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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり3人目⑪

「服ってあんなに種類があるものなんだな」


 前にシャルロットとカナエの服を見繕って貰った服屋で、ジェーンの服も揃えてきたのだが、彼女はどうやら動きやすいかつレザー系の服装が好みのようだった。

 服屋も始めてだったからか、少し興奮した様子であれこれ見て回っていたのがちょっと可愛かったと思う。

 日用品も揃えて、最低限今日のお出かけの目標は達したと言える。

 彼女は好みが比較的シンプルだったので、選ぶのにさして時間がかからなかった。


「少し休憩にしよう」


 空が夕方に差しかかるくらいのタイミングで、屋台の軽食と飲み物で休憩を取る事にし、商店街のベンチに腰を降ろす。

 色々なものを見て回ったからか、ジェーンの表情は明るく、この買い物を満喫しているようだ。


「……こうして、また空の下に出られるなんて、思わなかったな」


 飲み物で喉を潤すと、ジェーンが急にしっとりとした雰囲気を纏う。

 長い間、奴隷として軟禁生活を送っていたから、今とのギャップが不思議なんだろうな。


「ホント、ありがとな。この恩は、ぜってー返す」


「別に恩を着せたかったわけじゃないんだけどな。単純に俺は、ジェーンが俺たちにとって有用で、戦力になると思って雇ったに過ぎない。これから過酷な冒険者稼業をさせられるんだぞ?」


 急に真面目な顔になって、今日何度目かわからないお礼を言い出すものだから、あくまで仕事の役に立ちそうだから奴隷とした買ったに過ぎない、と伝えておく。

 シトランの件でカナエがそうであったように、恐らくこれから先、俺と一緒に冒険者稼業をしていれば、命が危ない事にも遭遇する。

 そういう時に、命を張ってもらう事になるのだ。

 場合によっては、死ぬ事もあるだろう。

 もちろん、俺はそんな事態にさせるつもりは欠片も無いが、冒険者稼業に絶対など無い。

 そういう意味では、常に危険と隣り合わせの危険な職場だな。


「ハッ、その方が命の張り甲斐があるってモンだぜ」


「真剣に取り組んでくれるのはいいけど、命の安売りだけはしてくれるなよ。危険と隣り合わせではあるけど、俺はジェーンやカナエを使い捨てるような真似は絶対しないからな」


「わーってるよ。そんくらいの心意気だって話さ」


 言葉が荒っぽくて、言動がすごく漢っぽい。

 ここ数時間、ジェーンと共に過ごしてみて、そんな感想が出て来る。

 何かしらに関する反応も、女子というよりは少年のそれだし。

 もしかすると、男所帯で育ったのかもな。


「……あたしはよ、竜人族(りゅうじんぞく)の隠れ里で生まれ育ったんだ。これでも一応、里長の娘でな。次期長って言われてて、そういう教育もされてた」


 今まで自分から話す事の無かった、自らの生い立ちを語り始めたジェーンを見て、俺は軽食をつまみつつ、先を促す。

 ジェーンも合間に軽食をつまんだり、飲み物で喉を潤しながら、ぽつぽつと己の過去を語る。


「8歳の時だ。あたしを次期里長から引き摺り下ろしたい派閥がいたみたいでな。そいつらに拉致されて、あたしは呪いをかけられた。それから闇の奴隷商人に引き渡されたんだろうな。それからの記憶はかなり曖昧で、気付いたらあの奴隷店にいた。あそこの店主は普通の奴隷商なんだろうが、どういう経緯であたしを置いてたかはわかんねえ」


「……どこにでも跡目の争いとかはあるものなんだな」


 聞いていて胸クソ悪い話だ。

 わざわざ呪いをかけた上で、闇奴隷商に引き渡す辺り、徹底している。

 いっそ殺してしまえば手っ取り早いのに、そうせずにジェーンを自分たちの資金源にしている辺り、性質が悪い。


「ジェーンは、里に戻りたいか?」


 これについては確認しておかないとな。

 彼女が故郷に帰りたいというのなら、一定額分に値する分の働きをしたら、奴隷から解放しないといけない。


「……いや、いい」


 俺の問い掛けに足して、彼女はゆるゆると首を振った。

 表情からして、俺に忖度している、という感じでもない。


「あたしに対して、あんなクソみてえな手段を取る連中だ。10年も経った今、きっと親父もおふくろもきょうだいも、殺されるか、あたしみたいに呪いかけられて売られるかしてるだろうぜ。そんな里になんて、戻りたくはねえな。ただ、家族の安否については知りてえと思う。そんで、可能なら助けたい」


