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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり2人目④

「で、ここを操作すると刃が出て、こっちを操作すると杭打ち機構が動く」


「わかった。でも持ち手の位置が使いにくい。弄れる?」


「ったりめーよ。どこにしたいんだ?」


「ここにして」


「それならこの場でやっちまうか。少し待ってくれ」


 カナエの脳筋具合に驚いていたのも束の間、ブライアンさんとカナエが大盾についてあれこれ話していて、気付けばブライアンさんがカナエの要望に合わせた調整を始めていた。

 カナエって極端に口数が少ないだけで、別に人見知りはしないっぽいな。

 ブライアンさんが大盾の調整をする音が響き、5分もしないうちにその調整を終えているのは、さすがにその道のプロ、って感じだ。


「よし、こんなモンでどうだ?」


「これなら使いやすい」


 調整を終えた大盾を持ち直して、あれこれ動かしてから、カナエが頷く。

 どうやら腕の延長線上に大盾の下部――要するに杭打ち機構の射出口を持ってきた形だな。

 あの持ち方だと、モロに腕に重量がかかるんだが、それすら軽々と動かしている辺り、彼女にとってはさしたる重さではないらしい。


「いや、待てよ? それならこういう形はどうだ? 中心の部分を動くようにして、使いたい方の持ち手を握れば臨機応変に使えないか?」


「その方がいい」


「よし、任せろ。その程度の変更ならすぐだ!」


 何やらブライアンさんが新しい案を思い付いたらしく、その場で再び大盾の調整が始まる。

 そこから更に10分程度が経った頃に、作業を終えたブライアンさんがいい仕事をしたぜ、みたいなキリッとした顔で額の汗を拭う。

 調整の終わった大盾をカナエが確認し、問題が無かったのか、無言でサムズアップをした。

 それを見たブライアンさんもサムズアップを返す。

 何だよお前ら仲良しかよ。


「大盾の方はそれでいいとして、そいつの重さがちょうどいいってんなら、武器はアレか」


 カナエの脳筋具合に合わせた武器を見繕うためか、ブライアンさんが再びカウンター奥に入っていく。

 それから彼が再び汗だくになりながら引き摺ってきたのは、とても殺意の高そうな大斧……というよりは大鎚と大斧の間の子、といった形の武器だ。

 斧側の刃は分厚く、刃渡りが相当に大きい。

 およそ80センチくらいはありそうだ。

 その反対側には、これまた大きな鎚の頭部があり、直径50センチはある巨大な打撃部に、肉叩きのような細かい棘のような突起がある。

 斧側は簡単に人間の胴など切断しそうだし、鎚側は簡単に人間がミンチになりそうで、どっちにしろ恐ろしい。


「こいつはどっかのダンジョンで見つかったブツらしいんだが、重すぎて使い手がずっと見つかってねえ。お嬢ちゃんなら、使えるかもと思ってな」


 ブライアンさんから、殺意の高い大斧鎚? を渡されて、カナエは空いている右手でそれを受け取ると、ひょいと持ち上げて見せた。

 しかも、1メートルと少しくらいある柄の石突の部分――要するに一番重量のかかる部分を持って、だ。

 そのまま上下に何度か動かしてみて、彼女は無言で頷く。


―――――――――


重力の大斧鎚グラヴィトンハンマアクス


大斧と大鎚からなる頭部に重力の魔術効果を加えた武器。

斧部分による斬撃と、鎚部分による打撃を使い分けられる。

大斧と大鎚からなる頭部に籠められた重力の魔術により、見た目以上の重さを持つ。

魔力を籠める事により、重力の力を解放する事ができる。

常人に持つ事はできないが、これを十全に扱う事ができるなら、一騎当千の助けとなるだろう。


―――――――――


 これ、見た目以上に重いのか……。

 こんなのを片手で軽々と持てるなんて、さすが、筋力80はダテじゃねえな……。

 カナエの脳筋ぶりに今日何度目かわからない戦慄を覚えつつ、ブライアンさんの方を見てみれば、彼も思いっきり引いた顔をしている。

 まあ、そりゃあな。

 これもまたダメ元で持って来たんだろうけど、カナエがすんなり持ち上げた上に、気に入ったっぽいのがまたダメだったんだろう。

 というか、一般人なら引くわ。


「カナエはそれでいいのか?」


「これがいい」


 心なしか、新しいおもちゃを貰った子供のような雰囲気を、カナエから感じるのは、気のせいだろうか?

