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ワケあり2人目③

ワケあり3人目①のカナエの能力値に入力間違いがあったので修正しています。

誤)筋力:60

正)筋力:80

です。

修正前に読んだ方はこちらの数値に脳内置換しておいて下さい。

「さて、それじゃあ今日から君の主人になるハイト・リベルヤだ。君の名前を教えてくれるかな?」


 街の中を歩きながら、鬼人族の女の子に自己紹介を行う。

 彼女は感情の籠もらない目で、真っ直ぐに俺を見ている。

 既に鑑定で名前どころか身長やら体重やらまで知ってるんだけど、一応通過儀礼は必要かなと思う。


「カナエ・サーノウ。よろしく」


 抑揚の薄い、フラットな感じの声で短く自己紹介をしたっきり、鬼人族の女の子――もとい、カナエは黙ってしまった。

 どうやら、元々口数が少ないタイプのようだ。


「カナエ、君には俺と一緒に冒険者として活動してもらうけど、冒険者資格は?」


「ない」


「それじゃあ、登録も必要だな。まずは服装を何とかしようか」


 奴隷の貫頭衣姿なので、このまま長い事連れ歩くのは外見上よろしくない。

 とりあえず、以前にシャルロットと買い物をした服屋へ、彼女用の衣服を揃えに向かう。

 店内にはシャルロットを担当してくれた店員さんがいたので、今回もお手伝いしてもらった。

 カナエは動きやすい服装が好みのようで、ミニスカにインナーシャツといったラフな格好だ。

 何組か替えの服と下着も見繕ってもらい、纏めて購入。

 シャルロットの時ほどの値段はしなくて、少しだけホッとしたのは内緒の話である。

 今回も着替える分以外は宿に送ってもらうよう手配済みだ。


「……お腹空いた」


 服装を整えた後、カナエのお腹からすごい腹の音が鳴り響く。

 外にいてここまでハッキリ聞こえるほどの音って……。

 とりあえず、先に冒険者登録をしたら腹ごしらえかな。


「カナエの冒険者登録をしたらメシにしよう。それまでは悪いけど我慢してくれ」


 少し早足で冒険者ギルドに向かい、すぐに彼女の登録を行う。

 手続き自体はさほど時間もかからず、パーティー申請も滞りなく受理された。

 初回講習は俺の方で教えるという事で免除してもらい、その足でギルド食堂へ。


「待たせたな。好きな物を腹いっぱい食べていいぞ」


「……いいの?」


 好きなだけ食え、と彼女に伝えると、少し遠慮がちに(無表情だが)聞き返してくる。

 まあ、彼女が大食漢なのは鑑定時点で何となくわかっていたので、量があって値段も安い冒険者ギルドの食堂に連れて来たのだ。

 ここならメニューの端から端まで頼んだとて、金貨数枚で済む。




……

………




「ハハ、これは返品されるのも納得だな……」


 カナエが満足するまで食事をさせたら、俺は乾いた笑みしか出なかった。

 ギルド食堂にある大食いチャレンジメニューを彼女が全制覇したおかげで、懐は殆ど傷まなかったが、無事に大食いチャレンジ出禁を言い渡されてしまったのは笑えない。

 ちなみに、大食いチャレンジは大体ステーキ5キロみたいな重たいメニューばかりなのだが、それを10種類全て制覇した上で、ちゃっかりデザートまで完食だ。

 それでいて、食べ方は下品なわけでもないのが凄い。

 一口がかなり大きいが、がっついたりもしないし、食べこぼしたりもしないし、何なら若干の気品すら感じるほどで、それでいて咀嚼スピードがめっちゃ速いという。

 これは相当食費がかかるな。

 この辺りはシャルロットにも相談しないといけないか。

 とはいえ、戦力としては相当なものだし、既に俺の中では彼女を気に入っている部分があるので、手放すのは無しだな。


「久しぶりにお腹いっぱい」


 無表情ではあるものの、満足げにお腹をさするカナエを見て、推定50キロオーバーの食糧が、あの細い身体のどこに収まったのかが不思議でならない。

 よーく顔を見てみれば、僅かに口角が上がって、目尻が下がっているようにも見えなくもないか。

 ともあれ、とりあえずは満足して貰えたようで良かったな。


「満足してくれて良かったよ。これからはなるべく腹いっぱい食べさせるから、心配しなくていいぞ。もっとも、その資金は自分で稼いでもらうけどな」


「頑張る」


 胸の前で両手をグッと握って、頑張るぞというポーズを無表情でやっているのがちょっとシュールだ。

 よーく見れば、表情がごく僅かにキリッとしているように見えなくもないかもしれない。


「それじゃ、次は君の装備を揃えよう」


 ここからはギルドショップのブライアンさんの元へ向かい、彼女の装備を整える。

 とりあえず能力を見た感じだと、大盾と大斧がメインで、防御面は素でも対物理は相当頑丈そうだから、魔術方面とか状態異常の防御を高めるものにしておくべきだろうか。

 

