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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり2人目⑪

「今日はどこの調査に行くかな……」


 港町シトランの調査に入って3日目の朝。

 朝食を終え、次は何の調査をするべきか、宿の部屋で考えていた。

 というのも、昨日はカナエが大暴れしたので、精神的にちょっと疲れて調査を打ち切ったのである。

 とはいえ、他の冒険者もいる手前、ただ宿でサボってるのも体裁が良くなかったので、聞き込みという名の屋台巡りで暴れ倒したカナエを労う会になっていたのだが。

 当のカナエは、いつも通りの無表情ながらご機嫌そうに見える(当社比)感じだったので、良かったかなと思う。

 量こそ食べるものの、屋台メシとかの安上がりなものでも喜んでくれるから、そういう点では財布に配慮してくれている感じがする(なお、財布には優しくない模様)。

 そんな益体も無い事を考えていたら、部屋の扉をノックする音が。


「開いてますよ」


「よう、邪魔するぜ」


 部屋にやってきたのはカインさんだ。

 恐らく、昨日の夜にグリド商会に調査に行くと言っていたので、その報告だろう。


「さっそくだが、軽く探った感じだと結構グレーな感じはするな。深入りはしてねえからこれといった証拠は無いが、キナ臭い感じだ」


「その辺は勘のようなものですか?」


「そうだな。感覚による部分が大きいから、具体的にどうこうとは言えねえ。ただ、深く探ってみる価値はありそう、ってのが俺の見解だ」


 なるほど。

 その辺りは斥候とかそういう方面に長けている人ならではの視点だな。

 俺は隠密できるように見せかけて、魔術でゴリ押してるだけだし。


「わかりました。俺の方でも少しグリド商会に探りを入れてみます」


「怪しまれないか?」


 暗に余計な事をされて警戒が上がるのは面倒だ、と言われるも、そこについては事前情報でほぼ問題なく誤魔化せると踏んでいる。

 あんまり乗り気じゃなかった貴族としての立場が、こんなタイミングで活きるとは、人生よくわからないものだ。


「ポトン伯爵からの話を聞いた限り、融資による資金を必要としているようですし、俺が将来的に領地貴族になったら繋がりを持ちたい、という切り口でいけば怪しまれはしないでしょう。こういう時に貴族の立場を使うとは思ってもいませんでしたけどね」


「なるほどな。変に踏み込んだ話さえしなけりゃ、悪くねえ切り口だ。匙加減さえ間違えなければ、情報を引き出せる可能性もある」


「その辺りに関しては俺に任せてもらうしかないですが、大丈夫そうですか?」


「まあ、その辺はハイトの貴族経験を活かしてもらうしかねえわな。どのみち俺じゃどうこうできる領分じゃねえ。ただ、変に情報を欲張る必要は無いって事だけ頭に入れといてくれ。変に警戒されるとこっちがやりにくくなる」


「わかりました。肝に銘じておきます」


 一通り今後の話をしたところで、話は済んだから、とカインさんは部屋から出ていった。

 どうするか悩んではいたけど、これで方針は決まったな。


「カナエ、行くぞ」


「私、いる?」


 意気揚々とグリド商会に行こう、と思った瞬間に、カナエが同席する必要があるかと問われ、動きを止めてしまう。

 実際、ある種の交渉の場のような話である。

 そんな所でカナエが役に立つかと言われれば、それは暴力で訴えかける場合のみだ。

 そもそも、強硬手段になるような状況になるなら、カインさんが動きにくくなるだけなので、それを回避しなくてはいけない。

 つまり、カナエはただの置物になってしまうという事である。

 話が長引けば退屈だろうし、それで居眠りでもされた方が問題だな。


「……カナエは砂浜の冒険者を手伝ってくれ」


 カナエのパワーがあれば、暴れ海亀(ラゼンタートル)を相手取るのも楽だろうし、安定した盾役にもなれる。

 仮に大物が出てきたとしても、物理が一切通じない、とかでなければそうそう遅れを取るとも思えないし、別行動でも問題ないだろう。


「わかった」


 口数は少ないけど、キチンと自分の役割は理解しているはずだし、俺が付きっきりでなくても大丈夫……だよな?

 一抹の不安は残るものの、カナエほどの戦力を遊ばせておくのも勿体無いだろう。

 一応は地元の冒険者たちでどうにかなっているようだが、魔物相手では何が起こるか基本的にわからない部分もある。

 不安要素を潰しておけるならその方がいいはず。


「わかってるとは思うけど、他の人に迷惑かけないようにな?」


「大丈夫」


 ……不安ではあるが、致し方ない。

 最悪、フィティルの面々辺りがフォローしてくれるだろう。

 希望的観測ではあるが、今回に関しては一緒に行動するメリットが皆無なので、カナエの言う事が全面的に正しいのだ。


「それじゃ、俺はグリド商会に行ってくる。何かあったら無理はするなよ」


 カナエと一緒に宿を出て、街の途中でそれぞれの目的地に向けて別れた。

 まあ、そもそもフィジカルお化けだし、ナンパしてくるような男はいないと思うが……いても返り討ちに遭うだろうな。

 力加減を間違えて相手をミンチにしないかだけが心配ではあるが、そこはカナエの力加減に期待するしかない。

 どうにも不安を拭えない感じはあるものの、いつまでも悩んでいても仕方がないので、気持ちを切り替えてグリド商会へと向かう。

 場所自体は初日に調べてあったので、特別迷う事も無く、目的地へと着く事ができた。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。

 シロであってくれればいいけど、果たしてどうなるやら。

 カナエが問題を起こさないかの一抹の不安と、グリド商会の対応がどうなるかという二つの不安を抱えながら、俺はグリド商会へと向かうのだった。

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