女の方を見てから、もう一度陛下に視線を移す。

 俺の言いたい事を理解したのか、陛下は無言で首を振る。

 どうやら、王妃様独自の情報源、という事らしい。


「北西、ですか。距離はどのくらいでしょうか?」


「馬車で1週間程度と聞いています。まだ情報の精度を検証していないので、どの程度の信憑性があるかは不明ですが」


 情報の精度が不確かだという事は、本当につい最近の情報なのだろう。

 とはいえ、今後の行動指針にはちょうどいいかもしれない。

 ただ闇雲に動くよりも、不確かであっても目標がある方がよっぽどいいしな。


「……わかった。ハイト、お前にその竜人族の里の調査を命ずる。期限は……そうさな。とりあえずは1~2ヶ月程度でどうだ?」


「謹んでお引き受けします」


 王妃様の目線だけで、彼女が何を望んでいるかを的確に理解している辺り、陛下と王妃様の息ピッタリ具合がすごい。

 というかこれ、もしかして俺、お2人のイチャイチャタイムにお邪魔しちゃった?


「今、書面やら手続きやらを済ませるぞ。後回しにすると面倒だからな」


「わかりました」


 暗に手続き諸々が終わるまでは帰さんぞ、と陛下から睨まれて、俺は苦笑せざるを得ない。

 陛下が書類を書き上げるのを待ちながら、俺はチクチクと陛下から小言を言われ続けるのだった。

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