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ワケあり2人目①

「……いい加減、ソロだとキツくなってきたなあ」


 あれから1ヶ月、法衣貴族としての叙勲の無事に終わり、新たな苗字、リベルヤを授けられた。

 それ以外には大きな変化も無く、変わらずに冒険者稼業に精を出していたものの、騙し騙しでソロ活動を続けていくのにも限界が見え始めてきている。

 俺とシャルロットの二人暮らしを維持しながらも、ある程度貯金も溜められたが、それでもやっぱり、実入りのいい依頼を考えると、いい加減にパーティーメンバーを増やさないとだなと思う。

 一応、ギルドでは勧誘の声がかかる事もあったりはするのだが、何かしら下心を抱えていそうだったりとか、パーティーとしての相性で見るとイマイチだったりとかで、結局の所はパーティーを組むに至っていない。

 自分から組みたいと思う相手もいないので、結局はそのまま頑張ってきたのだが、色々経験を積んだからか、ギルドから回される依頼も難しいものが増えてきている。

 また奴隷から探すか?

 とはいえ、シャルロットの件を考えると、また何かしらの事件性のある奴隷を見つける可能性が出てくるのではないかという気がするのが怖い所だ。


「すみません、私は荒事方面ではお役に立てなくて」


「いや、それは問題ないよ。色々と管理してもらって助かってるし」


 この1ヶ月、シャルロットの事務管理能力には、かなり助けられた。

 消耗品の状況や、スケジュールの調整など、彼女のおかげで行動を最適化できたおかげで、貯蓄スピードが尋常でなく早まっている。

 何だかんだで彼女の買い物に使った金額をわずか1ヶ月で回収できているどころか、貯蓄額が金貨800枚を越え、かなりのハイペースで稼げているのだ。

 彼女のサポートなくしてここまでの稼ぎは得られていないので、むしろお釣りが来ているくらい。


「とはいえ、ギルドで声かけてくる連中は下心とかあるヤツ多いし、何だかんだで困ってはいるんだよなあ」


「そうなると、やはり戦える奴隷を購入するのが手っ取り早いでしょうね。資金も潤沢ですし、そこまで高価な奴隷を買うのでなければ、ここで投資するのは良いタイミングかと」


 シャルロットからも、奴隷購入のゴーサインが出たので、これで大手を振ってお金を使えるわけだが、それはそれで若干気になる事もある。


「いいのか? ここで消費が増えると拠点を変えるのが遅くなるぞ」


 今も燕の休息地の一部屋で2人暮らしなわけだが、雑貨などの物が増えた関係で若干手狭になった感が拭えない。

 もう少し貯蓄ができたら、活動拠点を移してもう少し広い場所にしようという話も出ていたのだ。


「私は今の状態でも不満はありませんし、これから人が増えるというのなら、そもそも移動予定だった拠点も変更になりますしね。一時的に3人暮らしになるのはかなり部屋が手狭になってはしまいますが、今の収入ペースであれば、そこまでかからずに拠点移動が可能になるでしょう」


「シャルロットがいいなら、俺はそれでいいんだけど……」


「ただ、そうですね……一応奴隷購入に当てる予算は金貨200枚までにしましょうか。装備を揃えたりする事を考えると、あまり使いすぎるのも良くありませんし。それで準備に金貨100枚から200枚とすれば、そこまで貯蓄も減らさずに済みます。もっとも、最終的にはハイトさんの判断にお任せしますので、私の話は目安程度に考えて頂ければと」


「そうだな……それじゃ、ちょっと候補を探してみるよ」


「ええ、行ってらっしゃいませ」


 色々とシャルロットと話し合いをして、奴隷を探すという事で合意を得たので、俺は街へと繰り出した。

 前回の奴隷商店はかなり劣悪な場所だったので、さすがにやめておこうとは思うが、どの辺りのグレードの店を探すべきだろうか。

 高級店で探すような金銭的余裕も無いし、それなりな場所がいいかね。


「また返品されたのかお前は! これでもう5回目だぞ!」


 どこの奴隷商店がいいか、と考えながら歩いてきた所、男性の怒声が耳に入ってきた。

 相当に大きな声なので、どこにいるかが丸わかりだ。

 案の定、声の発生源と思われる所は、人だかりができている。

 別に野次馬根性があるわけでもないのだが、情報は大事だとクソ親父の件で学んだので、一応状況を覗いてみる事にして、俺は人だかりの中へと入っていく。


「能力があるというから高値で買ってやったのに、売れないのでは意味が無いではないか!」


 人だかりの中を進み、先頭方面に顔を出すと、髭面の中年男性と、ハイティーンくらいの女の子が騒ぎの中心にいた。

 女の子の首には見た覚えのある首輪があったので、彼女が奴隷である事はすぐにわかったが、5回も返品されている、というのは引っかかる。

 すかさず、女の子の方を鑑定にかけた。


―――――――――


カナエ・サーノウ

17歳

種族:鬼人(きじん)

身長:168センチ

体重:64キロ

状態:健康

生命力:45

精神力:10

持久力:30

体力:25

筋力:80

技術:8

信念:2

魔力:2

神秘:2

運:2


特殊技能

・武器熟練:大斧・大盾

・代償大食

・筋力強化

・根性

・物理耐性

・高速再生

―――――――――


 なんというか、鑑定の結果が清々しいまでの脳筋だなあ。

 代償大食、という項目が気になるが、能力と年齢の釣り合わなさが、恐らくは代償と引き換えに得ているものなのだろう。

 これだけの高ステータスはそうそう見ないし、少なくとも俺が知る最高ステータスがギルバート氏なので、ステータス面だけ見れば、完全に彼を越えている。

 ちょっとだけ、話を聞いてみるのもアリかもな。


「少しは反省しているのか! この穀潰しが!」


 怒り心頭といった様子の髭面の男が、女の子の顔面を殴りつけた。

 思わず、声を上げそうになったものの、女の子は特に気にしている風でもなく、むしろ殴りかかった男の方が目を白黒させている。

 これは完全に物理耐性でダメージが通ってないヤツだな。


「――っ、こっちに来い! イチから躾直してやる!」


 髭面の男が、女の子を連れて去っていく。

 奴隷であるからなのか、女の子は特に抵抗をするでもなく、されるがままだ。

 俺はそのまま二人について行き、店を特定する事にした。

 10分くらい歩いた所で貧民街の方に入り、ちょうど貧民街の入り口辺りに店構えがある。

 場所から見るに、シャルロットがいた奴隷商店よりはマシだろうが、あまりいい店ではなさそうに見えるな。

 とはいえ、中を見るだけならいいだろう。

 髭面の男達が中に入ってから少し待って、俺は店の扉を空けた。


「いらっしゃいませ!」


 中に入った所で、先ほどの髭面の男が笑顔を浮かべて出迎えてくれる。

 どうやら、あの男が店主だったらしい。


「ここはどんな奴隷を扱っているんですか?」


「戦闘用奴隷から愛玩奴隷まで、幅広く取り揃えていますよ」


 幸い、俺を見て子供と侮る事も無さそうなので、話を聞いてみれば、品ぞろえは色々とあるらしい。

 とりあえずはどんな奴隷がいるかだけでも見せてもらうか。


「色々と購入予定なので、一人ずつ見せてもらっても?」


「構いませんとも! ささ、こちらへどうぞ」


 俺が色々買う、という言葉を出した瞬間に、店主は上機嫌そうに俺を案内し始めた。

 これはあれか、子供だから金づるとでも思われてるのかもしれないな。

 まあ、こちらを舐めているのなら、それはそれでやりようはある。

 まずはお手並み拝見といこうか。

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