「よう、前のメンテぶりだな……と、連れは?」


「今日からパーティーを組むカナエだ。装備を見繕ってほしい」


 ギルドショップに入ると、ブライアンさんと挨拶を交わしてから、カナエを紹介する。

 彼女は紹介されても、軽く会釈を返すだけだ。

 もちろん、無表情で。


「えらく別嬪さんだが、また随分と個性的なヤツだな」


 ブライアンさんのカナエに対する評価は、まさしくその通りで、顔は人形めいた綺麗さだが、それが却って無表情の恐怖感を煽るのが何とも言えない。

 身長も結構あって、身体は全体的に女性的なフォルムを強調しているが、均整は取れていると思う。

 もしかして、あの食事量は全部胸と尻に行っているのだろうか?

 そう思う程度にはボンキュボンである。

 とはいえ、キチンと筋肉自体はついていて、彼女が戦士として一流なのはよく見ればわかるのがまた、絶妙と言える所だ。

 これが全身筋肉でバキバキのボディビルダーみたいな感じだったら、そもそも男でええやん、ってなるし、しっかりと女性らしい身体を保った上で、筋力を確保してるのは最高に人体の神秘だと思う。


「で、武器は何が欲しい?」


「大盾と大斧」


 ブライアンさんの問いかけに、カナエは言葉少なに答えると、きょろきょろと店内を見回している。

 恐らくは、自分の装備になるであろう物を探しているのだろう。


「外に出してるヤツは大した品じゃねえ。ハイトのパーティーメンバーだってんなら、もっとちゃんとしたの見せてやるから、ちょっと待ってろ」


 一度、頭のてっぺんから爪先まで、カナエの姿を確認してから、ブライアンさんは一度奥の方に引っ込んでいく。

 恐らくは、また裏から何かしらの装備を持って来るのだろう。


「ふんぬう……まずは、こいつだ」


 ゴリゴリと音を立てながら、彼が頑張ってカウンター奥から引き摺ってきたのは、以前見たパイルバンカー仕込みの大盾だ。

 前に見た時よりも見た目がゴツくなっているような?


「嬢ちゃん、持てるか?」


 汗だくになりながら、カウンターに大盾を立て掛けて、ブライアンさんが汗を拭う。

 前はもう少し楽そうに引き摺っていたから、あれから更に重量を増したっぽい。

 ただでさえ激重だったというのに、さらに重くしてどうするんだよ。


「ちょうどいい」


 しかし、カナエの脳筋具合は俺の予想を越えて、あの超重量の大盾を片手で軽々と持ち上げた。

 彼女は持ち手を持って、大盾を構えてみたりしているが、なかなかサマになっている。

 てか、あの重量を片手で持ち上げるって……握力だけで人間の頭蓋骨とか粉砕できるんじゃなかろうか。


「はは、マジか。こいつを片手で軽々と……」


 どうやら、ダメ元で持ってきたみたいだが、それを軽々と持ち上げて見せたカナエを見て、ブライアンさんが軽く引いている。

 自分で作っておいて、それを使える人間が現れたら引くってどうなん?

 そう思わなくもないが、カナエの筋力が常軌を逸しているのは見れば一目瞭然だ。


「どうせ持てないヤツが多いなら、と思って新しい機構や対魔術防御コーティングも追加したんだが……まさか普通に使えるヤツが現れるとは思わなかったぜ」


 結局、軽量化は色々と問題があって無理だったから、最終的にピーキーにする方向に舵を切ったという事か。

 いや、そもそもがピーキーすぎる重量だったと思うが、それをわかって更にピーキーにするとか、もはや人に使わせる気無かっただろ。


―――――――――


試作型機甲大盾


実験的な機構を組み込み、盾でありながら矛にもなるという変わった大盾。

大盾の裏側に刻まれた陣により、受けた衝撃を溜め込み、それを利用した超威力の杭打ち機構(パイルバンカー)を解放するのが持ち味。

また、盾側面には刃が仕込まれており、シールドバッシュによる打撃だけではなく、斬撃も行える。

守るための盾で攻撃してはいけないと誰が定めた?

制作者は大盾のみを用いた場合を想定しているが、仮に片手でこれを十全に操れる者がいるならば、それは一握りの超越者のみだろう。


―――――――――


 ほら、鑑定も片手で使えるヤツはイカれてるって言ってるし。

 どうしてこんな化物作っちゃったの。

 まあ、おかげでカナエの大盾の目途がついたからいいけどさ。

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