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ワケあり0人目④

早速、毎日更新できてなかったでござる……。

ゼンゼロの更新がかなり大規模アプデだったせいで、気付いたら時間溶けてたぜ……。

柳さんは好みのキャラだったので全力確保しました。

あとは餅さえ出れば……。

「待たせたな」


 そう言って、おっさんが戻って来たのは5分経ってからくらいだろうか。

 両手にいくつかの大小様々な箱を持っている辺り、色々と見繕ってくれたらしい。


「ここら辺のは一点モノで、そこそこ値段も張るから直置きはしてない商品だ。この中で気に入った物があれば、好きな物を売ってやる。もちろん、値段はまけないがな」


「わざわざすみません。しかし、なぜ俺みたいな新人にそこまでするんです?」


 単純に俺に便宜を図る理由が気になったので、真正面から聞いてみた。

 新人用セットをオススメしてくる所まではまあ、わからないでもないが。

 上の方から新人には売っておけと命じられているならば、それで済む話だ。

 しかし、こうして予算を聞いて、一点モノの商品を持ってくるなんて、たかが新人一人にかける手間じゃない。

 どこかの貴族のボンボン相手ならまだしも、少なくとも今の俺は貴族籍を追い出された一般民である。

 悲しいかな、見た目はそこまで悪くないとは思うが、高貴そうな見た目ではないし。

 こう、王族のような見てわかる華やかさ、みたいなのとは無縁なのだ。


「まあ、気になるよな。聞かれたら答えていいって言われてるから言っちまうが、ギルバートの旦那の手回しでな。何でも、直感でタダ者じゃねえ雰囲気を感じたんだと。今の内に恩を売っておけば、ゆくゆくは自分とギルドのためになるだろう、ってな」


 なるほど、ギルバート氏の手回しか。

 あの時の会話で、何かしら思う所があった、という事だな。

 そういえば、特殊技能の欄に直感ってのがあったし。


「そういう事でしたら、ありがたく。高位の冒険者の方と将来的な繋がりになるかもしれないのなら、喜ばしい事ですから」


「……肝の据わったヤツだ。普通は畏れ多いって遠慮するか、特別扱いに勘違いしそうなモンだが」


「そういう所も含めて、直感に引っかかったんじゃないですかね、多分」


 直感って言われちゃどうしようもないわな、と呟いて、おっさんは持ってきた箱のうち、小さな物を開く。

 中には、一目見ただけでいいものだとわかる二つの腕輪と、二つの指輪が入っていた。


「こいつは腕輪の方が魔力回復を早める物、指輪の方が魔術の出力を上げる物だ。両方に一つずつ装備すれば効果が高まる」


 なるほど、これは話通りなら魔術師は喉から手が出るほど欲しい代物だろう。

 嘘を吐かれている、という事はないだろうが、知らずに贋作を掴まされている、という可能性は皆無ではないので、念のため意識を集中して鑑定を行っておく。


―――――――――


循環の腕輪


体内の魔力の循環を整え、回復を促す腕輪。

装備していると、時間辺りの魔力回復量と魔力発動速度が上昇する。

流れは全ての根幹であり、要である。

流れを知れば、それは深淵にさえも届きうる。

そう賢者は嘯いた。


―――――――――


吸魔の腕輪


空気中の魔力を集め、体内に取り込む事で魔力の回復を促す腕輪。

装備していると、空気中の微細な魔力を取り込む事ができ、魔術使用時の消費魔力を軽減しつつ、回復力も高める。

体内の魔力で賄えないのならば、ある場所から持ってくればいいだろう。

足りない物をある場所から持って来るのに、何の不自然があろうか。

そう大魔導師は嘯いた。


―――――――――


増幅の指輪


魔術の威力を高める指輪。

装備した方の手を通した魔術の威力を高める事ができる。

内蔵器官で威力が足りなければ、外付けで補えばいい。

そう言って、男は国で最強の魔術師へと至った。


―――――――――


効率化の指輪


魔力の変換効率を上げる指輪。

単純に魔術の発動効率を上げる他、技として魔力を使う時にも作用する。

唱える暇がないのなら、唱えなければいい。

そう言って、男は魔術剣士というスタイルを確立させた。


―――――――――


 なるほど、これは相当に強力な装備だ。

 若干おっさんの言っている事と食い違う部分があるが、これに関しては前に使用者がいたのだとすれば、そいつが大雑把にしか感じ取っていなかった、とすれば辻褄は合う。

 大筋で言えばそれぞれ両手に装備すれば相乗効果があるのは間違いじゃないし。

 特に効率化の指輪については、魔術剣士という戦闘スタイルの俺にとって絶対に必要な物だ。


「腕輪と指輪はそれぞれセット売りでバラ売りはしねえ。腕輪か指輪の片方なら金貨5枚、両方買うなら金貨8枚だ」


 むむむ、これは魅力的だ。

 仮にこれを両方買ったとして、合計で金貨14枚。

 ギリギリ提示額には収まるな。


「それでこっちはなんと、収縮可能で、長杖(ロッド)短杖(ワンド)を切り替えられる代物だ。長杖時は魔術発動時間が伸びる代わりに、高い魔力収束率による高威力を可能にする。短杖状態は魔力変換効率の上昇により、魔術発動時間を大きく早める。時間が確保できる時に長杖で威力を高めるか、魔術剣士らしく、短杖で素早い魔術発動をする、と使い分けが効く杖だ。これは金貨4枚だな」


―――――――――


長短杖(ロッドワンド)


