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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり2人目㉓

2025/9/23

ちょっと全武器使いの処遇が伝わりにくかったようなので、一部記載を修正しました。

その後の展開や結果は変更ありません。

「結果だけを実現する……なるほど、デタラメな効果ですねえ。2579節もの術式で強引に実現したにしても、それは身体がズタズタになるはずですよ。むしろ話を聞いて、よく生きていたものだと思います」


 俺が意識を取り戻してから5日。

 とりあえず身体を起こす事はできるようになり、食事もできるくらいには回復したので、俺は奇異の魔術師(トリックスター)老練の戦鬼(オールドウォーデン)からの聴取を受けていた。

 身体の痛みが全然抜けず、歩き回るにはもう数日はかかりそうだ。

 身の回りの世話はカナエが甲斐甲斐しく焼いてくれたので、何だかんだで順調に回復している。

 主治医代わりの奇異の魔術師曰く、回復は予想していたよりも早いらしいので、経過は良好らしい。


「儂は魔術方面に明るくないのじゃが……それほどの事をしたのかのう?」


 どうやら老練の戦鬼は根っからの戦士タイプのようで、魔術はサッパリとの事。

 まあ、わからない方が俺の無茶がバレずに済む。

 奇異の魔術師にはすっかりバレてそうだけども。


「ええ、それはもう、とんでもない事を。というか、彼が初めてでしょうね。思い描いた結果だけを実現する、なんてとんでもない術式を編み出したのは」


「ふむ……やはり儂には魔術絡みの事象はとんとわからぬな。聴取も長くなるであろうし、何か軽食でも用意してこよう。この場は任せるぞ」


 同席していても話が全く理解できん、という事で、老練の戦鬼は俺のいる冒険者ギルドシトラン支部の病室から出て行く。

 一応は今回の件の功労者、という名目で個室を使わせてもらっている。

 他人と同室よりは安心できるし、カナエが宿から荷物類を全部持ってきてくれたので、俺の世話役という名目で今はカナエも一緒に寝泊まりしているのだが、驚く事に、病室代はポトン伯爵が持ってくれているという。

 というのも、あれからS級冒険者の介入によって、事件は一気に収束したのだ。

 どうも、S級2人に王都支部の方から強制捜査権を与えていたようで、状況からグリド商会に強制捜査が入り、伯爵家襲撃や魔物寄せの証拠が出たのでグリド商会は見事に潰れた。

 戦闘力を失った全武器使い(ウェポンマスター)を王都に送り返したり、その後の処理などでS級2人が頑張った結果、3日も経つ頃には事態が収束しており、ポトン伯爵が直接俺の見舞いに来て、手厚いお礼と病室代を出すという話をして帰っていったのが昨日である。

 そこで、俺の体調がだいぶ回復したのを受けて、改めて今回の件の事について話を聞きたい、というおが今の状況なわけで。


「結果だけを実現する術式……興味はありますが、先にこっちの仕事を済ませないといけませんね」


「はは、もう二度と構築できる気がしませんよ、あんな馬鹿みたいな術式。というか、やりたくないです」


「そうでしょうとも。リベルヤ準男爵の膨大な魔力量を以ってしても、生死の境を彷徨ったのですから」


 今回の聴取に当たって、大まかな経緯や動きの流れは既に話しているため、今日は主に俺がどうやって全武器使いを倒したかに焦点が当てられる。

 少なくとも、いくつもの条件や幸運が重なった結果であり、俺の実力はほぼ関係無い。


「まあでも、カナエがいたからこそ、成功したんです。そもそも、敵の前で1時間以上棒立ちで組む術式な時点で、実用は不可能ですし」


「あの男……全武器使いも、実力だけはS級でしたからね。素行はチンピラと変わりありませんでしたが」


 どうやら、奇異の魔術師は全武器使いが嫌いだったらしく、話題に出すだけで顔をしかめている辺りは相当だろう。

 ともあれ、序盤は俺の事を舐め腐っていた全武器使いの攻撃を凌ぐだけで精一杯だった事、後から聞いたのだが、その時同時に出現した大海蛇(シーサーペント)はフィティルの面々が引き受けてくれて、俺の方を手伝ってくるように気を遣ってくれた事を説明し、それから俺とカナエが劣勢に陥り、死ぬくらいならと一か八かの賭けに出た、という経緯を説明していく。