 ま、とりあえずメインは揃えたから、次は防具か。


「ブライアンさん。カナエが使えそうな防具で、魔術とか状態異常系に対する防御効果の高いものってあるか? 物理方面は大盾もあるし、あんまり考慮しなくて良さそうだからさ」


「魔術と状態異常に強いものだな。ちょっと在庫を見てみるから時間をくれ」


 そう言って、三度ブライアンさんがカウンター奥に引っ込んでいく。

 今度は少し時間がかかりそうかもしれない。


「カナエ、もし言いにくかったら無理には聞かないけどさ、なんで奴隷になったんだ?」


 すぐに答えこそしなかったものの、カナエが考えるような素振りをしているので、彼女が話し始めるのを黙って待っていると、それから少しして、カナエが俺の目を真っ直ぐに見た。


「両親が流行り病で死んで、生きるために自分を売った。わたしの食事量を考えると自分で稼ぐよりも、奴隷になった方が、奴隷には最低限の健康の維持が必要っていう法律で守られると思ったから」


 おお、今日で一番カナエが長く喋ったな。

 とはいえ、話としてはありふれた話ではある。

 両親が他界して、親戚で面倒を見切れないからという事で、奴隷として売られるのはよくある話だ。

 それを奴隷に関する法律で自分が生きるために、自ら奴隷になったというのは驚きではあるが。

 とはいえ、カナエの能力を見る限りでは、冒険者として充分に稼ぎを得られたような気もするな。

 まあ、彼女が選んだ道ではあるし、そのおかげでカナエという人材を俺が見つける事ができたんだ。

 これもまた巡り合わせというものだろう。


「そうか。俺の所でやっていけそうか?」


「ご飯がいっぱい食べれるなら大丈夫。そこまで味には拘らないから」


 良くも悪くも、というか、カナエにとって大事なのは給料や待遇云々よりも、ご飯をしっかり食べられる事らしい。

 しかも質より量というのがまたそれっぽいな。

 ともあれ、俺に苦手意識があるとか、そういう事は無さそうなので、とりあえずは心配しなくて良さそうか。


「待たせたな。とりあえずハイトの要望に応えられそうなものと、俺が見繕った物を持ってきたから見てくれ」


 カナエの身の上話をしているうちに、ブライアンさんがカナエ向けの防具を色々と持ってきてくれたようだ。

 見やすいようにカウンターにあれこれと並べてくれていたので、鑑定をかけつつカナエとも相談し、最終的に選んだのは以下の装備である。


―――――――――


戦神の篭手


戦神と呼ばれた武人の使用した篭手。

筋力を大きく高める効果がある。

力さえあれば、道理も無理もこじ開けられる。

戦神と呼ばれた武人はそう嘯き、己の命と引き換えに、大国の侵攻を完膚無きまでに粉砕した。


―――――――――


不倒のサバトン


戦場において、守護神として名を馳せ、一度も倒れた事の無い武人が用いた魔術金属のブーツ。

相当な重量があるが、その頑丈さは折り紙付きで、仮に金属の棘を踏んだとしても傷一つ付かない。

また、魔術による拘束や、悪路の妨害を弾く事ができる。

何をしても倒れないのが、敵の心を折るのに一番効果的だ。

守護神と称された武人は、引退後にそう語った。


―――――――――


古竜鱗皮(こりゅうりんひ)の胸当て


魔術金属と古竜の鱗皮を溶かし合わせた胸当て。

物理にも強いが、特に属性や魔術に耐性を持つ。

全身鎧のように広い範囲を守る事はできないが、胸元や腹部といった急所を守るのには充分。

永い時を生きた古竜の鱗皮は、半ば石や鉱物のようになっており、特に魔術や属性を強く弾く特性がある。

それを魔術金属に溶かし合わせる事により、その効果を高める事に成功した。



―――――――――


竜心石の首飾り


竜の骨と心石から作られた首飾り。

竜の永い寿命を司る心石の力により、装着者の免疫力を飛躍的に上昇させる。

かつての友である竜から、この心石を託された男が作った物とされる。

君がそう望むのなら、僕は君と共に生き永らえよう。

老いた竜と友情を育んだ男は、生涯をかけてその亡骸を守ったという。


―――――――――


妖精の髪飾り


妖精の加護が籠められた髪飾り。

籠められた加護により、魔術耐性を大きく高める。

とある国の姫に妖精が贈ったものとされる。

時折魔術を弾き返す事があるが、その効果は妖精のように気まぐれである。

あるいは、悪戯好きな妖精の本質が現れているのかもしれない。


―――――――――


 防具については、最初はフルプレートなどの頑丈な装備をする事にしていたものの、サイズが合わない(特に胸と尻ふともも部分)ものだったり、カナエ本人が可動域を狭める防具は嫌だと主張したために、篭手とサバトンと胸当てとなった。

 その他に彼女の防御面で、魔術や状態異常が懸念点だったので、それらを高める装飾品を見繕ってもらったのだが、その分お値段は高く付いたのが問題である。

 とはいえ、当のカナエ自身は金貨20枚で大幅に予算が浮いていたので、その分を回したと思えば致命傷というわけではない。

 致命傷ではなくとも、重傷ではあるのだが(金貨800枚以上の貯蓄⇒金貨320枚と少し)。

 これ、帰ったらシャルロットにめっちゃ怒られそうだなあ……。

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