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ワケあり1人目⑱

今回は丸々シャルロット視点です。

次回からハイト視点に戻ります。

「まだ14歳でこれとは……なんというポテンシャルでしょう」


 私が茫然としている間に、色々と服を集めてきた店員さんにあれこれ着せ替えされながら、下着の着け方から服の組み合わせのパターンまで、あれこれと話を伺っているうちに、とんでもないデザインの下着が出てきて赤面したり、あまりにも体型が露骨に出る服に驚いたりと、濃厚な時間を過ごすうちに、店員さんが私の年齢を聞いて驚愕していました。


「ええと……褒められている、という事でいいのでしょうか?」


 私がいまいち状況を呑み込めないでいるのを見て、店員さんが目を見開きましたね。

 ちょっと怖いです。


「それはもう、褒めに褒めていますとも。まだまだ発展途上だというのに、もはや大人顔負けの色気をお持ちですよ。あともう数年もすれば、よほど特殊な性癖を持っている男性でない限りは、その殆どを虜にできるでしょう」


 なかなかに過分な評価をされている気もしますが……これはそもそも、商売上のお世辞というものではないでしょうか?

 別に自分を卑下するわけではありませんが、あまり自信過剰なのもどうかと思いますし。


「高すぎず低すぎない絶妙な身長に長い脚そしてまだ発展途上なのにしっかりと存在感のあるお胸とお尻にメリハリのあるボディラインそして長くて綺麗な金髪とぷるツヤな白いお肌に人形のように整ったお顔これでしっかりと身だしなみを整えれば大抵の男性はイチコロ間違いなしですよむしろ反応しない男は不能ですよ!」


 妙な気迫さえ感じる早口で、勢いよく店員にまくしたてられててしまい、私はただ黙って頷くしかありません。

 きっとこれは、変に言葉を返すと面倒になると、私の経験からくる勘が言っています。

 

「失礼、少々取り乱しました」


 コホン、と咳払いをしながら呼吸を整える店員さん。

 密室にこの方と二人でいるのは、若干貞操の危機を覚えますね……。


「そういうわけですから、普通のもの以外にも勝負下着を用意しておきましょう」


「勝負、下着……ですか?」


 あまり耳慣れない言葉ですが、何となく意味はわかります。

 勝負……要するに、大事な時に身に付ける下着、という事でしょう。


「まずはこの3つからデザインを選びましょうか」


 そう言って、店員さんが提示してきた3つの同色下着上下セット。

 そのどれもが、身に着けるには相当な勇気が必要なデザインでした。

 1つ目はそもそも大事な部分が丸出しになってしまうとんでもないデザインで、これを着けるくらいなら最初から着けない方がマシですね。

 2つ目は、しっかりと大事な部分は隠れますが、それ以外はレースでスケスケで、本当に身に着ける意味があるのか疑わしいです。

 3つ目は極限まで布面積の少ない下着で、これも1つ目と同じで着けない方がマシまでありますね。


「すみせんが、この3つは私にはハードルが高いです……」


「彼氏さんと結婚したいんですよね? ここで諦められるほど弱い想いなんですか?」


 やんわりとお断りしようと思ったら、挑発とも取れる問いかけをされてしまいました。

 そう言われてしまうと、3つのうちからどれかを選ばないといけない気がしますね。

 私がこの3つを身に着けたとして、ハイトさんが一番気に入りそうなのは……。


「……このデザインがいいと思います」


 私が選んだのは、2つ目のレースタイプのものでした。

 色々と理由はあるのですが、まず露出が一番マシであること。

 そして何よりも、ハイトさんが好みそうなもの、と考えた時に、1つ目と3つ目は直接的すぎるというか、下品すぎるというか。

 恐らくではあるんですが、ハイトさんの性格上、直接性的に訴えるよりも、間接的に訴えた方が効く気がするんですよね。

 以上の観点から選んだのですが、店員さんは満足げに頷いています。


「それでは、色を選んでみましょうか」


 そう言って次にお出ししてきたのは、同じスケスケデザインの上下セット下着の色違いたち。

 黒、白、赤、青、紫、といった強い色ばかりでこれも少し気後れしてしまいますが、何となくこれも選び方のポイントがわかる気がします。

 これはないな、という色は早々に除けて、最終選考に残ったのは黒、赤、紫の3色。

 ここから選ぶのは少し迷いますね。


「……ちなみに伺いますが、店員さんが選ぶなら、この3色からどれを選びますか?」


「そうですね。確かに迷う所ではありますが、私なら黒が断然おすすめです」


「その心は?」


 聞きたいようで、聞きたくないですが、どうにも私一人では決めきれそうにないので、ここはプロの意見を聞くべきでしょう。


「お客様なら、この3色どれでも違和感なく似合うと思います。ですが、色のイメージからすると消去法で黒になりますね。赤は攻撃性の強く出る色ですので、お客様の雰囲気には合いません。紫はより経験のある、大人の色と言えますので、よく娼婦の方が好んで身に着ける事が多い色です。このデザインを選んだという事は、あまり直接的な表現をしたくない、あるいはお相手が直接的な表現を好まないのではないかと思いますので、こちらも除外かなと思いました。そうなると、消去法で黒が残るわけですが、黒は高級感を与える効果が少なからずありますので、大人びて見えますが、紫のようなより直接的な表現になりにくいです。ですので、黒がおすすめになるわけですね」


 理路整然と色についてのお話をされ、店員さんの説明がストンと腑に落ちました。

 確かに言われてみれば、特に赤は私に合いそうもありません。

 うっすらとですが、私も自分で黒がいいのではないか、と思っていましたので、自分の判断の裏付けになります。


「それでは黒でお願いします」


「ありがとうございます。それでは、普段着用の下着を選んだら、彼氏さんに服を選んでもらいましょう。こちらでもいくつか組み合わせやすいものを選ばせて頂きますが、やはりお相手の好みを知っておきたいですよね?」


 そう言って微笑む店員さんの顔が、悪魔の囁きのようにも思えてしまいますが、その道のプロであり、この場で頼りになるお方なのは間違いありません。

 ハイトさんに服を選んでいただくのはかなり緊張しますが……確かにチャンスでもあります。

 彼の好みを知る事ができれば、より効果的なアプローチが望めますし、早く保護対象から異性へと印象を変えていただかなくてはいけません。


「お任せしてもよろしいでしょうか?」


「はい、お任せ下さい! それでは、彼氏さんを捕まえて準備しますね」


 そう言って、店員さんはルンルンで試着室を出て行ってしまいました。

 少しだけ、ただおもちゃにされているのではないかと邪推してしまいますが、お仕事ですし、きっと真摯に向き合ってくれているはず。

 さっきの説明もしっかりしてくれていましたし。

 真面目にお仕事、されていますよね?

 ほんの少しだけ、不安になってきた気がしますね……。

 ですが、ここはまたとないチャンスでもあります。

 この後、ハイトさんに服を選んでもらう所が勝負どころですよ、シャルロット……!

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