内部に刻まれた陣を伸縮で切り替える事で、長杖と短杖の両方の特性を使い分ける事を可能にした杖。

複雑な機構ゆえに、杖そのものの耐久力が低いが、使いこなせれば様々な状況に対応できるだろう。

過去にこの杖を使いこなした人物は、ただ一人しかいなかったという。


―――――――――


 次に大きな細長い箱から出て来たのは、伸縮する杖。

 長杖と短杖のいいとこ取りの運用ができるのが便利すぎる。

 短杖での素早い魔術発動は、近接戦闘と組み合わせる前提ゆえに、威力をいくらか犠牲にしているが、状況に応じて威力を出す事もできる、というのは魅力的だ。

 これは人による部分でもあるが、俺は高位魔術もいくつか扱えるので、状況に応じて魔術の威力を上げられるのは都合がいい。

 魔剣士は人によって発動の早い魔術だけを補助で利用し、剣術に重きを置く人もいるのだが、俺は剣士としても動け、その上で純粋な魔術師として砲台にもなれるタイプなのだ。

 さすがに魔術だけを極めた人には及ばないが、それでもその辺の凡百の魔術師よりは魔術に習熟している自信がある。

 となると、この杖もすごく魅力的だ。

 仮に全部買ったとしても、金貨18枚。

 まだ、本当にギリギリ最終予算には収まる。


「まだあるぞ。こっちの剣は技の発動速度と威力増幅の効果がある。剣身は少し短めだが、代わりに柄が伸びて槍としても使える。状況対応力はかなり高いぞ。これは試作品でモニターも兼ねてるから金貨二枚」


―――――――――


試作型可変剣槍


取り回しのいいショートソード、あるいは柄を伸ばして槍として運用可能な武器。

穂先が剣のままであるため、槍の状態でも薙ぎ払いにも対応しており、状況対応力が高い。

魔力を通して技を発動する際の効率と威力を増幅する陣も内部に刻まれている。

実験的な機構を組み込まれているため、扱いは難しいが耐久性も問題無い。

欠点としては、作った職人にしか整備ができない点と、複数の機能を持たせている分、通常のショートソードに比べて重量があるという点。

複数の武器を持つのが大変ならば、両方の機能を持った武器を作れば良いのではないか?

発案者は、そんな机上の空論を実現した。


―――――――――


 クソ、変形武器なんて、なんて男心をくすぐるものをお出ししてくるんだ……!

 しかも、ちょうど最大予算の金貨20枚に収まるじゃないか……!

 くっ、買いたい……全部買ってしまいたい……しかし、ここで本当に金貨20枚も使っていいのか……!?

 俺の心の葛藤を見透かしているのいないのか、おっさんは薄らと笑みを浮かべて、最後の箱を開けた。


「最後に、魔術剣士ならこの武器も使いこなせるだろう。自分の魔力こそ消費するが、矢の補充いらずな魔術弓と、双曲剣としても使える逸品だ。これもさっきの剣と同じ製作者の物で、試作品だから金貨2枚だ」


―――――――――


試作型可変弓曲剣


長さの違う双曲剣、あるいは組み合わせての両刃剣、あるいは組み合わせ方を変えて魔術弓としても運用可能な武器。

二種類の使い勝手の違う近接武器としての面と遠距離武器としての面という3つの面を持ち、使い手の技量と機転が要求される。

魔力を通して技を発動する際の効率と威力を増幅する陣も内部に刻まれている。

弓使いが距離を詰められたら、あるいは近接戦士が距離を離されたら、そんな心配をするならば、どちらにも対応すればいい。

武器はその要望に応えよう。

使いにくい?

使い手の熟練度は管轄外だ。


―――――――――


 追い打ちはやめてくれぇ……こんなカッコいいもの見せられたら、金貨22枚使ってもいいと思っちまうじゃないか……!

 ぐおおおおおおっ!

 悪魔の囁きが、俺を惑わせるぅぅぅぅぅ!


「ちなみに、全部買ってくれたら金貨20枚にまけてやろう」


「買った!!」


 22枚が20枚になるなら迷う必要がない!

 むしろいいのか疑いたくなるけど、鑑定能力で嘘が無いのわかってるから、俺は即決で、何なら喰い気味に声を張り上げた。


「……よくこんな得体の知れない武器に金払う気になったな」


 俺の即決がまさかすぎたのか、おっさんは若干引いた様子で、後ろ二つの変形武器に視線を落とす。

 あれ、この世界では男のロマンがあまり人気でない?


「いいや、変形はロマンだろ! 扱いの難しい武器を使いこなせば、それだけ実力を証明する事もできる! いいことづくめじゃないか!!」


「……っくくく、ぶあっはははは!!」


 俺が変形武器をロマンと断言したのが面白かったのか、堤防が決壊したように、おっさんが爆笑し始めた。

 ロマン、大事だと思うけどなあ。


「はっはっは、すまんすまん。まさかこの武器の良さをわかってくれるヤツがいるとは思わなくてな」


 爆笑しすぎて、目尻に涙を浮かべながら、落ち着いた所でおっさんは表情を作り直す。

 いまさらキリッとした顔されても、しまらないんだよなあ。


「お前さん、名前は?」


「ハイトです」


「ハイトか。正式に依頼したい。俺の武器のモニターになってくれないか? 引き受けてくれたら、武器防具の整備はタダでやってやろう。今出来上がってるのはその二本だが、まだいくつか構想がある。その武器の良さをわかってくれるお前さんなら、任せられる。もちろん、次以降の試作品が出来上がったら、タダで渡す」


「その代わり、実戦データをくれ、ってワケですね」


「その通りだ!」


「引き受けました!」


 武器防具の無料整備に、新たなロマン武器の実験使用。

 こんな好条件、喰い付かないわけがない。

 俺とおっさんは、どちらからともなく、がっちりと熱い握手を交わした。

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