 時折、奇異の魔術師が気になった事を質問し、それに答えつつ、順調に聴取は進む。


「ふむ、聴取としてはこんなものでしょうか。お疲れ様でした」


「いえ、改めて色々とありがとうございます」


 色々と終わった頃合いに、病室の扉が開く。

 そちらへと目線を移せば、老練の戦鬼が両手一杯の屋台料理を買い込んで戻ってきた所だった。

 どう見ても軽食、という量ではないのだが、生憎とうちにはカナエがいる。

 彼女の食事量を考えれば、全員分を込みで軽食といった所だろう。


「すまぬな。色々と回っていたら遅くなってしもうた」


「全くですよ。もう聴取は終わりました」


「む、それはすまぬ。魔術が絡む部分は儂ではてんでわからぬのでな。代わりと言ってはなんじゃが、魔術方面以外の報告書は儂が請け負おう。それで勘弁してくれんか?」


「いいでしょう。面倒が減るのは大歓迎です」


 奇異の魔術師と話しつつも、老練の戦鬼は買ってきた屋台メシをそれぞれに配っていく。

 カナエはすっかり目を輝かせてるなあ。

 無表情だけど。

 何だかんだと一緒にいる時間も増えたから、ある程度彼女の微細な違いがわかるようになってきた。

 ベースは無表情なんだけど、微妙に口の端とか、目元とかに変化がある。

 というか、ベース以外はむしろ感情豊かなくらいだ。

 そして、当然のようにカナエの屋台メシは大量。

 後でお金出さないとな。


「後で払います。いくらですか?」


「なに、頑張った後輩に食事を奢るくらいはさせてくれぬか? 儂のささやかな楽しみなんじゃ」


「……ありがとうざいます。ここ数日ずっとで申し訳ないです」


 椅子に腰を降ろし、好好爺然とした笑みを浮かべる老練の戦鬼からは、絶対に奢るという確固たる意志を感じたので、とりあえず頭は最大限下げておく。

 なぜか、ここ数日は何かにつけてご飯を奢ってくれたり、お見舞いと称して色々な物をくれたりと、老練の戦鬼はまるで孫を溺愛するような感じでべったりなのだ。


「いい加減、そのだらしない顔を引き締めたらどうですか? まるで初孫ができたお爺ちゃんのようですよ」


「そうさな。そんな気分じゃよ。老い先短い儂の唯一の楽しみじゃ」


 ご機嫌に笑う老練の戦鬼だったが、奇異の魔術師の発言は、褒めたりしているんじゃなくて嫌味ですよこれ。

 横から口を挟むのは、とてもじゃないけど無理だが、心の中ではツッコませてくれ。


「……爺馬鹿とでも言って差し上げましょうか?」


「はっはっは、馬鹿で結構じゃ」


 あらまあ、この人無敵。

 嫌味じゃ効かないからってダイレクトアタックしてきた、奇異の魔術師の言葉を真正面から跳ね返した。

 ちなみに、言うだけ無駄だと判断した奇異の魔術師の方は、黙って屋台メシを食べ始める。

 まあそうだわな。

 言って無駄ならこれ以上どうにもならないもんな。


「そういえば、全武器使いはどうなるんですか?」


 ありがたく屋台メシを頂きつつ、俺は気になった事を聞いてみた。

 先日、王都の方に移送されていったのは知ってるけど、その後は知らない。


「あやつであれば、財産の全てを没収した上で、冒険者ギルドから追放じゃな。国側の詳しい沙汰は知らぬが、上手くグリド商会に罪の殆どを着せて、死罪にはならずとも王都からも追放される予定とは聞いておる」


 両腕を失った上で、財産全部没収されて、王都から放り出されるとな。

 そりゃあ野垂れ死に待ったなしだ。

 ただなあ、ああいう手合いの人間って、変な逆恨みとかありそうだから、死んだのが確認できないの怖いんだよなあ。

 下手したら失った両腕を義手とかで補った上で、復讐とかしてきそう。

 実力だけはS級冒険者だから、そうなると今の俺の手には負えない。

 カナエやシャルロットを危険に晒す事にもなりかねないから、確実に死んでもらった方が安心できるんだけど。


「なに、しばらくはギルドからお主を含めて身辺に護衛を付けるようじゃし、心配いらんじゃろ。今回の件はギルドでも重く見ておるのでな」


「そうだといいですが」


 どこか言い知れぬ不安を感じるものの、今は俺ができる事も無い。

 万が一、俺の予測が当たった時に、仲間を守れるよう、もっと実力を付けないと。

 身体を回復させたら、もっと鍛錬を増やすか。

 幸い、カナエという相手がいるし、練習相手には事欠かないだろう。

 そんな事を考えながら、4人で語らいながら屋台メシを食したのだった。

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― 新着の感想 ―
ウェポンマスター、伯爵家に対して襲撃した殺人鬼なのに王国の処罰が処刑じゃなくて追放ってどういう事だ? これが冒険者同士のいざこざなら王国の対応が追放なのは納得だけど。 伯爵家を皆殺しにしようとした(王…
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