「そっか。今は特にこれといった仕事があるわけじゃないし、調べてみてもいいかもしれない。俺も貴族の仕事があるから、ずっと付きっきりってわけにもいかないけどな」


「気持ちだけでありがてえ。けど、無理はしなくていい」


 嘘だな。

 そう言おうかと思ったが、辛いのを我慢して笑顔を浮かべているジェーンを見ていると、そんな彼女の気遣いを無碍にするのも躊躇われた。

 それだったら、こっちで勝手に動いておけばいいか。

 今は人手が足りないから、俺だけでどうこうって事はできないが、幸いにもこの国の最大権力に伝手があるし、もしかしたら闇奴隷商が関わっている関係で、陛下とも利害の一致があるかもしれない。

 これは近いうちにもう一度陛下に会ってみた方がいいな。

 帰ったら城に手紙を送って、お伺いを立てておこう、と心のメモに書き込んでおく。


「さて、まだ時間もあるし、装備でも見に行くか。あとは冒険者登録もしておかないとな」


 飲み物と軽食を平らげてから、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。

 ジェーンの登録手続き諸々を済ませてから、俺たちはブライアンさんのいるギルドショップへ。

 目的地に着くと、相変わらずのぶっきらぼうな表情で、ブライアンさんが店番をしている。


「よう、また見ない顔を連れてるな」


 店内が空いていたからか、すぐに俺たちを見つけ、彼は軽く手を挙げて声をかけてきた。


「新しく仲間になったジェーンだ。彼女の装備を探しに来たんだ」


「よろしくな、おっちゃん」


 ブライアンさんにジェーンを紹介すると、彼女は機嫌良さげに挨拶を交わす。

 態度が近所の知り合いに対するそれなんだが、ブライアンさんは特に気にする事もなく、よろしくな、と挨拶を返してから俺の方を見る。


「また新しい女引っかけたのか?」


「そういうんじゃないから。有能な人材がたまたま女だっただけだよ」


 ブライアンさんのからかいをジト目で返すと、彼は機嫌よさげに笑う。

 まあ、男同士、かつビジネスパートナー同士、変な気を遣わない関係なので、ただのじゃれ合いなのだが。

 

「さて、嬢ちゃんの得物は何だ?」


付与魔術(エンチャント)ができる頑丈な特大剣が欲しい」


 ブライアンさんからの問いかけに、ジェーンは淀みなく答えた。

 8歳から奴隷にされてた割には、迷いなく答えるんだな。

 まあ、次期里長として教育されたって言ってたし、その時には戦闘スタイルが確立してたのかもしれない。

 そして能力を鑑定した際に、筋肉系魔術師かな、と想像してたら、筋肉系付与魔術師(エンチャンター)だったでござる。


「付与魔術か……普通の剣ならあるが、特大剣となると、向いたものは在庫が無いな。いっそ、オーダーメイドでもするか?」


 オーダーメイド。

 心くすぐられるフレーズだ。

 実際問題、ジェーンの要求は結構特殊な部類なので、やってもらうのは大いにアリだな。


「いくらかかるかにもよるけど、アリだな。とりあえずジェーンの要望を聞いて、ざっくり見積もりを出してくれないか? 予算がうちの会計から降りればそれで頼む」


「シャルロットの嬢ちゃんか。あの子から予算引き出すのは至難の業じゃねえか?」


 とりあえず見積もりを出してくれ、と要望を出したら、ブライアンさんがくつくつと笑う。

 そういえば、シャルロットと面識があったな。

 多分、出資の関係で、めちゃくちゃにダメ出しされたんだろうな、と容易に想像ができたので、思わず苦笑いを浮かべてしまった。

 実際、シャルロットの書類チェックはかなり厳しい。

 僅かな不備も許されないし、俺が決裁した予算案も、この部分に気付けないと貴族当主としてはダメ、とツッコミを入れられたりしているのだ。


「そこは何とかするさ。だから頼む」


「了解。そんじゃ、嬢ちゃんの要望を聞こうか」


 俺の反応を見て、ブライアンさんは苦笑いを浮かべながらジェーンの要望を聞き始める。

 まあ、何とかなるだろ、多分。

 予算云々に関しては、とりあえず問題を先送りする事にしよう。

 誠心誠意、お願いすれば、きっとシャルロットもわかってくれるさ。

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