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ワケあり1人目⑲

「お客様、こちらにいらしゃいましたか」


 俺がシャルロットに合いそうな服を見ていると、店員さんがこちらに小走りでやってくる。

 そういえば、もう結構時間経ってたかもな。


「彼女さんが服を選んでほしいそうですよ」


「わかりました」


 店員さんの案内に従い、試着室の近くへと移動していく。

 というか、下着売り場から移動してたの気付かなかったな。

 一応、ちょくちょく様子見はしてたんだけど。


「ちなみに、お客様はどんなタイプがお好みですか? ご希望があれば、こちらでもいくつかオススメを見繕いますよ?」


 声を潜め、耳打ちするように声をかけてきた店員さんはいい笑顔だ。

 これは間違いなく、おもちゃにされてるな。

 シャルロットの方も、色々と弄られてるんだろうなあ。

 ともあれ、別にファッションに詳しいわけでもないし、何なら俺自身は変にダサくならなければ何でもいいスタイルだし、本職の意見を聞くのは間違いじゃない気がする。

 この笑顔を見てると、ちょっとだけ意見を求めるのが嫌な気持ちもあるけど。


「そうですね、それなら落ち着いた印象になるような組み合わせを見繕っていただければと。あまり派手な服装は好まなそうなので」


「かしこまりました。それでは少々お待ちください」


 そう言って、店員さんが試着室に入っていく。

 ああして中に入っていくという事は、候補に入る服は事前に中に運び込んであるって事か。

 あとは中でシャルロットが着替えて、それを俺に見せて選ぶ、って形式なんだろう。

 ある意味、ファッションショーだな。


「それでは一着目をご覧ください」


 店員さの声と共に、試着室の扉が開く。

 そこには、ゆったりとした白のロングスカートと白いシャツ、それに合わせた白い靴のザ・清楚という感じのコーディネーション。

 着ているシャルロット自身の素材の良さも相まって、これは素晴らしい。

 清楚な貴族令嬢、といった感じで彼女のイメージにぴったりである。


「ど、どうでしょうか?」


 少し恥じらいながらも、くるりと一回転して、その装いを余す所なく観賞させてくれたのは、素晴らしいサービスだ。

 恐らくは店員さんの入れ知恵なのだろうけど。


「よく似合ってる。シャルロットのイメージにピッタリだ」


「あ、ありがとうございます……」


 忌憚のない意見で彼女を褒めてみれば、恥ずかしそうに頬を染めつつ、小さくなろうとしているのが微笑ましい。

 やはり恥じらいというのは、女性を可愛く見せるんだなと思う。


「では、次にいきましょうか」


 シャルロットと店員さんが再び試着室に消え、少ししてからまた出てくる。

 今度の服装は、先ほどと違い、ぴっちりとした、タイトな服装だ。

 タイトスカートタイプのスーツ姿が一番近いだろうか。

 黒いタイトスカートと上着の中にある、白いシャツのコントラストがよく映えている。

 ワンポイントは胸元のスカーフだろう。

 全体的に引き締まった印象だが、スカーフが適度な柔らかさを出しているように感じるな。

 先ほどとは全く方向性の違うコーディネーションだが、これはこれでいいものだ。

 そしてタイトな服装から、シャルロットのスタイルの良さが際立つ。

 今までが粗末な貫頭衣とブカブカの俺の予備服だったから、こうして見ると、彼女が異性だという事を強く意識してしまう。

 まだ14だというのに、その胸部装甲はなかなかの存在感を示しており、しっかりとしたサイズ感(恐らくDくらい?)だ。

 そこからお腹周りがキュッと細くなり、その後は腰からお尻にかけてのラインが見事な対比を描く。

 うん、これすっげえ美少女だわ。

 あと数年したら、もっと色気がすごい事になりそうだ。


「あの、これは私が選んでみたのですが、どうでしょうか……?」


 おずおず、といった感じでシャルロットが問いかけてくるが、これを彼女が選んだというのは少し意外だな。


「大人っぽくてこれも似合ってると思う。シャルロットがそれを選んだっていうのはちょっと意外だけどな」


 こういう身体のラインが出るタイプの服装って、あんまり好きじゃなさそうって思ってた。

 どちらかというと逆のイメージだったわ。

 露出は全然控えめなんだけど、如実に身体のラインが出てるから、相当スタイルが良くないと着こなせないタイプの服だ。

 身長も164センチと結構あるし、彼女くらいの身長が色々と幅広い服装が着こなせるんだろう。


「あ、良かったです。ちょっとだけ冒険した服装ではありましたので……」


 ホッとしたような感じで、シャルロットが息を吐く。

 なるほど、冒険した服装だったのか。

 やっぱりベースは落ち着いた服装が好みっぽいな。




……

………




「それではお会計、金貨130枚でございます」


 下着や服、靴などを一式で買い揃えたので、かなりの出費となってしまった。

 とはいえ、色々とシャルロットに似合う服を買えたし、彼女も喜んでいたので悔いはない。

 ちなみに、金額を聞かれると色々と遠慮するだろうと思ったので、シャルロットが買った服に着替え直している間に、こっそりとお会計を済ませている。

 元々着ていた俺の予備服と他の買った服たちは、宿の方に配達してもらう事にした。

 さすがに持ち歩くとなると量が半端じゃないからな。

 よくある異世界モノで容量無限鞄とかあったらいいのに、と思った瞬間だ。


「はい、確かに頂きました。お買い上げありがとうございます」


 支払いを確認した店員さんは、ほくほく顔である。

 まあ、そらそうよな。

 ここまで大口の一気買いなんてそうそう見ないだろうし。


「お待たせしました」


 着替えて来たシャルロットは、一番最初の白一色清楚コーディネートだ。

 追加で小さな肩掛け鞄を持っているのもよく似合っている。

 これで少なくとも服装で嫌な思いをする事は無いだろう。


「それじゃ、次は雑貨類だな」


 500枚以上あった金貨が一気に減って、軽くなった財布の重量感に、若干気落ちしてしまうのは、俺が小市民すぎるせいだと思いたい。

 とはいえ、そんな気持ちが表に出ては、絶対にシャルロットに気を遣わせてしまう。

 それだけは回避すべく、努めて元気に彼女を先導していく。

 移動中もあれこれと話しながら、二人で楽しい時間を過ごす。

 庶民的デートのような感じになってしまっているが、シャルロットは嫌そうな素振りなどなく、むしろ楽しそうな笑顔でいてくれるのがありがたい。

 箱入りだったって言ってたから、もしかするとこういう大した事ないお出かけなんかも、彼女にとっては新鮮なのかもな。

 最初の服の購入こそ手間取ったものの、その他の雑貨に関しては二人で楽しく選ぶ事ができたし、合間に屋台メシで小腹を満たしたりしつつ、何だかんだで夜に差しかかるくらいの時間までお出かけを楽しんだ。

 なお、本日の出費は金貨200枚を越えたので、またしばらくは冒険者業に精を出す事になりそうだ。

 まあ、シャルロットの笑顔を見られるのなら、頑張る気持ちも湧いてくる。

 娘のいる父親とか、いい嫁さんのいる男はきっと、こんな気持ちなのだろう。

今回でワケあり1人目は終了です。

次回から、ワケあり2人目となりますので、次の新たな登場人物もお楽しみに!

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